取下げ要請で経緯説明 アントシアニン研究会(2016.8.11)

アントシアニン研究会HP用

 日本アントシアニン研究会(矢澤一良会長)は4日、第5回研究会を都内で開いた。会場には業界関係者ら100名余りが聴講に訪れ、会場はほぼ満席となった。研究会は先月、八幡物産㈱が現在販売中の機能性表示食品「北の国から届いたブルーベリー」について、届出撤回を同社に求めていることを明らかにしている。この日行われたパネルディスカッションでは、研究会代理人の山口貴士弁護士(リンク総合法律事務所)が、同社とのやり取りについて経緯説明を行った。

 八幡物産は今年3月、研究会が同品の届出情報を巡るやり取りの内容を公開しないよう求める仮処分を、東京地裁に申し立てていた。

 これについて山口弁護士は、機能性表示食品は「届出内容について自由な批判、議論がされることを前提にした制度」だとの見解を示したうえで、専門家が届出情報に対し「意見を述べたりすることについて訴訟や仮処分を申請するのは、制度自体の機能不全につながり、誰の得にもならない」と指摘。それにより「機能性表示食品というシステム自体の信頼性が損なわれれば事業者にとっても損だ」とも述べた。そして、事業者責任で食品の機能性を表示することを根幹とする同制度に関して消費者からの信頼性を高め、維持していくためには「自由に議論させるしかない」と指摘した。

 また、一連のやり取りでの研究会の主張に対する八幡物産の反論は、実質的に「ガイドラインに従って届け出ているということをひたすら強調する」ものだったと説明した。一方で、研究会は同品の届出情報について「エビデンスが不十分だということを緻密に立証していった」と述べ、届出制と事後チェック制が採用された機能性表示食品制度にとって、「ガイドラインを満たすことは必要条件であって十分条件ではない」との考え方を示した。

 同社は今年5月、仮処分命令の申し立てを裁判所の判断が出る前に取り下げた。これについて山口弁護士は「不利益な決定が出て、それが前例として残ることを気にして取り下げた。負けを認めたというのが一般的な考え方」だと述べた。ただ同社では、「当事者間の協議による穏当な解決が不可能であると考えるに至ったに過ぎない」としている。

 この問題に絡める形で行われたパネルディスカッションのテーマは、「機能性表示食品制度~問われる企業姿勢と学術専門家の役割~」であった。

 パネリストのグローバルニュートリショングループの武田猛代表は、「(研究会の指摘に対して)十分な説明責任が果たされたとはいえない。その結果、大ごとになってしまった。最初に研究会が質問した時に誠実に応えていれば、これほどの問題にはならなかった」と述べた。

 同じく、科学ジャーナリストで消費者団体「FOOCOM」代表の松永和紀氏は「一般消費者がきちんと理解できるとは思えない複雑さがある。だから専門家がこうした指摘を行い、それをもとに消費者が考えられることは非常に有意義なこと。機能性表示食品をきちんと利用するための第一のステップになる」とし、「それに対して相手方は誠実に答えていただければよかった。それで終わったはずだが、そうではなかった。それによって、消費者からすると、『内輪揉め』のように見えてしまう状況となってしまった。誰にとっても良くないという状況にある」などと語った。

 パネルディスカッションで座長を務めた矢澤会長は「知ってしまった以上、(アントシアニンに関する専門家集団として)目をつぶることは出来ない」と述べた。

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