~考察~ 関与成分と食薬区分 (1)(2016.3.10)

新制度この先

 S-アデノシルメチオニン(SAMe)を機能性関与成分名とする機能性表示食品の届出が先ごろ受理された。その名は食薬区分の専ら医薬品として利用される成分本質(専ら医薬)リストの化学物質等の項目に挙げられており、この受理をどう捉えるべきなのか業界では頭を悩ませる。タウリンやグルタチオンなど名の知れた専ら医薬成分を機能性関与成分名として使える可能性が出てきたと喜ぶ見方も出てきたが、本当にそうか。

タウリン等 やはり困難では

トクホでは認めず

 食薬区分の専ら医薬リストにある成分を、機能性関与成分名として用いて構わないのか否か。突如沸き起こったその疑問に対する明確な答えは、機能性表示食品を法的に規定する食品表示法および同法に基づく内閣府令の食品表示基準のほか、届出ガイドラインにも見当たらない。

 例えば、タウリン含有牡蠣抽出物を配合しているのだとしても、機能性関与成分名にタウリンとあれば、業界関係者は強い違和感を抱く。「タウリン」と表示した時点で、専ら医薬成分であるタウリンの含有を強調的に標ぼうしたものと判断されると理解してきたからだ。

 そうしたこれまでの業界慣習を踏まえ、「専ら医薬成分を機能性関与成分名にはできない」と捉えていた事業者が大半だったと見られる。ただ、その考え方が明文化されていない以上、機能性関与成分と食薬区分の関係は、実は曖昧であった。

 一方、専ら医薬成分を機能性関与成分名として「使える」と期待しはじめた向きにとっては、法的な根拠がまったくないわけでもない。機能性表示食品制度の施行に合わせて行われた、いわゆる「46通知」(=無承認無許可医薬品の指導取締りについて)の別紙『医薬品の範囲に関する基準』の一部改正がそれだ。

 この改正では、「原則として医薬品の目的を有するとは判断しないもの」に、いわゆる「明らか食品」や特定保健用食品を含めた特別用途食品に並べる形で、機能性表示食品が追加された。

 この追加は、健康維持・増進の範囲内で身体部位に言及する表示を行う機能性表示食品と「医薬品の範囲」の関係を明確にするため、と理解するのが一般的だ。ただ、SAMe受理をきっかけに、専ら医薬成分を機能性関与成分名としても、「原則として医薬品ではないと判断される」と受け止められなくもない事態となっている。実際のところどうなのか。

 食薬区分を所管する厚生労働省に尋ねたところ、「機能性表示食品制度に関する話は所管の消費者庁へ」とにべもない。「(機能性関与成分と食薬区分の関係を)どう考えるかは食品表示法に基づくべきことで、(まず問われるのは)機能性表示食品として妥当なのかどうかではないか」

 一方で、制度を所管する当の消費者庁にしても、「個別の案件には答えられない」などとして、現在のところコメントを避けている。使えるのか、使えないのか、いまは推測すること以外できないのが現状だ。

 試みに、専ら医薬成分を機能性関与成分名に「使える」と仮定してみる。すると、「原則として医薬品の目的を有するとは判断しないもの」であるトクホの関与成分名としても使えるのかどうか、という疑問が出てくる。

 これまでそうした例は見られていないが、その疑問に対する答えは比較的明快だ。「使えない」だと考えられる。根拠は昨年末に改正された「特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領」。この通知には、トクホの要件が8項目挙げられており、その最後に、その食品および関与成分が専ら医薬リストに「含まれるものではないこと」とある。

ダメと書いた過去

 トクホで認められていないことが機能性表示食品では許されるなどということが果たしてあるだろうか。
 その上で、機能性関与成分と食薬区分の関係について消費者庁自らが言及していた過去に注目したい。制度施行直前の昨年3月20日付で公表された、機能性表示食品制度に係る食品表示基準案に関する意見募集(パブリックコメント)結果の中だ。該当箇所を以下抜粋する。

 意見「専ら医薬として使用される成分本質(原材料)であっても、γ‐オリザノールのようにもともと食品に含まれる成分についても、機能性関与成分となることを明確にしていただきたい」

 回答「専ら医薬リストに挙げられている成分について、機能性関与成分とすることはできません」

 消費者庁によるこの回答の前段には、厚労省が当時進めていた「医薬品の範囲に関する基準」改正手続きに関する説明がある。その上で、「しかし」と接続させる形でこう答えている。そう答える法的根拠は食品表示法なのか、それとも医薬品の範囲に関する基準なのかは不明だが、少なくとも当時の同庁は、専ら医薬成分を機能性関与成分とすることは認めない考えを明確に示していた。

 このように見ていくと、専ら医薬成分を機能性関与成分名とすることは、機能性表示食品は原則として医薬品とは見なされないのだとしても、「本来できない」と理解するのが正しいと考えられる。

 一方、パブコメ回答で示した考え方は、食品表示基準にもガイドラインにも反映されていない。また、この回答内容の読解として、専ら医薬成分を機能性関与成分として配合できないのは当然だとしても、その成分名も含めて「機能性関与成分にすることはできない」と言っているのかがいま一つ判然としない。その疑問は、前述のトクホ「指導要領」にも同様にある。

 機能性表示食品として妥当であれば、専ら医薬成分を機能性関与成分名としても問題ないのかどうかは、実際に届け出てみないと分からない──現状ではこうまとめるほかはない。

~考察~関与成分と食薬区分(2)】 に続く

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