トクホ公取協 始動 当初会員26社 「何とも寂しい」(2020.9.10)

トクホ公正競争規約①の関連② トクホ公正競争規約②マーク①

 特定保健用食品の表示に関する公正競争規約を運用する「特定保健用食品公正取引協議会」(トクホ公取協)が8月27日に設立された。同日、設立総会を都内で開催。初代会長には、同規約や運用基準などの取りまとめを主導した業界団体、日本健康・栄養食品協会の下田智久前理事長が就任した。スタート時会員には、トクホを販売する大手食品・飲料事業者を中心に26社が参画する。
 トクホの表示許可取得企業数は現在150社余り。そのなかでトクホ公取協の当初会員数は26社にとどまることになった。

 トクホと公正競争規約の両制度を所管する消費者庁の伊藤明子長官は、トクホ公取協設立前日(8月26日)の定例会見で、「(トクホ表示許可取得企業のうち)7割の事業者が参画する予定と聞いております」とコメント。当初は100社超の参画が想定されていたもようだ。

 不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保する──トクホ公正競争規約の第1条は規約の「目的」をこう定義する。消費者と事業者の双方にとってメリットが期待できるのが公正競争規約だ。

 ただ、トクホ公取協に参画し、トクホ公正競争規約を遵守しようとする企業の数が、トクホ許可取得企業全体の2割にも満たない現実に、業界関係者からは「いかにもさびしい」の声が上がる。規約を遵守しない企業数のほうが圧倒的に多いと、規約の実効性が覚束なくなるためだ。

 しかし、トクホ公取協事務局は、当初会員26社でトクホ市場規模全体(約6500億円=日健栄協調べ)の約9割(88%)を占めるとする。実際、トクホ公取協の会員に名乗り上げたのは、花王▽大塚製薬▽ヤクルト本社▽日本水産▽森永乳業▽明治▽雪印メグミルク▽サントリー食品インターナショナル▽日本コカ・コーラ▽小林製薬──など大手企業がほとんどだ。

 一方で、現在のトクホ公取協会員企業のみでトクホ市場のおよそ9割を占めるのだとすれば、「これ以上の会員増加は困難なのではないか。増えたとしてもわずかにとどまる」との指摘も。市場規模の残り1割を占める企業群は、トクホの表示許可を得ていても、販売にほとんど力を入れていない可能性がある。

 会員企業の「数」は、トクホ公取協の運営基盤に影響を与える。会員26社でトクホ公正競争規約の実効性は確保できそうな見通しであるものの、トクホ公取協初代会長を務める下田氏は、「会員をもっと増やす努力をしていきたい」とメディアの取材に述べ、危機感を示した。

 今後、時期ははっきりしないものの、機能性表示食品の公正競争規約も設定される。健康食品産業協議会や日本通信販売協会など業界団体が連携し、昨年から検討作業を進めており、いずれ、その運用を担う公取協も立ち上がる。「会員数はあっという間に3ケタに届く」(業界関係者)と予測する声も聞かれる。

公正マーク、インパクトの程
 トクホ公正競争規約の目玉は「公正マーク」となりそうだ。トクホ表示許可マークとともに「公正」の2文字、さらに表示許可を受けた保健の用途の抜き出しを表示できる。トクホ公取協の下田会長は、「企業にとっても非常にインパクトのあるものだと思っている」と語る。

 公正マークとは、公正競争規約に遵守していることを示す消費者への目印。「その商品が公正取引協議会の表示の審査会などで合格した適正な表示をしていることを保障したもの」(全国公正取引協議会連合会ホームページ)だ。

 トクホ公正競争規約でも公正マークを用意。トクホ公取協が「規約に従い適正な表示をしていると認められる事業者に対し、容器包装及び容器包装以外に公正マークを表示させることができる」(規約第27条)と規定されている。「容器包装以外」とは広告などを指す。
 8月27日のトクホ公取協設立総会で配布された資料によれば、トクホ公正マークは計4種類が用意された。

 そのうち最も注目されそうなのは、トクホ表示許可マーク、「公正」の2文字、さらに「カテゴリー名」として、内臓脂肪▽体脂肪▽血圧▽食後血糖値▽おなかの調子▽肌──などなど、表示許可された保健の用途を分かりやすく抜粋した文言をコンボで表示できる公正マーク(=画像)だ。

 ただ、そもそもトクホは表示が許可された機能性を許可された範囲内でうたうことのできる食品。「別に公正マークがなくても広告などで機能性を表示できる。これまでに皆がやってきたこと」(業界関係者)として、「事業者にとってそこまで魅力的なマークだろうか」と首を傾げる。

 とはいえ、「公正」の2文字は、消費者に対して強い訴求力を持つ可能性も考えられる。今後、トクホ公取協の会員数が増えるかどうかは、この公正マークの価値を事業者がいかに評価するか次第だと言えそうだ。

【写真=左:トクホ公正競争規約は一般メディアの関心も高い様子。写真は、トクホ公取協設立総会後にNHKの取材を受けるトクホ公取協の下田会長 写真=右:トクホ公正マークの一例。カテゴリー名として保健の用途の抜粋を表示できる】





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