日本綜合医学会 山口新理事長に聞く(2015.5.7)

日本綜合医学会山口理事長修正

今年は内部充実の年 「食と健康」のネットワーク作りをめざす

 日本綜合医学会は第15回総会にて山口康三氏を理事長に選任した。眼科医ながら食事指導で黄斑変性や眼底出血を治癒した実績を持つ新理事長。身体全体の健康が目の健康にもつながると、食事指導は今でも治療のメインに据える。60周年を迎えた組織の「内部充実」を掲げる新理事長にその抱負を伺った。

―日本綜合医学会の理事長に就任されました。山口色はどのあたりに出ることになるでしょう。

 山口 昨年は60周年という節目の年でした。そこで60周年記念誌を発刊するにあたり、いろいろな先生方の活動を編纂しましたが、この会にいかに多くの素晴らしい諸先生方がかかわっていらしたのかあらためて認識した所です。そして驚いたことにその先生方が現代の食事の問題を言い当てておられるのです。また、今では健康食として玄米食は当たり前のことですが、当時は異端児扱いだったことでしょう。しかしその先生方の血のにじむような普及活動によって今があるのだとわかり心から感謝しております。そして今新たな60年の始まりに理事長を拝命し、誠に身の引き締まる思いです。

 今年は初心に戻って「医」「食」「農」を中心に古今東西の叡智を集めて食事を中心とした予防医学の普及に努めます。

―具体的にいうとどういう事をされるのですか。

 山口 まずは食養学院の充実です。過去約1000人の以上の方が学ばれています。今年はカリキュラム、スクーリング、講師、テキストなどを充実させ、また講師を直接スクーリングに呼んで講演していただく等魅力あるものにしたいと考えています。

―逆に今学院で足りないものは何だと思っていますか。

 山口 卒業生達による活動報告の場や、さらなる研修の場も必要と考えています。来る7月26日(日)に東京・市ヶ谷で開催される講演会で卒業生に今までの活動について講演してもらうことになっています。また今年は、卒業生による同窓会も伊勢神宮で2泊3日の集いが予定されていますが、今後更なる卒業生の活動の場を増やしていきたいと考えています。

―会員獲得にはどのような策を取られますか?

 山口 策というよりも、これからの高齢化社会に向けて、多くの方々が健康に対する不安を抱えています。その根本的な解決法として日本綜合医学会があると多くの人々に認識していただきたいのです。一人一人が自分自身の健康を守るための自己メンテナンスができ、さらに悩める友人、知人を助けていくことができる医学的知識、食養学的知識等々を日本綜合医学会・食養学院から発信していこうと思っています。

―初心に戻るということでいえば玄米菜食の扱いはどのようになるのですか。

 山口 玄米は、日本人にとってまことにバランスのとれたスーパーフードです。しかしながら食べにくいおいしくないなどあまり喜んで受け入れてもらえないのが現状です。ところが調理法の工夫で、驚くほどおいしく仕上げることも可能になっています。玄米食と白米食を比較した場合、白米食では不足してしまう栄養素やミネラルをかなりの副菜で補わなければなりません。しかし玄米食の場合、それほど多くの副菜は必要ないのです。その辺をしっかりと認識して学んでいただきたいわけです。町を歩けばおいしそうな食物が手軽に手に入りコンビニでは一日中食品が販売されていますが、食事とは生命体にエネルギーを適切に補充することにあります。お腹が空いた時に、手近にある食品でやみくもに空腹感を充たしてすませてしまわないよう今の自分自身の肉体に何が必要なのか不必要なのか身体の声を聞き取れる知識をお伝えしたいのです。

―医師会員はどれくらいいますか。

 山口 現在、会長をはじめ120名以上の医師会員が活躍しています。医師会員は全国各地で意欲的な活動をする方が多く、今年は医師に向けての学術講演会を増やしたいと考えています。

―代替医療の普及で食事の重要性をわかってきた医師も少なくないと思うのですが。

 山口 そうあってほしいですね。予防医学の上では、食事が重要なのは当然の事実です。まず個々の理想的な食生活がベースにあってはじめて治療するという段階に進むわけです。志を同じくする医師達と連携していくことも重要と考えています。

―日本でも玄米食の著名人はいるのですから連携してはどうですか?それと若い人。このままでは古色蒼然として近づきがたいし、将来性にも黄信号が灯ります。

 山口 おっしゃる通りです。私は、医師は医療の中の扇のかなめだと思っています。食事が重要だとわかっていても医療は医師だけではうまくいくことはなく、いろいろな分野の方々との連携、協力が必要と考えています。看護師や栄養士、その他医療従事者たちだけではなく、有機栽培・自然農法の農作物やオーガニック食品を生産販売する方々、健康増進に役立つ食品や器具を販売する方々、鍼や灸、漢方、整体など伝統的な医療を実践する方々、その他あらゆる分野の方々との連携が必要と考えています。

―伝統が足枷にならなければ良いがと思います。主義主張が違うところもあるかもしれませんが、他団体との連携などは考えられるのではないですか。このままでは一党一派のお山の大将で終わってしまいます。

 山口 病気治し健康増進等様々な団体がございますが、その核はすべて個々の生命体を生き生きと健康にもっていくことだと思います。他団体がお互いに力をさしのべ、助け合うネットワーク作りにも励んでいきたいと考えています。

―「小異を捨てて大同に就く」のたとえがあります。

 山口 すべての分野の人の協力がなければ国民の健康増進は実現できません。そのためにも食養学院でいろいろな方に綜合的な考え方、綜合的な予防医学を学んでいただきたいと考えています。そういう医学、医療、食事、農業などを体系的に学習できるのは食養学院の非常に大きな強みです。

―中を充実させることは会員増にもつながります。

 山口 食養学院を充実させることによって、多くの人々に健康で不安のない生活をするための知識・知恵を提供していきたいと考えています。

―食養学院のほかにもう1~2本の統一軸が必要ではありませんか?

 山口 私は特にこれからは「食と健康」の分野では私どもの会は重要な立場にあると考えています。いろいろな情報を発信し、いろいろな分野の方々とのネットワークを広げて素晴らしい医療を皆様とともに作り上げていきたいと考えています。これから新しい世界を一緒に作ってみようではありませんか。

―50歳代の新理事長に期待しています。

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