黒ショウガ 〝筋肉〟への働きで広がり(2015.8.20)


ロコモ、サルコペニア対応

 販売大手が大型商品のメイン素材に採用したことでダイエット素材として普及が進む「黒ショウガ」。一方、市場の川上では、筋肉に対する働きに着目した機能性研究が活発だ。ロコモティブシンドロームやサルコペニアに対応する素材としても今後、広がりを見せる可能性が高い。


 2012年に健康食品・化粧品素材として「黒ショウガエキス」を発売したオリザ油化。性能力向上、抗肥満、冷え・むくみ改善、美肌作用などの機能性を訴求してきた中で、最近では筋肉ケア素材として強くアピールする。筋肉のエネルギー代謝促進作用があることを見出したためだ。

 関与成分は、黒ショウガの指標成分かつ有効成分のポリメトキシフラボン。黒ショウガ中に複数種類含有することが確認されているポリメトキシフラボンだが、とりわけ活性が強いのは、そのうちの一つである5,7‐ジメトキシフラボンであることも明らかにした。

 ポリメトキシフラボンは、市場に流通している黒ショウガエキスの大半が規格化している成分だが、同社製品は5,7‐ジメトキシフラボンも規格化している。

 作用メカニズムも突き止めた。ポリメトキシフラボン、特に5,7‐ジメトキシフラボンによるAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)活性化作用がかかわっているという。

 AMPKとは、運動中や運動後のエネルギーレベルが低下した際に活性化し、持久力向上や疲労回復などに寄与すると考えられている酵素の一種。黒ショウガエキスがこれを活性化することで、運動をしない状態でも、糖や脂質の燃焼を促進しエネルギー産生を向上、その結果、基礎代謝向上や抗疲労などの効果も期待できるとしている。

 同社では現在、筋肉を巡る一連の研究成果をまとめた論文の投稿準備を進めるとともに、運動機能向上作用や抗疲労効果を検証する臨床試験の実施も計画中だ。黒ショウガエキスで機能性表示食品制度に対応することも視野に入れている。


 健康食品受託製造の日本タブレット。近年になり独自素材の開発に注力する中で黒ショウガに着目、筋肉強化作用に特化した黒ショウガエキスも開発し、配合商品のOEMを進めている。

 同社では昨年、メトキシフラボン含有量5%以上で規格化したパウダー製品「MF5」に続く新原料として「HSP10」を開発。大阪府立大学との共同研究で明らかにした骨格筋量の増量作用に基づき開発したものだ。メトキシフラボンのうち特定成分のみを抽出・精製し、エキス化している。

 共同研究では、老年マウスを使った試験で骨格筋の中でも特に遅筋(ヒラメ筋)の減少抑制作用を確認。一方、若年マウスを使った試験では同じく遅筋の増加傾向を確認し筋肉増強作用が示唆された。また老化促進マウスでは、筋断面積増大が見られ、老化による筋量低下の抑制が示唆された。細胞試験でも、筋芽細胞から筋管細胞への分化促進▽筋管細胞から骨格筋への成熟・肥大化促進▽タンパク質合成促進といった作用が認められたという。

 こうした働きが確認された「HSP10」が規格化している成分は、筋肉に対する働きが認められた一部のメトキシフラボンのみ。同社によれば、黒ショウガ中には筋肉増強作用を阻害するポリメトキシフラボンも含まれているといい、これを除外した上でエキス化している。

 また、「HSP10」の1日当たり推定有効摂取量は5~10㍉㌘とごく微量だ。これは筋肉への効果が確認されたメトキシフラボン類の事実上の純品となっているため。一方で安全性が気になるところだが、実験動物による急性毒性、亜急性毒性、遺伝毒性の各種安全性試験で問題のないことを確認済みだという。

 「HSP10」の機能性研究は京都府からの助成も受けて進めている同社。「アクティブシニア向けだけではなく、介護やリハビリにも活用して頂きたいと考えている」と話している。


 このほか、「ブラックジンジャーエキス」の製品名で原料供給し、ダイエット素材として拡販している丸善製薬でも筋肉増強作用を確認し、昨年の日本栄養・食糧学会大会で発表している。抗肥満作用があることを臨床試験で確認する中で、体脂肪を除く筋肉などの総量を示す除脂肪量の増加が認められていたことから、筋肉増強作用も持つ可能性を検証していた。

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