機能性表示食品の販売開始 消費者の信用勝ち取れ(2015.6.25)

機能性表示食品

 科学的根拠に基づき販売者の責任で食品の機能性を表示できる「機能性表示食品」の発売が12日から始まった。先陣を切ったのは肌の乾燥を緩和する機能を訴求するヒアルロン酸が機能性関与成分のサプリメント。24日までに14商品が発売された。

 「肌の水分保持に役立つ」などと表示するヒアルロン酸を関与成分にしたサプリを12日に発売したのはキユーピー。朝日、読売にカラー全面広告を出稿し、「肌の乾燥に保水成分『ヒアルロン酸』」とアピール。特設ウェブサイトでは、届け出た機能性の科学的根拠に基づき、皮膚水分量の上昇作用を示すグラフ図などを掲載している。

 「広告レスポンスは3割増し、ウェブからの注文はおよそ10倍」(グループ会社トウ・キユーピー担当者)。同社ではヒアルロン酸配合サプリを以前から通販で販売していたが、機能性を表示した新商品に対する消費者からの反響は小さくないと手応えを語る。初年度で売上3億円以上を目指す方針だ。

 19日にはファンケル、森下仁丹がそれぞれ複数のサプリを発売した。「手元のピント調節力に」と表示するアイケアサプリ「えんきん」を発売したファンケルでは、日経など新聞8紙に全面広告を出稿し1万人無料モニターキャンペーンを告知。「まだ始まったばかりだが、多くのモニター希望者から電話が寄せられており、出足好調といったところ」だと話す。

 ファンケルでは「えんきん」について今期だけで12億円の広告宣伝費を投下する。同品は先ごろ発表した新中期経営計画で掲げた重点強化商品のひとつ。新聞広告のほかテレビCMなどの販促活動を駆使することで、既存品売上高を70%伸張させる計画だ。

 森下仁丹では、計6商品の機能性表示食品の新発売を機に、販路を広げた。従来の主要販路は通販のみだったが、機能性表示食品では、シリーズ全体を通じ、ドラッグストア、コンビニエンスストアといった店販チャネルでも展開する。サプリを含めた同社ヘルスケア事業の直近業績は売上高63.5億円。販路拡大による売上増加を同社では見込む。

 機能性表示食品の届出情報は24日までに44件が公開されており、今後も新商品が順次発売される見通しだ。一方、届出情報の科学的根拠の質などに対して一部の消費者団体から懸念を抱かれるなど、課題は多い。「食品表示を考える市民ネットワーク」(神山美智子代表)は今月初旬、新制度の運用中止と見直しを求める意見書を消費者庁などに提出した。

 他方、業界では、制度がより活用しやすいものになるよう関係各所に働きかける構え。関係各所が不明瞭な天然抽出物や、食事摂取基準の定められているビタミン・ミネラル類は制度の対象外となっている点など、業界にとっても新制度には課題が少なくないためだ。業界の要望を実現するためにも、まずは消費者からの信用を勝ち取る必要がある。
【写真=ファンケルは株主総会で機能性表示食品の発売をアピール(20日、横浜・港北区)】

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