“SRのSR”と“検証事業” 「別のもの」だが重なる部分(2016.7.7)

上岡氏

 「FFC‐SR2」と研究グループが呼ぶ研究の結果が一部明らかにされた。届け出られた機能性表示食品(FFC=Foods with Function Claims)の研究レビュー(システマティックレビュー=SR)をさらに「SRする」というこの研究。「別のもの」だというが、結果概要が先ごろ一部公表された、消費者庁による「届け出られた研究レビューの検証事業」と重なるところもある。

指摘共通「不十分」

 FFC‐SR2の主要研究者の一人、上岡洋晴・東京農業大学教授(=写真)。「機能性表示食品におけるSRの現状と課題」と題した講演を日本健康食品規格協会(JIHFS)定期総会記念講演会で行い、結果概要を初めて明かした。その後、4日にあった第37回社福協健康食品フォーラムでも同じ内容の講演を行った。
 一方、消費者庁による「研究レビュー検証事業」の結果概要は5月26日、「機能性関与成分検討会」第5回会合で同庁が配布した資料の中で初公表。「計画的に実施され、丁寧な記述をしている研究レビューもあった」一方で、「不備のある(評価の記述がない、あるいは不十分な)研究レビューが半数以上を占める項目もあった」という。

 検証事業が評価対象としたのは、昨年10月末までに届出情報が公開された122品目のうち51編の研究レビュー。かたやFFC‐SR2は昨年10月27日までに公開された118品目のうち49編が対象と、評価対象はほぼ重なる。

 他方で、評価手法はそれぞれ異なる。検証事業は届出ガイドラインで準拠を求められている「PRISMA声明チェックリスト」に基づく検証などが行われた一方、FFC‐SR2ではSRの方法論的な質を評価するツール「AMSTARチェックリスト」が採用された。

 上岡教授は講演でPRISMA声明について「どのようにレポートするかのためのツール。研究方法の質を評価するツールではない」とコメント。また研究レビューの届出でAMSTAR準拠が要件とされていない点については「(FFC‐SR2の)目的はあくまで研究方法の質を評価することで、それ(届出要件)とは別の話だ」と述べた。

 検証事業の全体結果を示す報告書はまだ公開されていない。FFC‐SR2についても、現在、英文誌に論文投稿されており、結果の全容が分かるのは掲載後となる。評価結果は届出別にスコアリングされているが、論文では「評価結果はランダマイズされ、どの企業のものかは勿論わからない」と上岡教授。ただし、中には11点満点中3点に満たないものもあるという。

 講演で上岡教授は、評価結果の全体感について、複数の評価者間で判断が一致しない場合が少なくなかった点を特に強調。「(評価を実施したかどうかの)記載はあるものの不十分。それを『記載あり』と判断して良いのか迷うところが非常に多かった」といい、「(SRで)それは困る。実施している、していないを明確に記載してもらわないと第三者は分からない」と述べ、この点だけでも届け出られた研究レビューの質が見えてくると指摘した。

研究継続報告書受け

 評価手法は異なるが、検証事業、FFC‐SR2ともに「不十分な記載」が多く見られると指摘している点で結果は同じと言える。また、「検索キーワードが不足しているものや検索対象年、アウトカム等で不必要に絞り込みを行い、検索式を正しく規制していないものもあった」と検証事業が指摘した検索の適正性についても、FFC‐SR2の評価項目の一つ「MESHタームや関連する機能を用い、包括的な文献検索がなされたか」の結果は「不十分」だった。適正に実施したり、記載したりしていたレビューは半数程度にとどまるという。

 「どうして使っていなかったのかは分からない。意図的に、引っ掛かってくるとまずいから使わなかったのかは分からない」と上岡教授。「消費者庁の検証事業は、検索方法の細かい所まで見ていると思う。さらなる細かい情報が得られると期待している」

 消費者庁は検証事業の結果を受け、「『PRISMA声明チェックリスト 機能性表示のための拡張版』に基づく適正なSRの記載方法」を今後公表する予定だ。「研究レビューの質の向上となるよう(検証事業)報告書の付録として作成された」もので、これについて上岡教授は「ここはこういうふうに記載したほうが良いなど、恐らく『指南書』のようなものを意味していると思う」と推測してみせた。

 上岡教授は、システマティックレビューの基本は「PRISMA声明や、AMSTARに基づく計画、実施、記載」だとしたうえで、この「指南書」により、研究レビューの質は「確実にレベルアップしていくのではないか」と期待を寄せる。

 また、FFC‐SR2は今後も継続し、検証事業の報告書が公表されるなどした後に研究レビューの質が高まったかどうかを明らかにし、それでも不十分な部分があれば、消費者庁への提言などを検討しているという。加えて、機能性表示食品の研究レビューや臨床試験に特化した独自のチェックリストの開発も計画している。

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