【素材探訪】もっと知ろう Tie2活性(2013.10.24)


 ヒハツ、スターフルーツ葉、ツルレンゲ──これら植物から抽出したエキスに共通して確認されている機能がある。Tie2活性作用だ。直近ではハス胚芽エキスや月桃葉エキスでも確認されている。

 Tie2は「タイツー」と読む。正式名称は長いので割愛するが、血管やリンパ管の細胞に存在する受容体だ。これらの細胞から放出されるアンジオポエチン‐1という物質によって活性化されるが、前述の植物エキス群には、それに代わりTie2を活性化させる働きのあることが最近になり明らかにされた。

 Tie2が活性化されるとどうなるか。毛細血管をはじめとする血管や、リンパ管の構造を安定化させ、それらが本来持つ機能を確かなものに出来ると言われる。

 血管やリンパ管は、内皮細胞と壁細胞のふたつの細胞がしっかり接着することで構造的な安定を保っている一方、加齢などに伴い接着に緩みが生じてくる。すると、構造が不安定になり、血管やリンパ管が本来担う重要機能─酸素や栄養の供給、老廃物の回収・排出など─が低下してしまう。つまり、栄養や老廃物などが漏れ出してしまったりする。

 こうした血管やリンパ管の老化に伴う障害はTie2活性化で予防できる可能性がある。またそれにより、その機能の低下が関わる様々な不健康状態─冷え、むくみ、肌荒れ、生活習慣病、関節痛、男性機能不全、眼の不調、頭皮トラブルなど─を予防・改善できるとも考えられている。

 植物エキスでTie2を活性化させ、血管やリンパ管の老化を防ぎ、クオリティ・オブ・ライフを損なう身体不調の予防・改善につなげる──こうした製品開発・消費者訴求の新機軸を、特に肌美容の面で着目して健康食品に初めて取り入れたのは資生堂だ。

加齢に伴い減少植物エキスで活性

 2010年9月に発売した内外美容ブランド「インアンドオン」の美容サプリに配合したケイヒエキス。その前年に同社では、「加齢によって減少する活性化『Tie2』の量を増加させ、皮膚毛細血管の機能を正常化させる成分」を探索した結果、同素材にその効果のあることを世界で初めて発見したと発表していた。40代後半以降の人では過度に漏れやすい毛細血管が増えていることなども突き止めた上での発表だった。

 その後、11年から、Tie2の普及啓発を目的にした「Tie2フォーラム」(主催・食品化学新聞社)がスタート。今月18日に都内で開催された第3回フォーラムには、約160名の業界関係者が聴講に訪れた。

 ここで毎回、新知見を報告しているのが丸善製薬である。冒頭に示した素材のTie2活性作用はいずれも同社が明らかにし、発表してきた。

 既存製品の中から同作用のある素材を新たに探索する形で研究を進めており、これにより、これまでに確認された作用のメカニズムの一つに、Tie2活性作用のあることなどを明らかにしている。

 例えば、ヒハツエキスはむくみ改善作用が確認されていたが、これは血管やリンパ管でのTie2活性化に伴うものであることが示唆される。

 一方、新規機能を明らかにしたものもあり、コラーゲン産生促進作用のある美容素材として利用されていたスターフルーツ葉エキスでは、Tie2活性作用とともに皮膚シワ改善作用が新たに確認された。シワの原因ともなる紫外線は、毛細血管にダメージを与えると報告されている。

 また、アイケア素材として利用されていたツルレンゲ乾燥エキスも同様で、眼精疲労改善作用がヒト試験で新たに確認された。Tie2活性化により、網膜の血管構造を安定化させた可能性がある。さらに、第3回フォーラムでは、主に美容食品で利用されてきたハス胚芽エキスに、Tie2活性作用とともに関節ケア効果のあることを新たに確認したと報告。関節リウマチ症状を改善する可能性のあることを動物試験で明らかにしたもので、Tei2活性化によって炎症も抑えている可能性があるという。

Clip to Evernote

ページトップ