セレノネイン、健食原料に エル・エスが今秋にも (2016.5.26)


 「セレノネイン」と呼ばれる新規の抗酸化物質を含有するサバ肉抽出物の開発を、㈱エル・エスコーポレーションが進めている。同物質は日本の研究者が魚介類から単離し、化学構造を決定したセレン化合物の一種。強い抗酸化作用のあることで知られる含硫アミノ酸「エルゴチオネイン」と化学構造が似通っている一方、ラジカル消去活性能は1000倍近く強いと報告されている。同社のオリジナル健康食品素材として今秋にも原料供給を始める計画。

 セレノネインを発見したのは、国立研究開発法人水産研究・教育機構の山下倫明、山下由美子の両氏。有機セレンを多く含む魚の血合いから抽出したセレン化合物の構造を解明し、エルゴチオネインのチオケトン基がセレノケトン基に置き換わる新規化合物であったため、「セレノネイン」と命名した。

 同物質の発見については両山下氏らが2010年、米国生化学分子生物学会が発行する著名学術誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー」に論文発表している。同物質の機能研究も行っている両氏によれば、セレノネインには抗酸化作用のほかにもメチル水銀の毒性軽減作用などがあるという。

 エル・エスコーポレーションでは現在、水産研究・教育機構はじめ福岡工業大学、水産加工会社の天生水産(佐賀県唐津市)らと共同で、セレノネインが多く含まれるサバを原材料として同物質の含有量を規格した「酵素分解サバペプチド」の開発や機能性研究を進めている。

 製品規格の詳細については現在検討中だが、サバのタンパク質を高純度にペプチド化した素材となる見通し。セレノネインのほかにも多様な栄養成分、機能性成分の効果が期待できる素材になりそうだ。
 酵素分解サバペプチドの抗酸化能については先ごろ開催された日本栄養・食糧学会大会で、福岡工業大学生命環境科学科の田丸靜香准教授が研究発表を行った。酵素分解を行わないサバペプチドと比べて顕著に高いラジカル消去能が認められたことなどを報告している。

 同社は酵素分解サバペプチド上市後の市場展開について「抗酸化作用を軸にした生活習慣病対策素材として打ち出したい」(松本聡・原料商品開発部長)と言う。

 なお、同社ではエルゴチオネインを規格化したタモギタケ抽出物を現在供給しており、同素材については今後、これまでの研究から示唆されている認知記憶対応素材として提案していく方針。近く新たな研究発表を行うという。

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