機能性とトクホ 制度のすみ分け課題に (2018.6.21)


 機能性表示食品とトクホ(特定保健用食品)の制度的〝すみ分け〟を消費者委員会が課題視していることが14日までに分かった。届出制と許可制で根本的な違いはあるが、消費者の理解は十分とは言えない。そのうえ、機能性表示食品の〝質〟向上を図る消費者庁の取組みが、トクホへのオーバーラップに拍車をかける。両制度を所管する消費者庁も消費者委と同じ問題意識を抱えており、「整理をつけたい」とする。今後、機能性表示食品制度と差別化したトクホ制度のあり方を模索していく方向だ。

 「『トクホの意義がどこにあるのか』という話になりかねない」。14日に開催された消費者委の本会議。高巖委員長はこう述べ、トクホ制度と機能性表示食品制度のすみ分けを意識的に進めるよう、消費者庁に注文を付けた。

 この日の本会議では「機能性表示食品制度の施行後の検証結果と今後の方向」について同庁食品表示企画課からヒアリング。制度施行から丸3年が経過したのを受け、消費者基本計画工程表などの取り決めに基づき、これまでの制度運用状況を踏まえた今後の方向性などを同課の赤﨑暢彦課長から聞いた。

 機能性表示食品制度の今後について課長が示した重点課題は、①機能性表示食品等に関する消費者への普及啓発の推進②適正な表示による消費者への情報提供③機能性の科学的根拠に関する質の向上──の3つ。過去3年で重点的に検証してきた安全性の確保、機能性の科学的根拠、それらを担保するための品質管理に加え、同3点も新たに力点を置く必用があるとした。

 消費者委は、これまでの消費者庁の取組みを肯定的に評価。届出制への信頼を維持するための同庁による「事後チェック」について、「二重、三重、さらに四重の構造をつくって取り組んでいるという印象を受けた」(高委員長)と述べた。

 一方、消費者委でトクホの許可審査を行う新開発食品調査部会の部会長も務める受田浩之委員は、「エビデンスの質の向上を進めていくと、トクホとのすみ分けがますます理解しづらくなる」と指摘。「トクホ(の許可件数)を機能性表示食品(の届出件数)が超えたことで、『トクホの立ち位置はこれでいいのか』の声も現場から聞こえてくる」とも述べ、トクホ制度の今後に懸念を示した。

 受田委員はまた、保健機能食品制度に対する消費者の理解不足も指摘。トクホが許可制であることが消費者に理解されなければ「(許可を得るために研究などに投資する)事業者の努力が報われない可能性もある」とした。

 保健機能食品制度の消費者理解が不足している現状は、消費者庁が先ごろ公表した「食品表示に関する消費者意向調査報告書」に如実に現われている。

 それによると、機能性表示食品の説明について正しい選択肢を選べた人の割合は約15%にとどまり、トクホの説明である「国が審査」を選んだ人が19%に達した。一方で、トクホの説明について正しい選択肢を選べた人は約32%と3割超に上ったものの、「分からない」とした人も約36%。機能性表示食品と誤認している人も10%ほど存在した(第970号既報)。

 受田委員の指摘に対して赤崎課長は「正しく理解されるように引き続き普及啓発していきたい」としたうえで、「機能性表示食品のエビデンスの質の向上を図ると、トクホとオーバーラップしていき、制度として区別がはっきりしなくなるという問題点については、我々も同じ意識をもっている」と答えた。

 また、「トクホのあり方については、制度的観点から何らか整理する必要があるのではないかという問題意識を持っている。今後検討し、整理をつけたい」と述べ、機能性表示食品制度と差別化するために、トクホ制度に手を加える必要性を考慮に入れていることを示唆した。

 考察 トクホ制度と機能性表示食品制度の違いを際立たせるためには、第一に、保健機能食品制度全体に対する消費者理解度の向上が求められそうだ。その上で、考えられ得る有効な方策は、トクホ側のヘルスクレームの引き上げだろう。そもそもトクホ制度には、機能性表示食品では認められていない「疾病リスク低減表示」が備え付けられている。

 ただ、現状で認められているのは、カルシウムによる「骨粗鬆症になるリスクの低減」、葉酸による「二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減」の2表示のみ。両制度の特徴を生かしたうえで、差別化を考えるのであれば、トクホ独自の疾病リスク低減表示の対象拡大が自ずと焦点になる。


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