【素材探訪】どこに向かうかシトルリン(2013.11.7)


 「シトルリン」と聞いてどう思うだろうか。

 「鉄板素材。入れておけば大丈夫。まだまだ拡販できる」──ある有力原料商社ではこう評価する。何に入れておけば大丈夫なのかといえば、滋養強壮系サプリ。2007年、食薬区分改正により大注目されたこの成分は昨今、もっぱら男性機能改善素材と捉えられているようだ。

 一方で、サプリとしての利用が日本よりも先行していた米国では様子が異なる。

 シトルリンを製造販売する協和発酵バイオによると、「スポーツサプリとしてかなり盛り上がっていて、プレ・ワークアウトに摂るサプリとしてここ数年で市場が急速に広がっています。『NO BOOSTER』がキーワードです」

 「NO」とは勿論、一酸化窒素のことだ。その産生にともなう血管拡張作用がシトルリンにはある。勃起不全改善薬バイアグラも、その効果の背景にはNO産生作用があると考えられている。

 他方で、NO産生作用は運動パフォーマンスの向上にも役立つと言われる。血管を拡張させることで、筋持久力を高めたり、ベンチプレス回数を増やしたりすると報告されている。

 これに着目し、NO産生作用のあるシトルリン、ないしアルギニンを配合したのが「NO BOOSTER」サプリ。一般層にまでユーザーが拡大しており、関連市場規模は両成分合わせて年間約4千㌧、末端では5億米㌦にのぼるという。

 こうした米国での動向を見て、シトルリンをスポーツサプリに配合しようという動きが日本でも表れている。

 森永製菓の「ウイダー」シリーズ。今年6月に発売された「エナジードリンクアップ」に配合された。ほかに2製品が同時発売されているが、それぞれ異なるタイミングでの摂取が提案されており、配合品は「運動前」。つまり、米国で需要が拡大しているプレ・ワークアウトのためのサプリという位置づけだ。

 「日本のスポーツサプリ・ドリンク市場を俯瞰すると、アミノバイタルの存在感がかなり大きいのは事実です。ただ、プレ・ワークアウトのカテゴリはまだ空いています」と協和発酵バイオでは話す。「各社と連携して『運動前』のムーブメントを起こし、このカテゴリはシトルリンで取りたいと思います」

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 振り返ってみると、シトルリンは血管への働きを軸に、これまでにも様々な機能訴求が試みられてきた素材である。冷え・むくみ改善、肌質改善、動脈硬化予防、抗疲労作用──などだ。

 その中で、現在のところ唯一、市場に定着したといえるのが男性機能改善作用なのかもしれない。一方で、それはたしかに社会的ニーズも高い機能といえるが、体感の良さには定評がある素材だけに、それ一色に染まってしまうのは果たして正しいことなのか。

 協和発酵バイオとしても昨年、シトルリンの訴求コンセプトを改めて探ろうと、消費者を中心にヒアリングを実施。その結果、浮かび上がってきたのは、期待する効果として脳機能・集中・覚醒・パフォーマンスアップ、活用したいシーンとしては、スポーツ・仕事・趣味だったという。

 これを受け、新たなメインコンセプトとして打ち立てたのは「血流を介したパフォーマンス、集中力アップ」であり、これに基づきターゲット市場に設定したのが、プレ・ワークアウトを切り口にしたスポーツサプリメント分野。さらに、仕事前などの集中力向上を訴求するエナジードリンク領域にもシトルリンを広げようとしている。

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