内閣府 農産物のヒト試験確立へ  バイオ戦略WG 素案を提示
(2018.5.10)


 内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「バイオ戦略検討ワーキンググループ」(座長・篠崎一雄・理化学研究所環境資源科学研究センター長)は4月26日、第4回会合を開き、バイオ戦略の素案をまとめた。保健機能食品制度を背景にした農産物(生鮮食品)のヒト介入試験プロトコールの開発などが盛り込まれる見通しとなった。7月にも中間報告としてまとまる見通し。

食による健康増進に本腰
 ワーキンググループ(以下WG)の検討内容は、今年末策定予定の「バイオ・イノベーション戦略」に反映されるが、7月に中間報告がまとめられ、うち内容が固まったものは、今夏に策定する予定の「統合イノベーション戦略」に盛り込まれる。統合イノベーション戦略は、これまで個別に策定していた科学技術戦略をまとめたもので、バイオ・イノベーション戦略もこれに含まれる。

 バイオ戦略は、①農林水産業の革新②革新的新素材による成長社会③炭素循環型社会の実現④健康・未病社会の実現⑤その他新たな産業・市場の創出――の五つの柱からなり、④に「食による健康増進社会」が含まれている。政府のバイオテクノロジー関連政策は、農林水産省が多くを担当しているため、「食による健康増進社会」は、大部分が農水産物に関連する内容となっている。

 食による健康増進社会の課題として、「日本は世界に先駆け保健機能食品制度を導入したが、疾病リスク低減表示は2成分に留まり、機能性表示された生鮮食品は3種類に留まっている」、「日本食の健康増進効果に関する科学的エビデンスの蓄積は欧州に遅れを取っている」などを挙げた。

 そして、当面の研究課題として、①食と健康の網羅的なデータの取得・解析②健常人の腸内微生物叢の網羅的なデータ取得・解析――を挙げた。

 また、具体的な研究課題として、日本食の大規模コホート研究▽食による健康増進のエビデンス確立・画期的な機能性作物の開発▽農林水産物の特性に応じた健康評価手法▽食生活プロトコルの構築▽科学的知見の保健機能食品制度への反映▽機能性成分の分析法や規格化、国際標準化――などを掲げた。

 これらは機能性表示食品制度に対する規制改革推進会議の取り組みとも関係しており、同制度における生鮮食品の届出拡大策とオーバーラップしている。具体的には、生鮮食品に関連するヒト介入前後の有意差評価(群内試験)の容認、生鮮食品の表示条件緩和などが、今後、バイオ戦略の実施を通じて、浮上してくるものと思われる。

 4月3日に開かれた規制改革推進会議「医療・介護WG」の会合では、機能性表示食品制度における生鮮食品の届出拡大策に関して、生鮮食品業界からの要望に対し、農水省側は各種研究プロジェクトの推進で対応する旨を回答している。




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