“勝ち組”通販広告 機能性だけに頼らない(2016.8.25)

東洋セミナー会場修正

 機能性表示食品の届出をスムーズに行うためのノウハウや販売手法など、事業者にとって実践的な情報を伝えることを目的にした「機能性表示食品実践セミナー」の第2回目が8月5日、㈱東洋新薬の東京支店内で開催された。販売会社など業界関係者を中心に約40名が参加し、今年4月に行われた第1回目に続き会場は定員に達した。

強い訴求が可能
 今回は、東洋新薬と、通販支援企業の㈱東通メディアが共催(㈱健康産業流通新聞社後援)。「商品開発と広告表現のポイント」をテーマに、機能性表示食品の広告クリエイティブをめぐる要点解説のほか、運動機能向上を訴求する機能性表示が期待される黒ショウガエキスのエビデンス紹介などが行われた。

 広告表現について講演した東通メディアの三好桂氏(レスポンス研究所所長)は、「機能性表示食品はいわゆる健康食品よりも強い訴求をできる」一方、「機能性を謳うだけで売れるわけではない」と指摘。「どのような広告を打ちたいのか、どの媒体を利用するのか、どれ位の売上を目指すのかといったマーケティング戦略を踏まえた商品開発が重要だ。販促責任者と連携した商品開発が肝になる」と助言した。

 また、通販広告は「愛用者のコメントが重要」だとした上で、それを機能性表示食品で行おうとする場合は「RCT(最終商品の臨床試験)で届け出た方がいい」と述べた。特に大手媒体社は審査が厳しい傾向もあり、研究レビュー(SR)の場合は「愛用者コメントは現状難しく、関与成分の説明がメインとなる」ためだ。そのため、広告のポジショニングなどマーケティング戦略立案の上でも「SRで届け出るのか、RCTなのかは非常に重要なポイント」だと強調。そのことからも、機能性表示食品の開発は販促担当者との連携が強く求められるとした。

 機能性表示食品の広告クリエイティブで〝勝ち組〟となるためのポイントは、「ポジショニング、テクニック、ロジックの3つだ」と三好氏は言う。「強い言葉だけに頼ってはならない。広告全体としてインパクトのある編集を行わないと、消費者はふり向いてくれない」とも述べた。

運動機能でSR
 黒ショウガエキスについては、同素材を製造販売する原料メーカー、オリザ油化㈱の戸田一弥氏(研究開発本部食品開発部)が講演した。

 戸田氏は、〝アクティブシニア〟などをターゲットにしたスポーツサプリ市場や、ロコモティブシンドローム対応市場の成長可能性について海外市場動向も踏まえながら解説しつつ、同社が実施した黒ショウガエキスのSRを紹介。「黒ショウガ由来ポリメトキシフラボンには運動機能(握力、脚力、バランス力、持久力)を向上させる機能があることが報告されています」などといった機能性表示を行える可能性があるとした。

 同社は、製造販売している「黒ショウガエキス‐P」の運動機能向上作用を検証する臨床試験を実施し、プラセボ群との比較で有意な効果を確認。査読付き論文として発表しており、実施したSRで採択した複数の文献の中には同論文も含まれる。

 同社はまた、黒ショウガエキス‐Pと、黒ショウガに含まれる有効成分「ポリメトキシフラボン」に筋代謝向上作用などがあることを突き止め、特許を出願。その作用機序について戸田氏は、AMPK活性化作用によるものだと考えられるとし、「AMPKは本来、運動をしている時に細胞内で活性化する因子。ポリメトキシフラボンを摂取することで、運動をしたような効果を得られる可能性がある」と語った。

 運動機能の向上や、筋肉に対する働きを訴求する機能性表示食品はまだ少ない。そのため、戸田氏は「黒ショウガエキスが入り込める余地はまだまだ大きい」と述べ、機能性表示対応素材としての有望度をアピールした。

スムーズな受理
 セミナーの最後に講演した㈱東洋新薬の髙野晃氏(研究開発部主査)は、届出がスムーズに受理されるためのノウハウを紹介した。

 同社は現在、機能性表示食品の届出受理件数が33品目と最多を誇る。受理された訴求機能や機能性関与成分の数に関してもトップで、訴求機能については体脂肪(おなかの脂肪を減らす)から抗疲労(ストレスによる疲れが気になる方に)まで11機能に関して受理。こうした数多い届出実績に基づくノウハウを生かし、受託製造企業として届出サポートを行っている。

 髙野氏は、届出に必要な有効性、安全性、定性・定量や安定性などの科学的根拠情報について、「一見遠回りだとしても、各分野に対して合理性をもって対応した上で、届出書類に落とす必要がある」とアドバイスした。

 機能性表示食品制度の実情として、消費者庁から届出書類の不備を複数回にわたり指摘されため、商品を計画通り販売できない企業は少なくない。また、公開された届出情報について、消費者団体などから疑義を申し立てられる例も散見している。

 こうしたトラブルを回避するための要諦として髙野氏は、「開発段階からの準備が全て」だと述べ、「特定保健用食品やガイドラインの本質を理解し、開発段階から想定される指摘を事前にフォローしておけば、スムーズな受理が可能になる」と指摘。それに加えて、商品開発の段階から科学的な「ロジック組み」を入念に行っておく必要があるとした。

 また、届出書類の形式確認をめぐる「審査基準」は随時変わっているとし、「受理実績のある機能性関与成分でも指摘を受けたり、受理されなかったりすることがある」と述べた。ただ、同社は常に複数品目について届出書類を提出している。そのため、「届出はより複雑になっているが、当社は最新の指摘やトレンドを把握しており、細やかな届出サポートを行える」と語った。
 次回、第3回機能性表示食品実践セミナーは、今秋開催を予定している。

【写真=定員に達した会場(8月5日、東京・千代田区)】

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