機能性表示、検討の方向性 消費者庁・塩澤氏がAIFNで講演(2013.10.10)


 「主に栄養表示、機能性表示の制度設計や運用を担当している」という消費者庁食品表示企画課の塩澤信良食品表示調査官。200名を超える業界関係者を前に、「新たな機能性表示制度に向けた検討の方向性」と題した講演を7日、都内で行った。(関連記事「成分ベースの評価に言及 消費者庁・塩澤氏が講演」)

消費者意向調査を実施 制度設計の「基礎資料」

 塩澤調査官はまず、新制度の目的について次のように説明した。

 「現行制度には問題が指摘されていた。栄養機能食品では機能表示の対象となる成分が限られている。特定保健用食品では時間、コストが掛るため、特に中小企業では大変な負担となり、申請するのが難しいという指摘があった」

 「そのような中で、日本経済をより活性化させるという趣旨で、規制改革会議が立ち上がり、機能性表示のあり方を巡り有識者で議論され、新たな制度を検討するよう閣議決定された」

 「新しい制度を立ち上げる目的は、病気や介護を予防し健康を維持して長生きしたいという国民のニーズに応え、世界に先駆けて健康長寿社会を実現するためで、その内容としては、加工食品、生産食品・農林水産物について、企業等の責任で、科学的根拠を基に、機能性を表示できる新たな方策を検討すべきと示されている。またその検討に当たっては、米国のダイエタリーサプリメント制度を参考にすること、安全性をしっかり確保することも併せて考えていくべきであることが示されている」

 では、その上で同庁はどのような制度をつくろうとしているのか。

 「制度はこれから検討していくが、(閣議決定に基づけば、現状では機能性表示を認められていない)その他の食品の一部が機能性表示できるようになる。特に、生鮮食品で機能性表示できるのは米国にもない世界初の制度になる」

 制度の具体的な内容はまだ何も決定していない。その上、その検討に当たっては課題もかなり多い。主な課題について次のように述べた。

 「安全性をどう確保していくかが最重要の課題。米ダイエタリーサプリメント制度でも、安全策が講じられているが、実態として上手く機能していないことが政府内からも指摘されている。安全性の確保を図るにはどうすればいいかを第一に考えねばならない」

 「機能性を表示するに当たっての科学的根拠の要件も非常に重要な問題。消費者の誤認を招かない表示のあり方も深く考えていく必要がある。また機能性表示といってもいくつか種類があるが、例えば、米国制度のように構造機能表示のみを対象とするのか、あるいは疾病リスク低減表示まで認めていくのか整理が必要。また届出制について、米国でも義務化されており、販売後30日以内の事後届出となっているが、我が国も事後届出で良いのか、あるいは事前なのかとか、届出制を導入するとして、どういう項目をどのようなあり方で届け出るのかなどをしっかり議論する必要がある」

 消費者庁では今後、こうした課題の解決を図るための「基礎資料」を得る目的で、消費者意向調査を今年度中に実施する計画だ。

 「グループヒアリング、大規模調査をミックスしたデザインを考えている。機能性表示に対する誤認が起こりやすいと推測される人たちを含む一般消費者を対象に、どのような表示だと分かりやすいのか、逆の言い方をすれば、誤認しやすいのか(を検証する)」

 「機能性を表示する以上、最低でもこれだけの科学的根拠がなければ困るといったものを、あくまでも一般消費者の観点から情報を得て、それを基に新たな制度案というものをつくる。それを有識者の検討の場に案を示し、ご審議いただき、制度設計につなげたい」

 塩澤調査官は今回、与えられた時間の多くを質疑応答に割いた。最初の質問、国が関与する形の第三者認証制度を検討する可能性についてはこう答えている。

 「国がお墨付きを与える第三者認証制度は難しいと考えている。理由は2つ。まず、技術的に不可能。なにを評価するのかが確立されていて、誰がやっても同じような結果になるものは、国の代わりに然るべき第三者機関が評価を行うこともあり得る。だが評価ポイントが確立していないものについて、第三者に評価をお願いし、その結果を国の(評価)結果と同等と見なすというのは、制度として極めて難しい」

 「新制度は、最終製品ではなく、成分に対してエビデンスベースで評価していくことに恐らくなる。その場合、適切な論文のレビューが必要。だが、その論文のクライテリア(=キーワード、学術誌、被験者の属性、出版年等)をどう設定するかとか、その論文をどう抽出し、どう評価していくかなどは科学的に確立できていない」
 「これらを踏まえると、現段階では有効性について国がお墨付きを与えるような第三者認証制度は技術的に不可能と言わざるを得ない。それよりはむしろ、各企業が、どういう考えのもと、どういった方法で適切なレビューを行い、その結果このようなエビデンスが出たからこういう表示をするというのを、きちんと社名をかけて宣言していただき販売していただく方が制度として適切でないか。諸外国でも、有効性評価について、国がお墨付きを与えるような第三者認証制度を採り入れている国はない」

