【素材探訪】睡眠素材を美容で売る(2013.9.26)
前号の特集で快眠サポートサプリメントを取り上げた。この中で、有望素材の一つとして、緊張緩和作用があり、それに伴う睡眠の質改善効果がヒト試験で示唆されているミルクタンパク加水分解物「ラクティウム」を紹介した。
その記事には次のようにある。「睡眠の質を高める先にある機能を訴求しています」。同素材を取り扱うサンブライト㈱の担当マネージャーのコメントだが、どういうことだろうか。
「例えば美容です。睡眠不足は肌に良くないと言いますよね。逆に言えば、良く眠ることは美容につながる」と同マネージャー。「睡眠の質を高めると直接訴えるのは難しい。そこで、市場の大きい美容を出口にしようということです。実際、プラセンタエキスに組合わせようという案件があります」
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仏国の乳業メーカー大手イングレディアの機能性食品素材部門が1990年代に開発した同素材が日本に初めて導入されたのは10年以上前。臨床試験に伴う有効性データが揃っていたほか、仏国などで機能性表示が認められていたこともあり、強く有望視する見方も一部であった。
ただ、結果はいまひとつ。大手販社での採用も一部見られたが、睡眠改善を訴求することの難しさに付きまとわれたようで、3年前に取り扱いを始めたサンブライトでも売りあぐねていた。
そんな中で、以前からあったのかも知れないが、同社らが思いついた配合提案切り口が「睡眠の質を高める先」だ。
「ダイエットにもつながるかも知れません。睡眠不足と肥満の関係も指摘されていますし、ラットで確認されたものですが、実際に食事摂取量を抑えるというデータもある。ストレスを抑制するのに伴うものだと考えられています」(同)
この素材の機能の軸となっているのはストレス緩和作用だ。これにより睡眠の質も高まると考えられている。製造元の仏イングレディア・ニュートリショナルらがカゼインを加水分解すると得られるデカペプチドに同作用のあることを発見。これを受け、同素材は開発された。母乳を飲むと赤ん坊が落ち着いたりするのはなぜか──という疑問が研究開発のきっかけだったとされる。
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ラットの食事摂取量を抑えたという知見を詳しく見ると、ストレスを与えたグループはエサや甘味料の摂取量がストレスのないグループに比べて多かった一方、ストレスとラクティウムの両方を与えたグループの摂取量はストレスのないグループとほぼ同じか少ない傾向を示したという。
ストレスに対する働きはヒトでも多角的に検証されており、同素材を継続的に1日当たり150㍉㌘摂取することで、睡眠の質をはじめ緊張状態、記憶力や集中力、対人関係、気分──などといったストレスが関わる症状の改善効果が示唆されている。
「究極的には、すべてのサプリメントをサポートできる素材だと考えています。ストレスが健康に及ぼす影響は大きいわけですが、それに対する体感性も高い。ですからラクティウムは、あらゆるサプリの副剤として強力な素材です」(同)
なお、ラクティウムでこうした提案を進めているのは日本独自だと見られる。仏サノフィ社がオセアニア地域で販売しているサプリメントブランド「ネイチャーズ・ウオン」にラインナップされている同素材配合製品は、同地域で最も売れている「スリープ・サプリメント」だといわれるなど、海外では睡眠機能分野の定番素材となっている。