偽サプリ、フリマサイトに 「エクエル」を精緻に偽造 (2021.7.29)

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組織が関与か 安全性に懸念
 有名企業が販売するサプリメントの「偽物」が製造・販売されていたことが分かった。パッケージから内容物まで正規品によく似せた精緻なつくりで、偽物とすぐに気づくのは困難な代物だった。この偽物が販売されていたのはCtoC(消費者対消費者)間取引が行われるフリーマーケットサイト。サプリメントを個人で製造できるとは考えづらく、組織の関与が強く疑われる。他のサプリメントでも、フリマサイトやオークションサイトで偽物が販売されている可能性が無視できない。偽物の製造・品質管理の実態は窺い知れず、食品としての安全性も不明だ。万が一にも健康被害が起これば、ブランドの価値が大きく損なわれることになる。

消費庁、消安法を適用
 偽物が製造されたサプリメントは、大塚製薬が手掛けるサプリメントブランド『エクエル』のパウチタイプ(120粒入)。デジタルプラットフォーマーの楽天が運営するフリーマーケットサイト「ラクマ」に、少なくとも先月上旬まで出品されていた。実際に数10袋が購入されたといわれる。大塚製薬が販売する正規品の価格より2~3割安い値段が提示されていた。

 大塚製薬は、「偽エクエル」がラクマで取引されている事実を5月中旬までに探知。ホームページを通じて消費者に注意を促すとともに、「偽造品の製造・販売者に対し、関係当局への情報提供・法的手段を含めた対応を進める」とする声明を今月21日までに公表した。

 偽エクエルがフリマサイトで取引されている事実は、消費者行政を担う消費者庁も無視できなかった。「消費者の利益を不当に害するおそれのある行為を確認した」とし、この問題に消費者安全法を適用。今月21日、偽エクエルが販売されていた事実を同法の規定に基づき公表するとともに、消費者への注意喚起を開始した。同庁消費者政策課では、消費者の財産被害の発生、拡大を防止するため同法を適用したと話す。

 「エクエルをよほど常用している人でなければ(偽物だと)気づかない」。消費者庁関係者はそう語り、偽物だと気づかずに摂取している消費者の存在に懸念を示す。実際、偽エクエルをめぐる消費者からの苦情・相談件数は、少なくとも今月21日時点で2件にとどまる。この偽物は、それだけ精緻に正規品に似せて作られていた。

エクオールは含まれず
 消費者庁の発表によると、正規品との違いは、パッケージ裏面の賞味期限表示の内容および文字のかすれ、内容物である乾燥剤の袋の形状と色、そして、錠剤の微妙な形状の違い──のみ。「パッケージに関しては一部を除いて(正規品と)まったく同じ」(同庁関係者)。

 しかし、大塚製薬が偽エクエルの成分分析を行ったところ、エクエルを消費者が購入する理由である主要成分「エクオール」は含まれていなかった。

 ラクマに出品された「エクエル」を称したサプリメントが偽物であることが判明する端緒となったのは、実際に購入した消費者だった。エクエルの愛飲者だったとみられる。正規品との微妙な違いに気づいて大塚製薬に通報。偽物に表示されていた賞味期限「2023・2・2C」は、同社が販売するエクエルには存在しないものだった。

 偽エクエルを売ったのは誰か。同庁の発表によると、「遠藤」「小池」「森山」などと名乗る人物がラクマに複数の偽エクエルを出品。ラクマでは、商品の出品前に、利用者本人の氏名、連絡先、住所などを登録してもらう仕組みを取り入れているが、現時点では「遠藤」らの「実体は不明」だと消費者庁では説明している。商品発送の際に他人の個人情報を用いるなどしていたためだという。

 製造者の実体も判明していない模様だ。国内で製造された可能性がないとは断言できない状況の中で、大塚製薬は本紙のメール取材に、「わからない」と回答するのみにとどめた。
 ラクマでは現在、サプリメントが約19万件も出品されているとされる。フリマサイトには他にもメルカリなどがある。エクエル以外のサプリメントに関しても偽物が製造・販売されている可能性はないのか。まずは偽エクエルの販売者と製造者の特定が急がれる。

【写真=左:エクエルの正規品と偽物を比較すると・・・ 右:「偽エクエル」の出品内容(ラクマにおける例)】

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