対象エキス等 リスト必要か 機能性関与成分検討会(2016.8.11)


 4日に開催された「機能性関与成分検討会」。機能性関与成分が明確でないものの取り扱いについて話し合われたが、前回の会合まで目立っていた「とにかく反対」の声は影を潜めた。同等性を示す届出情報を従来よりも強化するなど一定の条件の下、植物エキス等を制度の対象に加える方向が明確になりつつある。一方で、機能性関与成分が明確でないものの具体例を、業界代表委員が示さないことに批判の声もあがる。ただ、それをすれば機能性表示食品制度の可能性を業界自らが潰すことになりかねない。

クラスⅢも知見拡充でⅡに

 届出ガイドラインに例示されている「機能性関与成分の考え方」。化合物群を中心に大きく3分類が示されているが、検討会の議論が今の方向性のまま進めば、今後、そこに植物抽出物など「エキス」の概念が追加される可能性が出てきた。

 「機能性関与成分としてエキスを認めればよい」。国立医薬食品衛生研究所の合田幸広委員はこの日の会合でこう述べ、一部の委員が「成分」の定義にとらわれ、話が堂々巡りに陥りそうな場面を救った。農研機構の山本(前田)万里委員も、機能性関与成分の考え方の中に「エキスを定義して盛りこめばストンと落ちる」と発言。合田委員の案を支持した。

 機能性関与成分の考え方を整理し、その一例として植物エキスなどをガイドラインに記載する案は、この日、機能性関与成分が明確でない食品の制度対象化に向けた方策を盛り込んだ「業界案」を提示した、日本通信販売協会の宮島和美委員も要望している。座長の寺本民夫・帝京大学臨床センター長も前向きとみられ、山本委員の提案について「場合によってはそのようなことを考えてもいいのでないか」とし、引き続き議論したいと述べた。

 「機能性関与成分が明確ではないもの」と言うと聞こえは悪いが、生薬にしても、一つの機能性関与成分だけで効いているわけではない。機能性と安全性について一定の科学的根拠が確認され、その機能性と一定の相関関係もある品質管理のための指標成分を持つエキス等は、制度施行時から明確に例示されているべきであった。

 そもそも、植物抽出物などエキスを機能性関与成分とする届出は、すでに複数受理され、販売も始まっている。この事実を受け、機能性関与成分が明確でないものの取り扱いを巡る検討会の議論は、機能性関与成分の定義の整理と、エキス等の品質管理のあり方など条件整備を話し合う段階に移った。

 条件整備のうち、制度対象に加えるエキス等の方向性については、この日の検討会の様子などを踏まえると、合田委員よる「クラス分け案」のうち、クラスⅠおよびⅡが対象であることはほぼ既定路線とみられる。

 一方、具体的にどのようなエキス等がそれらに該当するかについては、今回の会合でもほとんど例示されなかった。「どのようなものがクラスⅠやⅡの対象になるのか、なり得るのかをできるだけ早めに具体的に明らかにして欲しい」──。名古屋経済大学の田口義明委員はこう訴えた。

 クラスⅠやⅡに該当するものを具体的に示して欲しいという要望は、「対象外とするクラスⅢに該当するものを具体的にせよ」との意味合いを言外に含むと考えられる。消費生活コンサルタントの森田満樹委員は、「線引きをきちんとしないと、本来はクラスⅢのものがⅡに入ってきてしまうのではないか」と懸念を示す。

 この日、宮島委員が提出した業界案の中で例示された抽出物名は2つのみ。具体例を示そうとしない姿勢に批判の声も一部であがる。

 しかし、クラスⅠ・Ⅱの具体例が明示されれば、そこに挙げられていないエキス等は機能性表示食品への道が完全に閉ざされてしまう可能性がある。研究の深耕によって新たな知見を得て、機能性を持つ成分と品質管理のための指標成分を関連づけようとする企業努力をも排除してしまうことも懸念され、機能性表示食品の普及で期待できる健康食品市場健全化の面からも得策ではないだろう。

 半面、リスト化により、制度運用が円滑になる可能性がある。最も恩恵を受けるのは消費者庁だと思われる。対象ではないものが一目瞭然となれば、煩雑な届出書類確認の手間を省けるからだ。他方、事業者としても、機能性関与成分の選定が容易になるメリットも考えられる。ただ、それは、機能性や安全性について一定の科学的根拠が確認された食品に関して、事業者の責任で機能性を表示できるという制度の根幹を損なうことにもつながる。

 機能性関与成分の対象を業界が自ら狭める必要はない。仮にそのエキス等がクラスⅡに該当するものであれ、機能性・安全性の科学的根拠が乏しければ機能性表示はそもそも難しい。業界代表委員が示すべきは、機能性関与成分が明確でないものの具体例ではなく、業界全体で科学的根拠を拡充していくための枠組みづくりに向けた道筋だ。

品質管理 生薬の考え方示す

 消費者庁はこの日の会合で、エキス(抽出物)等の管理指標成分の要件案を予め示していた。

 管理指標の要件案として挙げたのは、①複数の成分を設定できること②エキス等に特徴的な成分であること③少なくとも一つの管理指標についてエキス等の機能性に係る作用機序について考察されている成分であること──。③については「管理指標自体に活性がないと、管理指標を基にした定量による機能性の担保が困難」だとしている。

 加えて、「エキス等の定性確認に求められる事項案」、「最終製品の定性確認に求められる事項案」、「定量確認に求められる事項案」も示した。

 このうちエキス等の定性確認に求められる事項は、抽出溶媒の種類・温度・量・時間・回数など抽出に関する事項▽分離方法▽乾燥方法▽殺菌方法▽エキス等の性状・パターン分析・純度試験・乾燥減量など細かな規格設定が求められるとする案を提示。また、最終製品の定性確認に求められる事項では、「最終製品に含まれるエキス等由来の複数の管理指標のパターンが、最終製品のロット間でばらつかないかの確認」などを行う案を示した。

 この規格設定に絡み同社は、参考資料として、厚生労働省が発出した「生薬のエキス製剤の製造販売承認申請に係るガイダンスについて」も添付。寺本座長は「これ位のことをしていただかないと、第三者によるチェックができなくなる」などと述べた。

 さらに同庁は、機能性の評価方法について、「最終製品を用いた臨床試験に限るか、エキス等に関するシステマティック・レビュー評価が可能か」といった視点も、エキス等の生産・製造、品質管理体制の議論を行うには必要だと指摘した。

 一方、今回の会合で終始議論をリードしたといえる合田委員はこの日の午後、第5回日本アントシアニン研究会に参加し、「錠剤・カプセル型機能性表示食品の品質保証」と題した講演を行っている。

 この中で合田委員は、サプリメントの品質保証の基本は「(臨床試験による)エビデンスが取られたものとの同等性(の確認)」だとし、「原材料の同等性と、製剤(最終製品)での同等性の両者を常に説明する必要がある。両者が合っていないと、エビデンスが取られたものと同等は言えない」と強調した。

 また、「同等性の話になると、原材料だけの同等性が大事だと思われる。そうではなく最終製品でも同等性が担保されていることが大事」だと述べ、最終製品での同等性を評価する方法として、ヒトを対象とせずに生物学的同等性を確認できる「溶出試験」を挙げた。この日の検討会の中でも言及している。

 溶出性が異なれば体内動態も変わる。そのため、「同じ機能性を得られるかどうかが分からない」と合田委員。「販売者は誠実に同等性を説明する必要がある」と言う。

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