フコキサンチン 微細藻由来品を新開発 オリザ油化 (2017.5.11)


 抗肥満作用が知られるカロテノイドの一種、フコキサンチンについて、微細藻類を原料にした食品用原料をオリザ油化㈱が新たに開発し、機能性表示食品制度への対応も視野に入れて今月下旬から販売を始める。この製品に関しては、日本での販売を、アスタキサンチンの原料供給を手掛ける富士フイルム㈱と共同で行う。米国や中国など海外市場への輸出も視野に入れる。

 オリザ油化はフコキサンチンについて、2008年から褐藻類(昆布、ワカメ)由来の食品・化粧品用原料を供給している。今回開発した微細藻類由来製品もラインナップに追加し、フコキサンチンの配合提案を強化する方針。提案に当たっては、今後、同成分を機能性関与成分にした機能性表示食品の届出支援も進める。

 同社はフコキサンチンの抗肥満作用や痩身作用を検証する二重盲検臨床試験を、BMI25以上の日本人成人男女を対象に実施済み。試験結果をまとめた論文も、査読付き論文として「ファンクショナル・フーズ・イン・ヘルス&ディジーズ」に掲載されており、この査読付き論文などを科学的根拠にした機能性表示食品の届出支援を進める計画だ。現在、システマティックレビューを進めている。

 同成分を機能性関与成分にした届出は、今のところ存在せず、届出が受理されれば初の機能性表示食品となる。同社では、今回掲載された査読付き論文などに基づき可能な機能性表示として、「肥満気味の方の体重、BMIおよび内臓脂肪の増加を抑える」などといった表示を想定している。

 新たに開発した微細藻類(Phaeodactylum tricomutum)由来フコキサンチン製品は、「フコレックス(FucoRex)」として商標登録(現在申請中)を行い、ブランディングしたうえで上市する。開発したのはフコキサンチン含有量を5%および1%で規格化したオイル品で、褐藻類と比べて多量のフコキサンチンが微細藻類に含まれていることに着目し、既存フコキサンチン製品の製造ノウハウも生かした独自製法を用いて開発。微細藻類を原料とすることで、褐藻類では不安があった環境変化に左右されない持続的な安定供給と、より低コストでの製品開発が可能になった。

 同社によると、微細藻類のフコキサンチン含量は、一般的な褐藻類と比べて約50倍と顕著に多い。その上で、新たに開発した微細藻類由来フコキサンチンの原料には、アスタキサンチン原料製造大手としても知られる、イスラエルの微細藻類生産企業「アルガテクノロジー」が閉鎖系設備で大量培養するバイオマス原料(FucoVital)を利用。これにより、褐藻類では考慮に入れる必要のある水質汚染や農薬などの心配がないフコキサンチン製品の供給を可能にした。

フコキサンチン=カロテノイドの一種。これまでに抗酸化作用、抗炎症作用、抗肥満作用、抗糖尿作用などの機能性が報告されている。1914年に発見され、1969年に科学構造が決定されていたが、機能性食品成分として注目が集まったのは2000年代に入ってから。北海道大学大学院水産科学研究科の宮下和夫教授らの研究グループが、褐色脂肪細胞組織のみで発現すると考えられていた内臓脂肪など脂肪を熱に変化させる「UCP1」を、白色脂肪細胞組織中でも発現させる唯一の食品成分だとしてフコキサンチンの機能性を論文発表。これにより抗肥満成分として世界的に注目を集めた。

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