トクホ、並行審査方式へ 消費者庁が通知改正(2016.1.21)

トクホ改正

 昨年6月に閣議決定した規制改革実施計画に盛り込まれた特定保健用食品(トクホ)審査の迅速化に向けた制度見直しが進みだした。消費者庁は今月1日にトクホ審査を並行審査方式に変更する通知改正を行い、これまで消費者委員会の審査後に行っていた食品安全委員会への安全性審査を、消費者委員会の審査と同時に行うよう改めた。審査に係る同庁の標準的事務処理期間も1カ月短縮し、通常のトクホは5カ月、規格基準型は2カ月に変更した。

 トクホ審査は厚生労働省時代は同省の審議会で審査が完結していたが、2003年設置の食安委で安全性審査が行われるようになってから審査に時間がかかるようになり、09年の消費者庁移管後は、消費者委への諮問手続きも加わりさらに長期化傾向になった。今では審査に2~3年かかるのは珍しくない。

 審査期間の長さはトクホの魅力を削ぎかねない。申請企業は億単位も珍しくない試験費用をかけているうえ、食品は一般に流行り廃りが速く、許可されても時機を逃す可能性がある。大手など体力がある企業にしか申請できない所以の一つだ。機能性表示食品が誕生し、企業の自己責任とはいえトクホ並みの機能表示が早期に実現可能となった現在、審査期間の長さは企業にとってより負担に感じられるだろう。

 こうした事態の解消を目指したのが規制改革実施計画だ。今回の並行審査方式への見直しは同計画に対応したものであり、ほかにも、規格基準型トクホの拡大につながる関与成分の条件明確化について、16年度上期に措置するよう求めている。

 もっとも、実際にトクホの審査期間が短縮されるかは審査次第の面がある。追加の資料提出や説明が求められれば、その分審査は長引く。申請者に課すハードルが下がる訳ではない。

許可要件も変更

 一方、通知改正ではトクホ許可要件についても見直した。規制改革実施計画で判断基準の明確化として方策検討を求めていたもので、通知ではこれまで許可要件の最初に挙げていた「食生活の改善が図られ、健康の維持増進に寄与することが期待できるものであること」は、制度の根拠法である健康増進法の趣旨と重なるためこれを削除。代わりに同庁の質疑応答集でトクホに相応しくない食品として例示していた「食品又は関与成分が、ビール等のアルコール飲料や、ナトリウム、糖分等を過剰摂取させることとなるものでないこと」を加えた。許可要件は全部で8項目あるが、これ以外の変更はない。

 ただ、この要件変更に消費者委員会が懸念を示した。15日にはトクホ審査を担う新開発食品調査部会や新開発食品評価調査会の委員が集まり、同庁から説明を聞いた。これには前段がある。昨年、同委がトクホ不許可と判断したノンアルコールビールを、同庁が判断を覆して許可した際に問題となったのがこの許可要件であり、まさに今回の改正で削除された要件がノンアルビールに当てはまるかで同委と同庁がやりあった。

 15日の会合で通知改正について説明した同庁の吉井巧審議官は「あくまで同庁の許可基準を明確化、具体化したもの」と語り、従来同様、国民の健康維持増進に寄与するかどうかなど健康増進法の趣旨に則った制度運用を図る方針を強調。だが、同委委員のほぼ全員が納得せず、削除した要件の復活または通知のどこかに明記を求めた。最終的に吉井審議官は持ち帰って検討し、規制改革実施計画にあるその他の見直しで通知改正する際に併せて対応すると引き取った。

【写真=15日に開催された消費者委員会の会合(東京都千代田区)】

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