エラスチンの動き活発に 新規原料、新機能が登場(2014.10.23)


 靭帯や肺などの弾力性や伸縮性が必要とされる組織に多く分布するタンパク質の一種、エラスチンをめぐる業界の動きが活発だ。肌の弾力を高める機能を持つ美容食品素材として市場普及が進んでいるが、その市場ポテンシャルは高いと見たのか新規参入が止まらない。靭帯改善作用に着目した新機能を訴求する動きも出ている。

国産豚の原料供給を開始 バイタルリソース

 ㈱バイタルリソース応用研究所(福岡県飯塚市)は、国産豚の大動脈を利用したエラスチン原料の供給をこのほど開始した。これまで最終商品のみのエラスチン事業展開だったが、美容市場におけるエラスチン需要の高まりを受け原料販売に乗り出している。

 原料提案する「ピュアエラスチン」は、指標成分となるデスモシン・イソデスモシンを1.2%以上含有する水溶性粉末品。製法などは特許出願準備中のため明らかにしていないが、「現在流通するエラスチン原料と比べ、肌質改善や血管改善、髪、爪、関節への働きで差別化できます」という。食品・化粧品原料とともに、医用材料用のエラスチン原料も供給する。同社代表で、九州工業大学でエラスチン研究に従事した岡元孝二氏が開発した。

 同素材を約6カ月間ウサギに与え、動脈硬化への影響について調べた実験では、コレステロール投与群の血管で肥厚した硬化病変が認められた一方で、ピュアエラスチンとコレステロール併用投与群の血管では硬化病変が認められなかった。また血圧が高めの男性に同素材を1日300㍉㌘、14週間摂取させたところ、摂取前の収縮期血圧約137が約127に低下、拡張期血圧約90が約80に低下し、血管の弾性低下を防ぐことが確認されている。

新菱、国産養殖クロマグロで参入

 三菱ケミカルホールディングスグループの㈱新菱(北九州市八幡西区)は、国産養殖クロマグロの動脈球を原料由来とするエラスチンの原料供給をこのほど開始した。すでに化粧品用の供給を先行させており、今後食用原料の開拓を進める。

 同社は半導体製造装置の精密洗浄や環境リサイクル事業などを手掛ける化学会社。数年前よりファインケミカル事業部内に化粧品、食品分野での新規事業を立ち上げ、このほどエラスチン、DHA・EPA含有精製魚油など食用原料の製法を確立、本格提案を開始することになった。

 エラスチン原料「SR‐エラスチン」では、機能性の指標成分となるデスモシン、イソデスモシンを合わせて0.58%含有で規格化した。

 化粧品用の機能性として、抗酸化作用はじめ、コラゲナーゼやチロシナーゼなど各種分解酵素阻害活性を持つことを確認している。

林兼産業が臨床試験で確認 バストライン維持機能

 カツオ動脈球由来エラスチンを継続摂取すると女性の胸の下垂(かすい)を抑える働きのあることを原料メーカーの林兼産業㈱(山口県下関市)が臨床試験で確認し、ダイエット食品への配合提案を進めている。減量に伴う胸垂れを防ぎ、「バストラインを維持する〝美ダイエット〟」が期待できるという。

 同社ではカツオエラスチンに靭帯機能の改善作用のあることを見出していたことから、女性の胸にも有効だと見て試験を実施していた。胸の下垂の原因としては、乳腺を皮膚や筋肉につなぎとめ、胸の形をきれいに整える役割を持つ「クーパー靭帯」と呼ばれる靭帯の機能が、加齢などに伴い低下し、伸びてしまうことがあると言われる。

 臨床試験は、BMI22~25のやや太り気味の健康な30~40代日本人女性27人を被験者にしたプラセボ対照二重盲検試験として実施。被験者を3群(エラスチン75㍉㌘摂取群/同37.5㍉㌘群/プラセボ群)に分け、それぞれを8週間摂取してもらい、毎夕食をダイエット食品に置き換えた場合の体重減少に伴う胸の下垂抑制作用を検証した。

 同社によればその結果、カツオエラスチン摂取群は摂取量が多いほどバストトップ(乳首)の位置を維持させ、下垂を抑えた。また、被験者アンケートの結果、胸のハリ感や垂れ具合について効果感を感じた割合が多かったという。

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【エラスチン解説】 エラスチンは、コラーゲンと同様、角質層など皮膚表皮の真下にある真皮層に含まれるタンパク質の一種。血管や肺などにも含まれている。そのことからも窺われる通り、特に、弾力性が求められる生体組織に含まれており、各組織に弾力性を与える役割を担う弾性繊維の主要構成物質のひとつとして各組織の機能を支えている。

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