トクホ、並行審査方式へ 特別用途食には新区分も(2015.6.25)


 政府の規制改革会議(岡素之議長・住友商事相談役)は16日、「規制改革に関する第3次答申」を安倍晋三総理に提出した。健康・医療分野では特定保健用食品(トクホ)の審査期間短縮や判断基準等の明確化など具体策を挙げた。また、特別用途食品では、えん下困難者用食品の表示見直しや、とろみ調整食品、生活習慣病に対応した食品といった新たな区分追加に向けた検討を盛り込んだ。政府はこの答申を受けて具体的な実施計画などを策定、今月中の閣議決定を目指す。

 答申は、「健康・医療」のほか「雇用」「農業」「投資促進」「地域活性化」の5分野で182項目の策を盛り込んだ。

 トクホはこれまで消費者委員会、食品安全委員会、厚生労働省と順番に行っていた審査を、同時に行う方式に改めることで審査期間を短縮する。併せて消費者庁に標準的な事務処理期間の短縮や、その達成に向けた取組みの公表を求めている。現在、標準的な事務処理期間を設定していない消費者委員会にも、標準的な事務処理期間の設定を検討し、結論を得るよう要請する。

 消費者庁にはほかにも、許可要件の判断基準明確化や、いつ申請すればいつ審査が開始されるかといった見通しを申請者に示すこと、申請者が審査の過程で指摘された事項に的確に対応できるよう、申請者に速やかに議事録を開示することも盛り込んだ。答申ではいずれも今年度中に措置と明記した。

 また、規格基準型トクホの要件を通知などで明確化することも求めた。規格基準型は厚生労働省所管当時の同省審議会で①許可数が100件を超えていること②最初の許可から6年が経過していること③複数の企業が許可を得ていること――などのスクリーニング基準が示されている。ただ、同基準は法的根拠が弱いほか、食品形態が異なると許可件数を合算しない運用が行われていたため、規格基準が増加しにくいとの指摘がある。この方策については28年度中に措置することを明記した。

 一方、特別用途食品では、えん下困難者用食品の表示を分かりやすくする。えん下困難者用食品は硬さや付着性、凝集性などの物性で3区分に分かれているが、表示文言に区分による違いがなく、消費者に分かりにくいとの指摘があり、基準に応じた表示にする。

 また、とろみ調整食品の新規追加や、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病に対応した食品、腎臓病患者向け弁当などの新たな病者向け食品の追加を検討することも盛り込んだ。とろみ調整食は誤嚥防止を目的に医療や介護の現場では使われているが、特別用途食品に区分がない。新区分の検討は有識者などによる検討会で検討し来年度に結論を得ることも明記した。

 このほか、審査の効率化や恒常的な審査体制の整備なども盛り込んだ。

 現在の規制改革会議は、第2次安倍内閣が誕生直後の2013年1月に設置され、同年6月の第1次答申以降、今回で3回目の答申になる。第1次答申ではOTC(一般用医薬品)のネット販売解禁や健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備、今回の3次答申でも対象になったトクホ制度の許可申請手続きの合理化、迅速化などの規制緩和策を盛り込んだ。健康食品の機能性表示は今年4月に機能性表示食品として制度創設に至り、機能性情報等を届け出た食品が今月からインターネットや店頭で販売が開始された。

 昨年6月の第2次答申では混合診療の拡大、農地中間管理機構の創設など、岩盤規制といわれた分野の規制緩和を盛り込んだ。

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