日本水産 トクホ関与成分問題で 消費者庁から厳重注意 (2018.5.24)


 日本水産が販売していた特定保健用食品の関与成分量が許可表示値を下回っていた問題で、同社は9日、同庁審議官から厳重注意を受けた。同庁は、識者の意見なども踏まえ、許可取消しが必要な事案ではないと判断。行政指導とも異なる厳重注意にとどめた。同庁から原因究明を求められていた同社は先月26日に報告書を提出。申請した関与成分の分析方法を変更したにもかかわらず変更手続きを行っていなかったが、申請時の分析方法を使用していなかったことを除けば品質管理は適切だった──などと報告していた。

 この問題は、消費者庁が昨年度実施した特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品の買上調査の結果、同社のトクホ飲料「イマーク」(現在販売中のトクホ〝イマークS〟とは異なる)の関与成分(EPA・DHA)含量が許可表示に満たないことが、第三者分析機関の調べで明らかになったというもの。同庁は調査結果を先月9日公表していた。

 厳重注意を受けた日本水産は取材に、「真摯に受け止め、再発防止、品質管理の構築、従業員教育を徹底していく。特に、変更届の徹底と、社内チェック体制を強化する」とのコメントを出した。同社は買上調査結果が明らかになる以前から「イマーク」の販売終了を決めていたといい、今年2月末までに製造販売を終えている。

 同品がトクホの表示許可を受けたのは2003年で、当時は厚生労働省が制度を所管。同社関係者によると、翌年発売し、その後1年以内に最終製品中EPA・DHAの定量分析方法を、分析結果にバラつきが少なく、より精度の高い方法に変えたという。ただ、分析方法の変更を厚労省、消費者庁のいずれに対しても報告しておらず、そのため今回の買上調査で同庁は、当然ながら、申請された分析方法に基づき分析を行った。

 関与成分の分析方法は品質管理と密接にかかわる。そのため、同社が長年にわたり許可申請時とは異なる分析方法で品質管理を行っていたことについて同庁の岡村和美長官は、9日の定例会見で「非常に遺憾」と述べ、「トクホ制度に対する消費者の信頼を再び損なった」と指摘した。

消費者庁「過去事例と比べ悪質性低い」
 その一方で、許可の取り消しではなく厳重注意にとどめたことについて長官は、同様にトクホの関与成分を巡る問題で許可取消し処分を下した「日本サプリメントの事案とは異なり、悪質性は低い」と考えられると述べた。許可の取り消しは、安全性上の懸念が認められる等の事案の重大性▽消費者に対し迅速に返金等の対応を行うなどの誠実性▽平時の品質管理体制の実態─などから「総合的に判断すべきと考える」(岡村長官)としている。

 実際、同社は買上調査で関与成分含量が下回っていたロットの購入者全員に対し、書面で事情を伝えつつ返金申し入れに応じている。また、同社が現在採用している関与成分の分析方法は、「イマーク」の後に許可された、同品類似の同社のトクホ「イマークS」の関与成分分析方法として申請されているものと同じとされており、同庁は平時の品質管理体制についても特段の問題はなかったと判断したとみられる。同社からの原因報告書を、識者の意見も聞きながら精査したという。

 ただ、同社が分析方法の変更を届け出ていなかったことについては、業界内から「日本サプリメントの問題が明らかになった時点で気付くべきだったのではないか」との指摘も聞こえる。

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