どうする機能性表示 森下・規制改革会議委員に聞く
(2013.7.25)

森下修正

 健康食品の機能性表示制度が平成26年度中にも始まる見通しだ。しかし、今後どのような議論を経て、どのような仕組みで表示できるのかがまるで見えてこない。そうした見えないことの答えを、健康食品の機能性表示容認を提唱した当人、大阪大学大学院医学系研究科の森下竜一教授に尋ねることにした。森下教授の立場は、内閣府規制改革会議委員(健康・医療ワーキンググループ)、内閣官房健康医療・戦略推進室参与、日本抗加齢医学会理事など様々だが、以下はあらゆる立場を踏まえた上での教授なりの見方や考えである。(聞き手・構成=本紙編集部・石川太郎)

業界が動くほかない

──健康食品の機能性表示に関する制度設計を進める主体はどこか。
 「規制改革会議では今後も健康食品の表示の問題に関して注視していくつもりだが、すでに手を離れている。一方、国が全面的に行うわけでもない。産業界で動く以外にない」

──業界で動くといっても、具体的にどこか。
 「健康食品産業協議会とJADMA(日本通信販売協会)が中心になって、ということになるのではないか」

──実際にもう動いているのか。
 「私は業界の人間ではないから分からない。だが、規制改革会議委員の立場からみると、粛々と動いている」

──『本当に機能性表示が出来るのか』という声が業界内にはある。
 「承知しているが、実際に閣議決定されたではないか。ボールは投げられ、そのボールを持っているのは産業界だ。閣議決定された成長戦略にも『実際に物事を動かすのは民間』だと記されている。いざ法改正しようという時に産業界の準備が整っていなければ改正しようがない。もし、今回も機能性表示実現に至らなかったとすれば、それが理由になる」

──健康食品の機能性表示を実現するために業界はなにをすべきか。
 「なにより、業界はひとつにまとまってもらいたい。産業協議会とJADMAが中心となり、ひとつにまとまってもらい、まずは機能性を表示できる健康食品に関するガイドラインをつくる必要がある。機能性表示するためのルールづくりだ。そこでは、どの成分で、どのような機能性表示をするのかについて、医学的な面、科学的な面で〝納得感〟を得られるようなガイドラインをつくっていく。さらに成分についてだけではなく、摂取量の問題も含めて議論すべきだ」

 「大事なのは、機能性表示できる幅を決めること。その幅に収まる成分なりに関して機能性表示を認めていけばよい。そのためには、やはりエビデンスを検証していく必要があるが、健康食品は医薬品ではない。健康な人に摂ってもらうべきものなのだから、医薬品と同じ方式で検証するというのは違う。そうはいっても、なんらかのかたちでヒトでのデータが必要になる。だが、そのすべてがダブルブラインドでなければいけないという話ではない」

アカデミアと連携を

 「ただ、そうしたガイドラインやルールを産業界が自らで決めても、消費者からの信頼は得られない。そこで、第三者機関、例えば学会などのアカデミアに対してガイドラインづくりをしてもらうよう産業界として要請を出してはどうか。アカデミアは産業界と協力しつつ、厚生労働省など国からもオブザーバーとして意見をもらいながらガイドラインを策定していく。そのようにして産業界もガイドライン策定に全面的に協力していくというのはどうか」

 「もし、そうやってガイドラインが作成された時は、それを基に、第三者認証機関が機能性評価を行うような仕組みづくりを産業界として検討されてはどうか。そこでは勿論、新表示制度スタートまでに、安全性と品質を担保できる仕組みも同時に構築する必要がある。また、制度がスタートした後に関しては、やはり安全性の収集が大事となるので、業界内で安全性を収集できるようなホットラインや電話相談室を設置したり、場合によっては第三者認証機関や機能性表示の取り消しをしたりなど、まずは産業界で自主規制のルールをつくっていくのはどうだろうか」


日医の〝納得〟必要

──学会がガイドラインを策定するという話に関して教授は先日、「日本抗加齢医学会で協力していく」と公の場で発言している。決定事項か。
 「実際に産業界から要請があったわけでないので、まだなにも決まっていない。『もし、そうした協力依頼が産業界からあれば、協力していく』ことを抗加齢医学会として決めたに過ぎない。今後業界から協力依頼がくれば、抗加齢医学会としては協力したい」

──アカデミアでガイドラインをつくることになったら、他の学会も名乗りをあげることはないだろうか。
 「もしあれば、一緒に協力したいと思うが、現実には難しいと思う。医学界ではまだまだ健康食品に対して抵抗感が強い学会が多い」

 「抗加齢医学会は、医学会でも権威ある医師が多く所属しているし、8000名もの会員を抱えている。そこまで大きい規模の学会は国内にはそうそうない。こういう話にはある程度の規模が必要だ。栄養学分野の学会でという話もあるだろうが、やはり医師が中心で動かなければ皆の納得は得られない。そもそも日本医師会が納得しない」

──健康食品の機能性表示に関し、日医や関連学会から反対の声は届いているか。
 「いまのところは出ていない。そこはものすごく慎重に進めている。私は日医の中の人間でもあり、日医とも様々な場面で折衝している。日医の関連組織として日本医学会という巨大な学会組織があるが、こちらとも折衝する必要があるだろう」

 「日医や医学会は、いまのところは表だって認めはしないが批判もしないというスタンスだ。なぜそうしたスタンスなのかといえば、どのように機能性表示するのか・どのような機能性表示をするのかという、その内容に依っている。医師の世界にもルールがあり、医師の納得を得るためには、絶対に越権行為をしてはならない。医師からの反発を受ければ、機能性表示の話はなくなる恐れもある」

評価法 領域ごとは?

