睡眠サポート 機能性表示で拡大なるか(2015.8.20)


 睡眠に対する働きを訴求する機能性表示食品が、今月末から相次いで発売される。20歳以上のおよそ7割が睡眠の質に何らかの課題を抱えるという調査データもあり、潜在需要は小さくないと見られる。日本人は、睡眠改善のためにアルコール飲料を活用する傾向が諸外国と比べて強いという調査もあるが、需要を掘起し、新市場を創出できるか注目されそうだ。

 睡眠には心身の疲労を回復する働きがあり、睡眠時間の不足や睡眠の質の悪化は、生活習慣病のリスクにつながることが分かってきた──。

 厚生労働省がまとめた「健康づくりのための睡眠指針2014年」の冒頭ではこう記されている。一方で、日本人の睡眠の質を巡る状況は良好とは言えない。

 厚労省による平成25年国民健康・栄養調査によれば、男女約7100人に睡眠の質の状況を尋ねたところ、およそ7割に相当する約4900人が、「睡眠全体の質に満足できなかった」「睡眠時間が足りなかった」などと回答。このうち、男女ともに回答者の割合が多かったのは「日中、眠気を感じた」で、男性37.7%、女性43.0%に上ったという。

 日本では、睡眠改善薬として処方薬の睡眠導入剤と一般用医薬品の両方が存在する。日本初の一般用医薬品は、2003年にエスエス製薬が発売した「ドリエル」。寝つきが悪い、眠りが浅いといった「一時的な不眠症状の緩和」を効能とする。一方、今年4月にスタートした機能性表示食品制度でも、〝睡眠〟や〝眠り〟に言及する届出表示が受理された。これまでに2商品が届出番号を取得、8月21日と同24日にそれぞれ発売される。

グリシン

 21日に発売されるのは、味の素が届け出た顆粒状のサプリメント「グリナ」(登録商標)。「味の素kk健康基盤食品」として通信販売で展開している既存商品を、機能性表示食品としてリニューアル発売する。同社でも今後、機能性表示食品の拡充を積極的に進めていく方針だ。

 同品の関与成分は、必須アミノ酸の一種であるグリシン。味の素で同成分を〝睡眠アミノ酸〟と謳う。届出表示には、睡眠の質の向上のほかにも、日中の眠気改善、疲労感の軽減、作業効率の向上などといった機能表現も盛り込んだ。

 機能性の科学的根拠として届け出たのは、最終商品の臨床試験論文2報。届出表示に基づき、商品パッケージ正面に、「すみやかに深睡眠をもたらし、ぐっすりとした眠りとさわやかな目覚めをサポート」と表示する。深睡眠とは、徐波睡眠とも呼ばれる深い睡眠のことで、熟眠感と関連があるといわれる。

 関与成分の配合量は1本当たり3㌘、価格は30本入りで税込7128円。同社によると、既存品グリナの前年2014年度の売上は前年度比110%(金額ベース)と好調で、機能性表示食品として販売を始める今年度についても、「2ケタ伸張を目指す」としている。

テアニン

 一方、24日からは、緑茶に含まれるうま味成分のテアニンを機能性関与成分として配合したスティック型インスタント麦茶の販売が全国で順次始まる。「夜間の健やかな眠りをサポートすることが報告されています」と表示するもので、飲料大手の伊藤園が届け出た。

 テアニンを関与成分にした機能性表示食品は、伊藤園に先駆けて森下仁丹がサプリで届出番号を取得していた。一方、届出表示は作業などに由来する〝緊張感〟の軽減に言及するもので、睡眠訴求は伊藤園が初となる。

 スティック1本当たりにテアニンを200㍉㌘配合しており、希望価格は5本入りが税抜700円、30本入りが4000円と、インスタント麦茶としてはかなりの高価格帯商品になった。消費者が付加価値を認識するかどうかが商品普及の鍵となりそうだ。

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