制度施行状況の検証求める 全国消団連が再び意見書(2015.12.10)


 今年5月に機能性表示食品制度が抱える課題点を指摘し、改善を求める意見書を国や業界団体に提出していた全国消費者団体連絡会(河野康子事務局長)は、11月30日までに消費者庁長官などに対して同様の趣旨の意見書を再度提出、ホームページで公開した。「状況の改善が図られることなく進行し続けている」などと指摘している。

主婦連も批判的見解

 一方、同日に都内で開催された業界団体主催セミナーイベントのパネルディスカッションに参加した主婦連合会の佐野真理子参与は、制度に対する見解を求められた中で、「健康被害、契約被害を増加させ、消費者に不利益を被らせる欠陥制度」などとコメント。制度施行前にも同様に発言しており、厳しい見方はほとんど変わっていないことが浮き彫りになった。主婦連は全国消団連の会員団体。

 全国消団連が今回出した意見書の趣旨も、「消費者被害や不利益の発生を防ぐため」だとされている。前回も同様だった。

 その上で今回の意見書では、新たに、制度の施行状況を検証し必要な措置を検討する場を設けるよう要求。また、生鮮食品の届出が行われたのを受け、「『骨の健康に役立つ』という情報だけが独り歩きする」可能性に懸念を示すなどした上で、消費者にバランスのとれた食生活の推進を周知・推進するよう求めている。

 意見書では制度施行状況の検証と必要措置を検討する場を設ける必要性について、「機能性の根拠が非常に弱いと考えられるものや、安全性に疑問があるもの」があるため「全体に不信感を抱かざるを得ない」などと理由を説明。そのため、届出受理後に制度の目的に沿って販売されたり、消費者に利用されたりしているかの検証が「不可欠な状況」だとしている。

 機能性表示食品制度は、施行後2年を目途に施行状況を検討し、必要な措置を講じるとされていた。一方、公式発表は9日現在ないが、消費者庁は今月中にも、制度のみ残し検討課題などに関する検討会を設置、議論が始める見通しだ。検討課題としては、現在は制度の対象外とされている、ビタミンや糖類など食事摂取基準で摂取基準が策定されている栄養成分、機能性関与成分が不明確な素材などの取り扱いが有力視されている。

 検討会の立ち上げ観測は10月後半から強まっていた。その中で出された全国消団連の意見書は、検討課題に、制度施行状況の検証や必要措置の検討をはじめとする消団連の意見を盛り込むように釘を刺したものとも考えられる。

 河野事務局長は、制度創設時の検討会委員を務めていた。

広告表示の改善も要求

 全国消団連は今回の意見書で、機能性表示食品の広告・宣伝に対しても指摘した。「食品表示法に基づき記載される容器包装の表示内容との関係でかい離・齟齬も散見される」とし、「消費者が混乱・誤認しかねない状況」だと主張。広告・宣伝のルールを整備し、事業者を指導するよう求めている。

 広告については主婦連の佐野参与も、「1面広告をしているのに何故あのような小さな文字があるのか。その小さな字に限って重要だ。読んで欲しくないのか、知って欲しくないのかと不信感を抱く。こういう広告には『JADMAマーク』が付いているものが沢山ある」と厳しく指摘。「消費者選択の第一歩となるのが広告表示」だとして改善を求めた。

 また、制度創設時の検討会委員の一人で、佐野参与とともにパネルディスカッションに参加した元月刊「食生活」編集長の相良治美氏は、「宣伝にそれだけお金をかけるのであれば、製品そのものの向上にもっとお金をかけたほうがいいのではないか、というのが一消費者としての意見」などと述べた。

 一方で、同じくパネルディスカッションに参加した国民生活センターの宗林さおり理事は、表示や公開情報から機能性の程度を読み解けるほど消費者のリテラシーは十分ではないと指摘。「栄養士やアドバイザリースタッフといった専門家の読み解きが入ることで、機能性の程度が消費者に間違わないように伝わることが大事だ」と訴えた。

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