JAS化は選択肢の一つ 情報開示ガイドライン案(2015.2.12)

ガイドライン案

 農林水産省の補助事業で行われれている「健康食品の情報開示自主ガイドライン(案)」の概要が明らかになった。特定保健用食品や栄養機能食品、今春新設される機能性表示食品など保健機能食品を除く加工食品を対象に、有用成分やその含有量など消費者が欲しい情報、品質・衛生管理の方法、消費者対応の連絡先を容器包装に表示したり、企業のホームページを活用して情報を掲載するのが大きな柱。一方で機能性に関する表示については考慮に入れていない。

 事業実施主体の食品トレーサビリティシステム標準化推進協議会が4日、都内でセミナーを開いて概要を説明した。セミナーには同ガイドラインを検討した、中嶋茂氏(日本予防医学会副理事長)、太田明一氏(健康と食品懇話会相談役)、仲清志氏(山田養蜂場総務部社長室付担当部長)、天ケ瀬晴信氏(在日米国商工会議所ダイエタリーサプリメント小委員会委員長)、後藤典子氏(食と健康推進協会理事長)の5名が登壇。中嶋氏が代表して説明を行った。

 同ガイドラインは、消費者の求める情報を適正に開示する際に事業者が遵守すべき自主的なルールを示し、事業者の健康食品製造、販売に関する各種情報を正確かつ迅速に開示することにより、消費者の適正な商品選択に資することを目的とし、関連法令や指針等の遵守を大前提にしたうえで、消費者が求める情報を開示する仕組みとなっている。

 開示する情報は大きく3点あり、有用成分等の名称や含有量、健康食品GMPやHACCP、ISOなどの品質管理、衛生管理の方法、お客様相談室など消費者対応部門の連絡先となっている。

 ただ、細部は詰め切れておらずまだ生煮えであることは否めない。会場からは、機能を表示せずに何をもって有用成分かと戸惑いの声が上がったほか、安全性の基準については「残念ながらこれから」と手厳しい意見も。中嶋氏は、今後も説明会を開催して業界や消費者からの意見を吸い上げたうえで「3月末までにはかたちにする」と語り、現行案が不十分であることを認めた。

農水省 JAS化に慎重

 さて、同ガイドラインを巡っては、農水省の補助事業であること、健康食品のJAS規格化を匂わせた一部の報道、機能性表示食品制度創設直前というタイミングから、会場には200名を超す関係者らが集まり、関心の高さをうかがわせた。ただ、そのJAS規格について当の農水省は「(ガイドラインは)JAS規格のかなり手前。将来的な選択肢の一つ」(勝野美江食料産業局食品製造卸売課課長補佐)と語り、将来のJAS化の可能性に言及しつつも、ガイドライン即JAS規格化については否定。機能性表示食品制度の創設を控えていることもあり、言い回しはあくまでも慎重で、この面でも肩透かしを食らった格好だ。

 保健機能食品の土俵に上がらない、いわゆる健康食品の表示や品質をどう考えるかというアプローチは必要で、同ガイドラインの趣旨は理解できる。だが、JAS化や何らかの認証という話は、そもそも業界が必要性を認めて要望するべきものといえる。今回のガイドラインを受けて業界がどのように反応するかが、その先の行方を左右する。

【写真は、4日に農林水産省本館講堂で開催されたセミナー(東京都・千代田区)】

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