生鮮品の届出加速へ リンゴなど農産物7品対象に(2016.12.8)


 リンゴなど7つの農産物で機能性表示食品の届出が行われそうだ。先月28日に都内で開かれたセミナーで農研機構の山本万里氏が明らかにした。農産物(生鮮食品)の届出数は12月2日時点で5件に止まっているが、来年度以降、届出が活発化しそうだ。しかし、課題も多く、関係者の間では新たな制度創設を望む声も出ている。

 11月28日に都内で日健栄協主催による「機能性農産物等活用セミナー」が開催され、その中で農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の山本万里研究領域長は、今後、届出が想定される農産物として、ホウレンソウ、大麦、大豆、ダッタンそば、リンゴ、緑茶2種の7品目。注目される農産物として、表面加工玄米、タマネギ、ジャガイモ、サツマイモ、トマト、黒大豆、ゴマなどを挙げた。

 山本氏によると、農研機構ではこの他にもコメ類、小麦、乳製品、畜肉、卵、イチゴ、ヒエ、アワ、キビ、桑の実・葉、山菜、アブラナ科・ナス科各種野菜など、機能性表示に向けた有望な品種を多数開発しているという。

 しかし、現在の機能性表示食品制度では、農産物の届出に向けた課題も多い。最も難しいのは、機能性関与成分の管理だ。農産物なので同成分を多く含む品種を開発しても、収穫物の全てが成分含有表示値を満たすことは保証できない。

 基本的には収穫物の全数検査が必要となるが、現在の非破壊分析技術では、水分含有量に影響されるなど難点もあり、100%の精度を求めるのは難しいのが現状だ。

 また、山本氏は、機能性表示食品の制度上の課題として、農産物ゆえに病者を対象としない臨床試験プロトコールの必要性やヒト介入試験でのプラセボ設定の問題を指摘。その上で機能性表示よりも栄養機能食品制度を活用した方が、取組みやすいのではないかと考え方を述べた。

 機能性表示制度は、消費者により正しい情報を提供することが基本であるため、農産物の付加価値向上と必ずしもイコールにならないという状況がある。

 福島県郡山市の農業委員を務める鈴木光一氏は、「よい品種の農産物がたくさんできているのに、機能性表示食品制度ができたことで、農産品にメリットが表示できなくなった。アピールできるような仕組みを考えてほしい」と語る。機能性表示食品制度と農産物の関係をどう考えるのか、今後の課題となりそうだ。

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