HMB スポーツ市場で存在感 配合商品増加傾向に(2016.4.21)


 筋肉の分解抑制と合成促進という2つの作用メカニズムによって筋肉量や筋力を高めたり、除脂肪量を増加させたりする機能が報告されているHMB。米国では近年、運動パフォーマンス向上のためのスポーツニュートリションとして市場規模が拡大、日本でも、09年の食薬区分改正で非医薬リストに収載されて以来、配合商品がじわりと増加傾向にある。

 HMBを巡り日本の健康食品業界では現在、シニア層向けサプリとして関心が高まりつつある。厚生労働省がまとめた「日本人の食事摂取基準(15年版)」報告書の「高齢者」の項目で、「筋肉におけるたんぱく質合成を誘導する重要な働きをすると想定されている」として、HMBによるサルコペニア予防・改善の可能性に言及。また、筋肉量の増加に働く可能性を報告する複数の介入試験の存在を伝えたためだ。

 一方、いち早く商品化に動いたのは、プロアスリートやプロ格闘家など「プロ」を対象にしたスポーツニュートリションの専門メーカーだった。複数社がこれまでに採用し販売を進めており、一般消費者に先駆け、プロの間で認知が広がりつつあるとみられる。

 米スポーツニュートリ市場でHMBの需要が大きく伸び始めたのは、11年ごろだといわれる。市場規模は現在100~200㌧などと推測されており、GNC、NOW、SWANSON、ヴィタミンショップといった大手も取り扱う。また、日本でも医療機関などで取り扱われているHMB配合サプリ「アバンド」を販売する米ヘルスケア大手アボット社でも、HMBを活用したスポーツニュートリション「ジュベン」を展開。HMBの年間使用量が400㌧以上に達するとの見通しもある同社だが、HMBと筋肉の健康に関する普及啓発にも積極的だとされ、さらなる市場成長も予測されている。

 他方、世界のHMB原料市場に目を向けると、最も多く利用されているのは、「HMβ(エイチエムベータ)」を製品名とする原料であると考えて間違いない。米メタボリック・テクノロジー(MTI)社が開発、TSI社が製造するもので、10年以降に数が増えたHMBの臨床試験論文の多くで使われている原料。年間供給量は数百㌧規模だとされ、世界のHMB原料市場でシェア8割以上を握るとみられている。

 日本で「HMβ」を供給するのは、ヘルシーナビと兼松ケミカル。「HMBはTSI社以外にも複数の企業が製造しているが、機能性や安全性に関するエビデンスは、『HMβ』が最も充実していることは間違いない。多くの大手企業に採用されていることもあり、品質管理体制もしっかりしている」と話す。年間供給量を踏まえると、食経験も兼ね備えていると考えられる。

 両社が「HMβ」で需要開拓を進めているのは、やはりスポーツニュートリ市場。筋肉増加作用で知られるクレアチンのブランド原料「クレアピュア」も供給している両社は、同素材を「プロ」に特化したマーケティングで普及させた実績がある。「HMβ」もこれに倣った戦略で、まずはプロ向けスポーツニュートリション市場に広げる狙いだ。

 プロに普及させるための情報提供体制も整えた。国際スポーツニュートリション学会(FISSN)特別会員ラルフ・イェーガー氏とアドバイザー契約を締結、効果的な摂取方法など、専門的な問い合わせにも対応できるようにした「HMBは、プレ・ワークアウト(運動前)に利用するべきだとイェーガー氏は話している。単回摂取でも効果は期待でき、運動後の筋肉痛を抑えることで、トレーニングの効率を高めることができる」という。

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