植物抽出物 同等性、多様な分析必要(2016.7.21)


 機能性表示食品「北の国から届いたブルーベリー」の届出撤回を求める日本アントシアニン研究会。同品の研究レビューで採用された文献に用いられたビルベリーエキスと同品に配合されているそれは「異なるメーカーのもの」だと指摘したうえで、同等性に疑問を投げ掛ける。当該文献に用いられているビルベリーエキス「ミルトセレクト」(登録商標)を供給するインデナジャパン㈱はどう考えているのか。川田晋取締役に話を聞いた。

エキス全体が有効成分 同一規格で臨床効果違う場合も

──当該商品の研究レビューで採用されている文献2報のうち1報の著者には川田さんが含まれます。

 「届出書類を読んだだけでは分からないが、使用したビルベリーエキスはミルトセレクトであることが論文中に明記されている。もう1報にしても、当社が直接関わったわけではないが、用いられたのはインデナ製であることの確認が著者に取れている」

──同品に配合されているのはミルトセレクトでは?

 「供給していないのだからそうではない」

──制度上、他社による臨床試験論文を自社の研究レビューに活用することは禁じられていません。

 「確かにそうだが、投資して積み上げてきた研究成果を誰でも商業利用できるというのでは、開発型企業にとっては何らメリットのない制度だ。投資の回収が見込めないのであれば、投資意欲や、新製品を開発するモチベーションも下がってしまう。特許で保護すればいいと言われるかも知れないが、何でもかんでも特許にできるわけではない」

 「それに、ブランド戦略の面からも問題がある。ミルトセレクトのロゴを商品パッケージに貼付するなどして差別化を図るお客様も少なくない。ミルトセレクトを配合しなくても研究論文は自由に利用できるとなれば、せっかくミルトセレクトを選んで下さっているお客様に申し訳が立たないし、ブランドが大きく損なわれる」

──原材料は北欧産ビルベリーであり、かつ、15種類のアントシアニンが36%含まれる。それが担保されていれば「ミルトセレクトと同等」と言えませんか?

 「それだけで『同等性がある』と言うには科学的根拠が希薄過ぎる。基原とアントシアニンの含有量は同じだとしても、ビルベリーエキス全体をみると、アントシアニン以外の成分や、その含有量などについて、製造者ごとに違いがあるからだ。その違いは薬理活性にも影響すると考えられる。実際、ミルトセレクトと規格が同じ他社のビルベリーエキスと、ミルトセレクトの薬理活性の違いをインデナがヒトを対象に検証したところ、臨床効果は他社のエキスの方が低かった」

 「ビルベリーエキスに限らず、植物エキスのように多成分を含む健康食品素材は、エキス全体を有効成分、機能性関与成分として評価する必要があると思う。私が著者の一人になっている論文でも、『15種類のアントシアニンを36%含むビルベリーエキスに有効性が認められた』と記述している。ビルベリー由来のアントシアニンそのものに有効性が認められたなどとは言っていないし、そのように報告する論文はいまのところ存在しないはずだ。さらにいえば、ビルベリーエキス全体とアントシアニン単体の生体吸収率について当社が行った比較試験では、アントシアニン単体はエキス全体の8分の1程度であることが分かっている」

──届出ガイドラインなどを確かめても、どの程度同等であれば「同等だ」と言えるのかは明確にされていないと思います。

 「単一化合物は別にしても、植物エキスなど天然物の同等性を正しく評価するにはさまざまな分析が求められ、その上で『同等だ』と言うのは本来とても難しいことだと思う。そうだからこそ大半の企業が、これは当社の周りではそうだという話だが、文献で用いられている原料と同じ原料を商品に配合するのが『当たり前』だと言うのではないか」

(聞き手=本紙記者・石川太郎、取材日=7月15日)

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