病者認めぬ考え明記 ガイドライン案概要(2015.1.22)


 機能性表示食品制度にかかわるガイドライン案の概要が明らかにされた。内容は内閣府規制改革会議のホームページで確認できる。A4用紙で5枚足らずのものだが、実際のガイドラインはかなり分厚いものになると消費者庁は昨年から示唆している。まだ「案」の段階であり、今後修正される可能性もゼロではない。「ガイドラインを見ないとますます分からない」と慎重な声も聞かれる。

 概要は、昨年7月末にまとまった検討会報告書におおよそ沿ったものだが、より明確に説明した部分もある。一つは機能性評価での被験者の取り扱い。報告書では触れられていなかったが、消費者庁が以前から会見などで主張していた「病者は認めない」考えが明確に示されている。

 概要によれば、機能性評価における最終製品での臨床試験の被験者選定は「疾患に罹患していない者」から行う。

 疾患に罹患していないかどうかは、「広くコンセンサスの得られた診断基準等が存在」する場合はその診断基準に基づき判断する。基準がない場合は、「医師(当該分野を専門とする医師が望ましい)のスクリーニングにより疾患がないと認められた者」から選定した上で、さらに「医師名及び具体的なスクリーニング方法が明記されている必要がある」──。

 文献レビュー(システマティックレビュー)での臨床試験の被験者の考え方も同様に整理するとしており、まだ案の段階だが、病者を被験者にした臨床試験論文は文献レビューに活用できないことはなかば決定的になったといえそうだ。最終製品での臨床試験と比べて機能性評価で利用されるケースが多いと予測されている文献レビューだが、文献収集そのものがかなり難しい作業になるとみられる。

 一方、サプリメント形状以外の加工食品、生鮮食品については違う考え方を示している。

 それらの機能性評価に関してのみ利用が限られる見通しの観察研究文献での被験者は、前向きコホート研究の場合はアウトカム評価時、症例対象研究の場合は調査開始時に限り、それぞれ「疾病に罹患した状態であってもよい」とした。被験者の取り扱いを巡っても食品形状で差を設ける格好だが、その理由は示されていない。

 また概要では、可能な機能性表示の範囲についても、検討会報告書から一歩踏み込む形で考え方を示した。業界内で見方が分かれていた、特定保健用食品で許可されている範囲の表現を機能性表示食品でも行えるかどうかについても、疾病リスク低減表示を除き「可能である」とした。

 また、「回復」「緩和」「予防」等は医学的な表現だとして、使用できないとする一方で、明らかに医薬品と誤認されるものであったりしてはならないが、「改善に役立つ」などといった「改善」の表現は、健康の維持増進に役立つ、あるいは適する旨を主旨とする可能な機能性表示の範囲内だとする解釈を示した。

 概要を読む限りにおいては、可能な機能性表示に関しては柔軟な考えが示されたといえる。その一方で、サプリメントでそれを行うためのハードルはすこぶる高いという印象を受ける。検討会報告書よりもそれは増した感がある。文献レビューの具体的な方法は概要からは窺えない。今後発出されるガイドラインがそれをどう示すか次第で、「対応困難」な印象がさらに強まる可能性がありそうだ。

 それにしても、ガイドラインの発出はいつになるのだろうか。

 「今月末までに出るはず」「いや2月にずれこむ」「2月の中旬、下旬になる可能性はないか」──発出時期をめぐり業界関係者が口にする推測は年明け以降、どんどん先送りされている。

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