審議内容を一部公開へ 食薬区分 厚労省が方針(2017.4.6)


 厚生労働省は、食薬区分の審議を行うワーキンググループの議論内容を一部公開する方針を固めた。以前から議事概要を公開していたが、記載内容は主として審議結果と簡単な判断理由のみ。そのため産業界からは、「最終判断に至った理由が不明瞭で審議結果に納得のいかないものもある」として不透明感を指摘する声が上がっていた。

産業界が「不透明感」指摘
 次回の食薬区分一部改正から、ワーキンググループが判断に至るまでの重要な議論について、企業の不利益にならない範囲で議事概要に記載する方針。

 方針は、内閣府の規制改革推進室が設置した「規制改革ホットライン」に、昨年12月に寄せられた要望に対する回答として示したもの。要望したのは日本バイオ産業人会議。

 同会議は、食薬区分の審議の透明化と同区分の見直し検討を要望していた。審議の透明化については、「いかなる議論に基づいて最終判断に至ったのかを詳細に公表し、国民の知る権利に対し誠実に応えていただく必要がある」とし、これまでブラックボックスとされてきた、食薬区分の判断に至る経緯を公開するよう同省に迫っていた。

 同省は、2017年度中に予定している次回食薬区分一部改正に伴う審議録から要望に応じる考え。ただ、公開するのは「判断に至るまでの重要な議論」「企業の不利益にならない範囲」と予め断っていることもあり、議論の中身がどこまで詳らかにされるかは、蓋を開けてみないと分からないと言えそうだ。

業界の要望 実現の道険しく 機能性表示にも絡む岩盤規制
 政府の「規制改革ホットライン」に昨年末までに寄せられていた、食薬区分を巡る複数の要望に対して厚労省の回答がこのほど公開された。審議の透明化要望については「検討に着手」するとして前向きな姿勢を示した一方で、そのほかの要望については「事実誤認」があるとして一蹴。機能性表示食品制度とも密接に絡み合う、この岩盤規制は当面崩れそうにない。

 日本バイオ産業人会議は、審議の透明化と同時に「食薬区分の見直し検討」を同省に要請していた。
 要望内容は、「海外でサプリメント素材として既に食経験が定着している成分が専ら医薬品リストに掲載」されているため、日本では「食品として使用できないケースが散見される」とし、「健康食品素材が医療費抑制の一助を担っていくべきとの視点」から、コエンザイムQ10などと同じように、「医薬品としての使用があっても食品として安全かつ有用なことが明らかな素材は、食歴や安全性情報の集約等の安全性確認を経て、日本でも非医薬品リストへ積極的に入れることを検討頂きたい」というもの。

 これとほぼ同じ要望を業界団体の国際栄養食品協会も提出していたが、厚労省が示した対応方針は「事実誤認」。つまり、この要望は規制自体が存在しないなど事実誤認に基づくものだとする見解を示した。
 厚労省は回答で「専ら医薬品リストに収載されている成分本質(原材料)であるという理由だけで食薬区分の照会を拒否することはありません」「専ら医薬品リストについては、新たな安全性に関する知見等により、必要に応じて変更することとしています」などとしている。

 日本バイオ産業人会議は別の要望もあげていた。専ら医薬品リスト収載成分である一方、γオリザノールなど生鮮食品や生鮮に近いその他加工食品に天然に含まれる成分に限っては、機能性表示食品の届出が可能とするよう運用の見直しを求めていた。

 ただ、厚労省はこの要望に対しても「事実誤認」。生鮮食品など明らかに食品と認識されるものや機能性表示食品は「原則として医薬品医療機器等法の規制対象となりません」としたうえで、そもそも機能性表示食品制度は「厚労省の所管外」だとして要望をかわした。

 ただ、同制度を所管する消費者庁は、届け出る機能性関与成分が専ら医薬品リスト収載成分でないことを確認するようガイドラインなどを通じて求めている。

 同庁はつまり、同リスト収載成分は、機能性関与成分として届け出ては「ダメ」と言っているのだろう。すると機能性表示食品は食薬区分の「規制対象には原則ならない」とする厚労省の言い分は理解に苦しむ面もある。成分本質が異なるにもかかわらず、名称が専ら医薬成分と同じというだけで、届出に疑問符がついた成分もあった。業界団体は引き続き食薬区分に関する規制改革を要望していくべきだ。


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