消費者庁 不当定期購入契約で行政処分 特商法違反を認定(2020.1.9)


 消費者からの相談件数が増え続けている健康食品や化粧品の定期購入に絡んだネット通販トラブルを巡り、消費者庁が関連事業者の是正に乗り出した。昨年12月25日、申し込むと定期購入になることが容易に認識できる表示を行っていなかったのは特定商取引法違反に当たるなどとして、都内のネット通販事業者2社に対し、業務停止命令を含む行政処分を行った。うち1社は少なくとも2018年度以降、5000件を超える相談が寄せられていた。

「ケトジェンヌ」販社に業務停止命令
 「お試し500円」などと通常よりも安く購入できることを訴求している一方で、実際には2回目以降は通常価格での定期購入契約が条件であることなどが表示上で分かりにくい健康食品や化粧品のネット通販を巡るトラブルが16年に入り急増している。これを受けて国民生活センターは、これまでに3度にわたる消費者の注意喚起を実施。直近の昨年12月19日の注意喚起では、消費者庁に対し、特商法や景品表示法の規定に違反する事業者に法執行を実施するよう要望していた。

 消費者庁の発表によると、特商法違反で3月25日まで3カ月間の一部業務停止命令処分及び指示処分が行われたのはTOLUTO(東京都渋谷区、旧社名e・Cycle)。同社の中谷裕一・前代表取締役にも同様に業務停止命令が下された。

 また、『みのりの酵素』というサプリメントなどをネット通販で販売しているアクア(東京都渋谷区)には指示処分が行われた。消費者庁は両社に対し、特商法第14条で禁じる「顧客の意に反して通信販売に係る売買契約の申込みをさせようとする行為」などを行っていたと認定した。

 通信販売に関する商品売買契約の締結を含む業務停止命令など厳しい処分を受けたTOLUTOは、前社名で事業展開していた昨年9月、同社がネット通販で販売しているサプリメント『ケトジェンヌ』を巡り、消費者庁から消費者安全法に基づく事実上の行政処分を受けていた。下痢など消化器障害に関する健康被害情報が急増しているなどとして、同庁は消費者への注意喚起のためとして社名や製品名を公表。同社は翌10月、社名や代表取締役を変更した。

 今回の特商法に基づく行政処分では、同社が運営するウェブサイト「ERUFLE」で販売していた『リンクルセラム』という化粧品の売買契約が問題になった。消費者庁の発表によると、代表取締役を外れたはずの中谷氏は、離任後も取締役と同等以上の支配力を有し、業務の遂行に主導的な役割を果たしていたという。このため、中谷氏個人にも3カ月の業務停止命令が下された。

 国民生活センターによると、両社とも定期購入契約を巡る消費者からの相談が多く寄せられていた。前身のe・Cycleを含めたTOLUTOの健康食品や化粧品の販売を巡る消費者からの相談件数は、18年度は1726件、19年度は昨年12月10日までに3719件に上り、合わせて5445件と5000件を超えている。アクアについては19年度のみで2419件(12月10日時点)に上るという。

 19年度(19年11月末まで)にPIO‐NETに登録された健康食品や化粧品の定期購入に関する相談件数は約2万9000件と、前年度の約2万3000件を既に超えている。相談を寄せる消費者からは具体的な社名も挙げられていて、その数は100社を超えるとされる。ただ、相談件数が1000件に達する事業者は限定的だといわれる。今回、特商法に基づく行政処分を受けたTOLUTOなど2社は、消費者からの相談が集中していた事業者の一角とみられる。

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