──どのような機能性評価方法や表示内容が望ましいと考えているか。
 「あくまでも私見だが、消費者庁の『食品の機能性評価モデル事業』はひとつのお手本になると思う。ただ、疫学調査のデータをさほど重視していない点は変更すべきと思うし、成分ごとに評価していくという方式を全ての成分で行うのは可能かどうか。そうした成分表示に加え、眼の健康によい、心臓・血管の健康によい、肌の健康によいなどいくつかの領域ごとに分けた上で、その領域に対するエビデンスのある成分について、そのエビデンスに基づき、例えば『眼の健康によい』あるいは『眼の健康を維持する』などと表示できるかを評価していくという方式はどうか、という議論を抗加齢医学会の中ではしている。その方式ならば、より多くの機能性表示につながるのではないか」

 「いずれにしても、機能性表示のためのルールを決め、まずはそれで進めていくしかないだろう。私自身も高血圧治療などのガイドラインづくりを行った経験がある。非常に大変な作業だし、最初は批判が出てきたり、トラブルが起きたりもするかも知れないが、いちど決めてしまえば後は改定していくだけだ」

第三者認証制度が必要

──ガイドラインづくりは抗加齢医学会が行うのだとして、その検討・議論の場には行政も加わるのか。
 「どこで作るかは別にして、厚生労働省、農林水産省、経済産業省にはオブザーバーとして議論に加わってもらうことはお願いしている。消費者庁にも加わってもらいたい」

──業界はどうか。
 「当然加わってもらうことになる。しかし、消費者団体などからの批判を考えれば、参加の仕方は議論が必要だろう。ガイドラインづくりは規制する側が行うものだが、昨今の動きを見ていると、規制側は産業界から完全に独立していたほうが良いのかも知れない。加わり方に工夫が必要だ。非常に悩んでいる」

──仮に、ガイドラインづくりは抗加齢医学会が行うのだとして、今後のスケジュールはどうなるのか。
 「もしそのようになれば、私が大会長を務める来年6月の抗加齢医学会総会でガイドラインの素案を出したいと思う。総会では機能性表示に関するシンポジウムを連日行い、その場でパブリックコメントを募り、納得してもらうべきところは納得してもらい、修正すべきところは修正する。その上でもう一度パブコメで他の学会などからも意見を集め、最終的なかたちに整えて発表する。その後は、例えばガイドブックを作成したり、ガイドライン普及のための講演会を行ったりして、医者や一般の人にも理解していただけるようにする。まだなにひとつ決まっていない段階だが、平成25年度中にガイドラインの素案が出来ないと間に合わない」

──日本健康・栄養食品協会をはじめ規制改革会議も推していた第三者認証制度の見通しについて聞きたい。その線はまだ生きているのか、もうないのか。
 「国が認める第三者認証制度はない。だからといって、第三者認証そのものがなくなったというわけではない」

 「本来ならば、第三者認証機関も国が認定するかたちにもっていきたかった。ただ、消費者庁との間で折り合いがつかなかった。『米国型制度』とすることに強くこだわったからだ。消費者庁は第三者認証の意味を理解してくれなかったのだと思う。医療機器でさえも、民間の認証機関が認証基準に基づいて認証するという取り組みが日本ですでに行われているのだから、それを健康食品で出来ないはずはないではないか」
 「規制改革会議としては、それならば『米国型制度』で良い、と最後はなった。その代りに、機能性表示するための知恵は産業界とアカデミアで絞る、と。知恵を絞ってもらった結果が新しい表示制度となる」

認証機関は複数に

──「米国型制度」とはどういう意味か。
 「事業者の自己責任で機能性表示を行うという意味だ。しかし、完全な米国型は日本にはそぐわない。事業者の責任が重すぎる。一方、第三者認証などと面倒なことはいわず、完全な米国型にすることも制度上は恐らく可能だ。よって、業界側がそれで良いというのであれば、そうすることも出来る。しかし、それでは業界がつぶれてしまうのではないかと私は懸念している。だからこそ第三者認証制度・機関が必要だと考えている。その方が、産業界にとっても安全だと思う」

──第三者認証機関はどこになるのか。
 「日健栄協などの公益財団も候補であろう。ただ、認証機関は複数必要だと思う。やれるところはほかにもある。最終的には3つぐらい出てくるかも知れない」

 「第三者認証制度でいくならば、認証機関自体を審査し、場合によっては認証を取り消せる仕組みの構築も必要になるだろう。産業界で認証機関認定の制度も考える必要がある」

──健康食品の機能性表示解禁のために尽力したのはなぜか。
 「ひとつは、抗加齢医学会に所属していたことが大きい。私自身、以前は健康食品に対する不信もあったが、ここ数年で健康食品に対する医師の見方が私も含め相当変わった。その理由としては、抗加齢医学会の存在がすごく大きいと感じる。だから今回の機能性表示解禁は、医師の側が健康食品を受け入れつつあったこと、産業界側の受け皿として産業協議会やJADMAがあったこと、またアカデミア側でも、産業界のパートナーとなれる規模の大きい学会が存在していたことが大きい。そういう意味で、今回は『地の利、時の利、人の利』がある。機能性表示解禁はいましかないというタイミングだ」

森下竜一(もりした・りゅういち)=1962年岡山県生まれ。91年大阪大学医学部老年病講座大学院卒業後、米国スタンフォード大学循環器科客員講師などを経て03年から大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授。日本高血圧学会などの学会理事も務める。政府関係では03年から07年まで知的財産戦略本部本部員を務めた。

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