 「2点目は、閣議決定にそぐわない。企業等の責任において科学的根拠を基に機能性表示できる新たな方策を作りなさいとされているのだから、国が特定の民間団体にお墨付きを与えて評価してもらうという第三者認証制度は、いわば国の責任。したがって、それはもはや企業等の責任にはならないといえ、閣議決定内容と異なってくる」

 一方で、「(国ではなく)民間でやるという考えもある。民間組織などが中心となり(認証機関を)つくり、国はガイドライン等でそれを支援する。(健康食品)GMPの仕組みがその一つ。民間中心でやれば閣議決定に矛盾しない」──塩澤調査官の後に講演した規制改革会議委員の森下竜一・大阪大学大学院教授は、第三者認証制度についてこう述べている。

最重要課題は安全性確保 誤認与えない表示も要件

 新制度のガイドラインづくりを特定の団体等に委託する考えはあるのかという質問も投げかけられた。
 「今のところまったく考えていない。新制度の検討に当たっては、消費者が適切に商品選択できるよう、誤認のないような制度にしないとならない。そのため、特に有効性、表示のあり方については、消費者意向調査の結果を基に、制度を検討、設計していく。調査結果を基に消費者庁で制度案を作成し、事業者、消費者代表、学識経験者といった有識者にオープンな場で議論してもらい、フェアな制度をつくっていきたい」

 こう述べた上で、「ガイドライン」についてこう言及した。「ガイドラインにするかどうかはまだ決まっていない。今後の検討次第で何らかの義務的規定というものを考えていく可能性もある」

 また、新制度の導入に伴う新たな制約を受けて中小企業の良い商品が売り出しづらくなるのではないか、という問いにはこう答えた。

 「いまの特定保健用食品は最終製品で評価しなければならないということで、時間とコストが掛る。新制度はこれと同じ方法というわけには行かない。やはり、成分ベースの評価となろう。ただし、成分ベースであったとしても、手元に(科学的)根拠なく売っていいかどうかというのは、会社の規模に関係なく、そういった製品を売っていく上では、エビデンスを用いていることが当然だろうと考えている」

 「自分たちの製品で(エビデンスを)立証しなければならないのかどうかは分からない。公の論文をベースにすることも当然ある。いずれにしても、エビデンスを収集し、こういう考え、こういう根拠があって売るのだというということが、きちんと世の中にアナウンスできることを考えていく必要がある」

 一方、最終製品には様々な成分・素材が複合されている。表示できるのはその商品に含まれるメイン成分なのかという質問に対してはこう答えている。

 「有効性と安全性は分けて考えていく必要がある。成分『A』について何らかの機能性を表示したいわけだから、『A』についての有効性エビデンスが当然必要になる。かたや、機能性は標ぼうしないけれども成分『B』も製品に入っているという場合。『B』は機能性の観点からでなく安全性などの観点から何らかを考えていく必要が当然ある。中に入っている成分すべてで機能性が担保されている必要があるということには、恐らくならないのではないか」

 また、新制度の法的根拠および薬事法との兼ね合いについて訊ねる質問があった。

 「法的な根拠は何も決まっていないが、現行制度でみると、恐らく(今年6月に公布された)食品表示法でカバーしていくことになると予想される。機能性表示を原則してはならないと規定しているのが食品衛生法に基づく内閣府令。食品表示法の食品表示基準というのを我々は今後検討していくが、この府令は食品表示基準に移行していく。そう考えると可能性として最も高いのは、食品表示法と食品表示基準に規定していくというのがあり得る」

 「(薬事法との兼ね合いは)厚生労働省と一緒に考えていくこと。薬事法との関係性はしっかり考えていかないとならない。有識者からご意見をいただき、関係省庁とともにこれから検討していく。まだ何も決まっていないが、どの程度の表示までできるかは極めて重要なテーマ。主な論点になってくる」

 新制度の表示範囲に関する質問もあった。機能性表示は商品パッケージだけでなく広告宣伝などでも行えるのだろうか。

 「法令的にどういう整理となるかは置いておいて、両方検討していきたい。制度のつくり方としては色々あると思うが、例えば、まずはパッケージ表示のルールを検討した上で、別建てでPOPなどを含めた広告なども検討していくというやり方もあるかも知れない。やり方はともかく、表示はできないが広告は何でもありとなると世の中が混乱する。両方考えていきたい」

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