保健機能食も誤認表示例 消費者庁、留意事項改定へ (2016.5.12)


 消費者庁は4月20日、健康食品の虚偽誇大表示の禁止に関する考えや具体例を示した「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の改定原案をまとめた。「いわゆる健康食品」のみだった例示を特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品などの保健機能食品も含めた健康食品全般に広げて名称も変更。ただ、法的な解釈に変更はないという。5月20日まで意見募集したあと、必要な修正などを行い6月中に公表する。

 この改定により、消費者委員会の建議を受けて2013年12月に策定された現行の留意事項は廃止される。
 虚偽誇大表示として規制対象になるのは、健康保持増進効果について著しく事実に相違又は著しく人を誤認させる表示が該当する。健康保持増進効果を表示しても直ちに虚偽誇大表示に該当するわけではないが、その判断は分かりにくい。

 今回の改定は、現行の留意事項と同様、具体例を多く挙げて分かりやすさや事業者の予見可能性を高めることに配慮した点は同じ。ただ、対象を保健機能食品にまで拡げ、それぞれ個別に虚偽誇大表示に当たる表示例を示したほか、現行ではイラストなどを使って紹介していた表示例を廃し、より実態に即した広告例を2例示して説明してある。

 健康保持増進効果の範囲や表現例としては、疾病の治療や予防、身体の組織機能の一部増強などの項目ごとに具体例を示した。また、分かりにくい暗示や間接的な表現では「ほね元気」「延命○○」など製品の名称やキャッチフレーズの例を増やした。

 一方、規制対象の中では、新たにアフィリエイトサイトについても記載し、広告主が表示内容の決定に関与している場合、法的措置を受ける事業者に当たるとした。また、「著しく」に該当する範囲では、インターネットの口コミやブログを加え、事業者が口コミ代行業者に依頼し好意的な評価を受けているかのように表示させることは虚偽誇大表示等に当たる恐れがあるとした。

 個別の例示では、トクホでも許可を受けた表示内容を超える表示は不当表示に当たることや、試験結果グラフの不適切な表示例などを挙げた。一方、機能性表示食品では、届出内容を超える表示やトクホと誤認される表示、さらに、表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いている場合などに分けて、それぞれ例を示してある。

 また、事業者自らが表示の合理的根拠を示さなければ不当表示とみなす、不実証広告に基づく過去の措置命令案件で、同庁が合理的な根拠と認めなかった事例を初めて紹介した。事例には、ウェブサイト上の情報などをまとめただけで学術文献ではなかったものや、ヒト試験であっても被験者の選定が恣意的であったり、動物実験データで、ヒトへの有効性を実証するものではなかったものを挙げた。

 同庁が策定した広告例2例は、いわゆる健康食品で違反が多い「痩身効果」と「糖尿病」について、実際にありそうなキャッチコピーや体験談などを示し、そのうえで健増法等に基づく考えや解釈を紹介した。

解説 根拠ない健食淘汰の一環

 消費者庁が今回示した改定原案は、消費者委員会が4月12日に建議した健康増進法の誇大表示の範囲明確化など制度改善要求の一部を満たすものとなった。

 今回の改定は、もともと健増法31条で規定する虚偽誇大表示の禁止に係る事業者への勧告や勧告に従わない場合の措置命令の権限を都道府県へ移譲するのに合わせた関係指針の改正などとセットで行われており、同委の建議とは直接関係がない。だが、同委が建議の中で求めていた虚偽誇大広告等の規制強化や、有効性や安全性の根拠がない健康食品を淘汰するといった流れは本格的だといってよく、こうした健康食品を販売する事業者は退場が求められているといえる。

 また、トクホや機能性表示食品であっても、行き過ぎた広告表示が規制対象になることを、改めて認識させる意味でも今回の改定の意味は大きい。3月にはトクホ広告では初めて健増法に基づく勧告が行われた。これまで築き上げてきたトクホに対する消費者の信頼に大きな汚点となる可能性は低いと見られるが、制度発足わずか1年の機能性表示食品については、まだ消費者の信頼を十分得られたとはいえず、いま傷がつく訳にはいかない。

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