機能性表示食品 研究レビュー検証に着手 消費者庁 (2015.11.12)

新制度この先

 機能性表示食品として届け出られた、機能性の科学的根拠の検証を消費者庁が始める。検証対象は10月31日までに届出のあった研究レビュー(システマティックレビュー)の全て。民間に事業委託し、来年3月末までに検証結果を取りまとめる。目的は、機能性表示食品制度を「より適正に運用していくための課題を抽出」しつつ、「研究レビューの質を高める方策等の検討を行う」ためだとしている。

WG設置 識者で構成

 同庁は事業委託先の公募を先月末より始めており、競争入札で委託先を決定する。入・開札は27日午後。9日に説明会が開催された。

 同事業を受託する先は、医療統計学やSRなどの専門知識を備える識者10名程度で構成するワーキンググループを設置し、WGで各レビューの検証を行い、結果を報告書として取りまとめ、課題や改善策を提示することになる。

 入札に係る仕様書によると、検証方法について同庁では、届出ガイドラインにある「機能性の科学的根拠に関する点検表」「PRISMAチェックリスト」のほか、「SRの実施手順に係る考え方(例)」に基づき検証するよう要求。また、検証対象について、先月末までに届出のあった全ての研究レビューが「望まれる」としており、120件以上が対象になる。

 ただ、WGの判断次第では、機能性関与成分などに偏りがないことを前提に、無作為化抽出などに適切な方法で検証対象を絞る「標本調査」でも構わないとする。ただしその場合でも、先月23日現在4件あるメタアナリシスを行っているレビューについては、全てを検証対象にするよう求めている。

課題検討会との関連は

 同事業をめぐり業界関係者の間では、研究レビューを検証する目的について、近く始まるとの観測もある、積み残し検討課題をめぐる議論との関連を指摘する見方がある。

 一方、板東消費者庁長官は11日の定例会見で「直接的には関係しない」とコメント。ただ、報告書が参考資料などとして議論の俎上に載せられる可能性はありそうだ。

 また、同事業の実効性を疑問視する見方もでている。期限は来年3月末と差し迫っている中で、研究レビューの再現性を検証するには相当の時間を要すると考えられるためだ。そのため、制度に詳しい業界関係者は、「あくまでもガイドラインを遵守しているかどうかを検証するのが目的ではないか」と見る。

 警戒感も強い。「SRはそもそも医薬品の有効性を評価する方法。その基準で研究レビューが検証されれば、すべてが〝ダメ〟となりかねない」と原料事業者は指摘した上で、「(研究レビューの)理想形を示すのにとどめるべき」だと訴える。

 一方で、同事業を請け負える先は果たしてどれだけあるのか、という疑問も聞かれる。「SRの識者といわれる方の大半が、(機能性表示食品の)研究レビューにかかわっている」(SRに詳しい業界関係者)と見られるためだ。「利益相反」が大きな課題になりそうだ。


 機能性表示食品の研究レビューをめぐっては、制度施行直後から民間で検証が進められている。
 このうち、『機能性表示食品のシステマティックレビューの質』と題した研究をUMIN‐CTRなどに登録している上岡洋晴・東京農業大学教授は、消費者庁の検証事業について、弊紙取材に次の通りコメントした。

 「諸々の条件が合致すれば、ワーキンググループの一員として参画する意思はある」。また、「SRの質」研究の進捗状況については、「順調(に進んでいる)。まとまった段階で公式発表する」としている。

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