機能性関与成分検討会レポート(前)(2016.5.12)

検討会第4回

ビタミン ミネラル 対象化に向け旗色悪く

 消費者庁が4月26日に開いた「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」の第4回会合で、食の3次機能が期待できる栄養成分も機能性関与成分の対象に加えるよう要望する事業者団体代表に対し、消費者団体代表やアカデミア委員の多くが反対姿勢を鮮明にさせた。栄養機能食品制度が存在する中で栄養成分を対象にすると「消費者が混乱する」「過剰摂取につながる」などと主張している。会合はおよそ2時間にわたり行われたが、両者の意見は平行線をたどり、ほとんど議論にならなかった。

食機能「理解不足」も理由

 この日の議題は「栄養成分の取扱い(安全性の観点から)」。前回会合の事業者団体ヒアリングを経て、現状では機能性表示食品制度の対象外とされている成分の取扱いについて、本格的な検討がスタートした格好だ。会合は全10回が予定されており、10月頃の最終会合で報告書を取りまとめる。

 栄養成分の安全性確保に関する検討は、次々回の第6回会合でも行われる見通し。栄養成分の機能性表示についても第6回、第8回会合でそれぞれ検討される予定だ。これまでのところ特にビタミン・ミネラルについては対象化に反対する意見が幅を利かせているのが現状だが、事業者団体代表委員が巻き返しを図る機会はまだ残されている。

 ただ、この日の会合では「そもそも反対」だと主張しているのに近い意見が噴出。巻き返せるにしても一筋縄にはいきそうにない。

 「(栄養成分は)栄養機能食品制度で栄養機能を表示できる仕組みがあり、それとは別の現行制度で栄養成分を対象にするというのは、制度間の整合性という点で適切とは言い難い」「栄養成分表示に関して制度が分立すれば、機能性の表示が独り歩きし、消費者の誤解、混乱あるいは弊害につながりかねない」──田口委員(=名古屋経済大学教授)に代表されるこうした反対意見が事業団体代表以外の委員から多く上がった。

 その上、「確実に過剰摂取につながる。(対象化は)やるべきではない」(迫委員=日本栄養士会専務理事)としてビタミン・ミネラルの過剰摂取リスクに対する強い懸念を示す委員も少なくない。「いちばん考えるべきことは、過剰摂取のリスク」(合田委員=国立医薬品食品衛生研究所薬品部長)。
 ビタミン・ミネラルの過剰摂取リスク懸念に絡める格好で、現行制度の見直しを消費者庁に強く要望する委員もいる。

 「(海外で)定められたADI(1日摂取許容量)よりも多く含まれるものが機能性表示食品として売られている場合もあり、それが本当に安全なのか議論はなされていない」と合田委員。迫委員も「様々な過剰摂取のリスクがあり得るのではないかという懸念が生じている。(ビタミン・ミネラルの)追加というのは(制度の)見直しがされた上での話ではないか」などと述べた。

 また、食の機能に対する消費者の「理解不足」を理由にした反対論も目立つ。「消費者は3次機能と言われてもほとんど理解できていない」(河野委員=全国消費者団体連絡会事務局長)、「(食の機能について国民がまず知るべきことは)必ず1次機能から始まる食事摂取基準であらねばならない。そこが保証される前提で次(3次機能)のお話に進む」(佐々木委員=東京大学大学院医学系研究科教授)、「栄養機能食品自体があまり理解されていない」(澤木委員=全国消費生活相談員協会食の研究会代表)──。

 こうした「消費者保護」の観点から繰り出される「そもそも反対」の主張には業界代表委員もさすがに気圧され気味だ。

 そもそも本検討会の役割には、栄養機能食品・機能性表示食品制度間の整合性がどのように図れるかだったり、消費者の誤認や過剰摂取リスクを回避する方策だったりを議論することにある。議論を尽した上で消費者保護を理由に「反対」を唱えるならまだしも、栄養成分の取扱いに関して具体的な方策を示している健康食品産業協議会会長の関口委員ら業界団体代表委員の提案はこの日、糖質・糖類に関するものを除き、ほとんど議論されないまま終わってしまった。これでは一体なにを「検討」しているのかが分からない。

 「言いたいことを言っているだけ」だと傍聴した業界関係者は話す。

機能性関与成分検討会レポート(後)へ続く

【写真=第4回検討会の様子(4月26日、東京・千代田区)】

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