ASCON、9件に見解不一致 届出の独自評価「合剤」を問題視
(2017.10.12)


 消費者庁元長官の阿南久氏が理事長を務める「ASCON(消費者市民社会をつくる会)」は10日、機能性表示食品の届出情報の独自評価結果をASCONのウェブサイトで公表し、事実上の不備指摘を意味する「見解不一致」評価が9件あったとした。


 評価結果の公表は3回目だが、今回の評価対象は制度施行初年度に届出のあったA171から同310まで。すでに1000件を超えている届出のスピードに、評価がまったく追いつけていない状況だ。ただ、評価が滞っている間に販売が始まる商品も少なくない。公表される評価結果は届出者の販売活動に影響を与える可能性がある。


 届出評価を行うASCON科学者委員会が今回「見解不一致」評価を下した届出の中には、抗酸化物質を機能性関与成分にしたものがある。これは最終製品の臨床試験を届け出たものだが、科学者委は製品に含まれる同じく抗酸化物質のビタミンEに着目。届出表示の根拠がビタミンEではなく機能性関与成分による効果である「根拠が不明」などと指摘した。


 一方、科学者委が今回特に問題視したのは、機能性の根拠が最終製品の臨床試験、研究レビューにかかわらず、1商品で複数の機能性関与成分を届け出たもの。9件中4件が該当する。


 この4件に対して科学者委は、最終製品の臨床試験を届け出たものに対し「合剤にすることの科学的根拠が不明確」、研究レビューには「単独の効果は理解できるが、合剤にした時の作用が相加作用か、相乗作用か、あるいは拮抗作用か示されていない」──などと指摘。指摘された届出者はそれぞれ反論したものの、科学者委は受け入れず、「見解不一致」と評価した。


    「合剤」って食品の話?


 研究レビューで届け出られたものに対して科学者委は、複数の機能性関与成分を配合する「理由」について説明を要求。また、それによって「好ましくない作用が行らないことをどう担保するのか」と届出者に迫った。


 科学者委の言う「合剤」の機能性表示食品をめぐっては、届出表示で一つ以上のヘルスクレームを行っている場合が目立つ。新規の機能性関与成分を増やすのが難しい現状では差別化の有効手段だが、科学者委の評価を受け、届出書類を確認する消費者庁の「審査」基準に新たな考え方が追加される可能性も無視できない。同庁からの不備指摘の内容に変化がないかを注視する必要がありそうだ。


 ただ、「合剤」とは一般的には医薬品用語。複数の成分を組み合わせることで効果を高めたり、逆に副作用を抑えたりする作用を狙った医薬品を指す。こうした医薬としての合剤と、機能性表示食品の「合剤」を同じ土俵に乗せて論じ、「見解不一致」評価を下すことには業界から強い反発が起きそうだ。議論が求められる。



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