機能性表示食品 届出支援体制 続々整う (1)(2015.10.22)


 供給する素材で機能性表示食品制度に対応しようと、原料事業者が進めていた研究レビュー(システマティックレビュー=SR)が整い始めている。いわゆる健康食品を機能性表示食品にするには、各素材に含まれる機能性関与成分の科学的根拠の証明が最重要課題の一つ。SRを整えた原料事業者は、機能性関与成分の安全性情報も含めた必要届出書類をまとめるなどといった最終商品販売会社に対する届出支援を通じ、機能性表示食品への移行を後押しする。

リパミン広報センターと日油 大豆PS 脳機能でSR

 認知機能改善作用が報告されているリン脂質の一種、フォスファチジルセリン(PS)のSRがまとまりつつある。第三者機関に委託する形でSRを実施したのは、大豆由来PSを供給する競合企業同士。両者で有効活用し、数多く寄せられている届出支援の要望に幅広く応える構えだ。

 大豆由来PSの脳機能改善、および肉体的・精神的ストレス低減機能についてSRを行ったのは、同成分を供給する日油とリパミン広報センター(ビーエイチエヌ、DKSHジャパン、ヘルシーナビ)。それぞれが供給する原料の同等性も調査した。SRの結果は、機能性情報に関する届出資料の形式にまとめ、安全性情報に関する届出資料とともに、両者が個別に最終商品販売会社に提供していく計画だ。

 先ごろ開催された展示会内で中間報告を行った日油らによると、SRで最終的に採用された文献は脳機能改善、ストレス低減ともに4報ずつ。これらを統合した結果、それぞれの機能の有効性が示される1日当たり摂取量は、大豆由来PSとして100~600㍉㌘の範囲だという。

 一方、表示しようとする機能性については「現在協議中」といい、具体的にはまだ固まっていない。ただ、脳機能改善については例えば「中高齢者」「もの忘れ」「軽減」といった表現を組み合わせたような文言が想定されるとしている。

 PSの機能性表示を巡っては、韓国の健康機能食品制度で「PSは高齢者の認知力の低下をサポート」する旨が許可されているほか、米国の条件付きヘルスクレーム制度で「PSは高齢者の認知症リスクを低減させる可能性がある」との疾病リスク低減表示が認められている。
 また、日本の機能性表示食品制度ではこのほど、イチョウ葉エキスの有効成分について「認知機能の一部である記憶(知覚・認識した物事の想起)の精度を高めることが報告されています」という届出表示が受理、業界を驚かせた。大豆由来PSでも「認知」を含めた表現を行える可能性がありそうだ。

ルテインSR ユニキスも 想定機能表示に「視機能守る」

 すでに12品目で受理実績を挙げているルテインでは、原料供給するユニキスでも、第三者機関に委託実施していたSRをこのほど終え、最終商品販売会社に対する届出支援に乗り出した。ほかのルテイン原料事業者も、複数社で届出支援を積極的に進めており、ルテインを関与成分にした機能性表示食品の増加傾向は当面続きそうだ。

 同社によると、実施したSRから想定される機能性表示は、「加齢により減少する網膜の黄斑色素量を維持し、視機能を守ることが報告されています。本品は、健常者で目の疲れなどが気になる方に適した食品です」などだとしている。

 ルテインの主要機能といえる「黄斑色素量の維持」に言及する点では届出情報が公開されている大半のルテイン機能性表示食品と変わりはない一方で、「視機能を守る」の表現を盛り込んだ。これにより目に対する機能性を幅広く訴求できるようにしたい考え。

 このSRに対応する原料として同社では、3年前から輸入販売している、インドのオムニアクティブヘルステクノロジーズ社が製造する「ルテマックス」(登録商標)のうち、「同2020」と「同フリールテイン」の2製品を供給する。SR結果に基づき、ルテインとして1日当たり10~20㍉㌘の配合を提案する。

 前者は、マリーゴールド由来ルテインとゼアキサンチンを20%、4%の割合で含有量をそれぞれ規格、後者は同じくマリーゴールド由来ルテイン20%、同ゼアキサンチン1%で規格している。どちらもゼアキサンチンも同時に規格化した原料だが、同社が今回実施したSRは、あくまでもルテインの機能性を評価したもの。

 一方、製造元のオムニアクティブ社は現在、ルテマックスを使った臨床試験を活発化させている。先ごろ都内で開催された展示会でも、臨床試験で確認された生体利用効率の高さを発表。今後、試験成果が査読付き論文として発表されていくとすれば、ルテマックスは「機能性表示食品(の対応素材)として新しい展開も考えられる」とユニキスでは話す。

カネカ 菊花ポリフェノールで対応へ 新表示 尿酸値の上昇抑える

 「プリン体を含む食事による尿酸値の上昇をやわらげます」──このような効果を表示しようとする機能性表示食品が現在、消費者庁に届け出られている。

 機能性関与成分とされているのはルテオリン含有菊花抽出物、別名は菊花ポリフェノール。体内で生成される尿酸の量を減らし、また体外へ排泄される尿酸の量を増やすことで尿酸値の上昇を抑制する働きが確認されている素材だ。「カネカ・クリスフラボン」(登録商標)の製品名でカネカが供給しているもので、同社グループ会社のユアヘルスケアが届け出た。

 カネカが供給する機能性食品素材のうち、これまでに届出実績を得たのは還元型コエンザイムQ10(カネカQH)と、3%グラブリジン含有甘草抽出物(カネカ・グラボノイド)の2成分。SRで評価したこれら成分の機能性情報、安全性・作用機序情報を届出資料の形式にまとめ、最終商品販売会社への届出支援を進めている。

 菊花ポリフェノールについても、現在実施しているSRが完了し、届け出中2商品が受理され次第、グラボノイドなどに続く「機能性表示対応素材」として届出資料の提供に乗り出す計画だ。また、供給する「R037乳酸菌」に関しても同様に対応する方針。同素材では中性脂肪上昇抑制作用の表示実現を狙う。

 「尿酸値(の上昇抑制機能を表示する商品)はインパクトが大きい」と同社QOL事業部は話す。一方、還元型CoQ10で受理された「細胞のエネルギー産生を助け、日常生活で生じる身体的な疲労感を軽減」という表示のインパクトも小さくない。また、内臓脂肪など体脂肪低減効果に関する届出表示が行われているグラボノイドでは既に4品目が受理されている。

 届出実績のある2成分については受理待ち、あるいは届出準備中の商品が複数あるといい、供給量は以前の数倍に達する見通しだ。今後は、「訴求(表示できる機能性)の追加、機能性表示対応素材の追加」を進め、届出サポート体制をより強化する。

(続く)「機能性表示食品 届出支援体制 続々整う (2)」へ

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