ビタミン・ミネラル 結論出ず 議論延長 可能性残す(2016.9.8)


 1日に開催された消費者庁の「機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」第8回会合で、ビタミン・ミネラルの取扱いについて議論されたが、制度対象に加えるべきだとする業界者団体委員と、反対する消費者団体委員及び一部アカデミア委員の間に横たわる溝は埋まらなかった。そのため、検討会は残り2回だが、次回会合では、機能性関与成分が明確でないものに加え、ビタミン・ミネラルにも議論の時間を充てることになった。ただ、双方の主張の隔たりは大きく、結論がまとまるかは不透明と言える。検討会関係者からは、「何度議論しても堂々巡りになるだろう」と悲観的な声も聞かれる。

反対派、譲歩案も「NO」
 健康食品産業協議会会長の関口洋一委員はこの日、消費者団体委員らが懸念する栄養政策の混乱や過剰摂取リスクを回避したうえで、ビタミン・ミネラルを制度対象に加える方策を盛り込んだ新たな業界案を提示。この案は、配合量を国が定めた栄養機能食品の上限量を上限とし、栄機食で認められた栄養機能をそのまま併記できるよう求めるなど、反対を唱える委員に最大限譲歩する内容だった。

 機能性表示食品と栄養機能食品の「ダブル表示」を認めてほしいとする今回の業界提案は、内閣府令の食事摂取基準と、届出ガイドラインの改正が必要な一方で、栄機食で表示が許可された機能をそのまま表示するため、ビタミン・ミネラルを機能性関与成分の対象に追加せずとも実現可能というものだった。

 だが、この譲歩案でも局面打開には至らず、「消費者が混乱する」といった、これまで通りの反論が相次いだ。ビタミン・ミネラルを配合した機能性表示食品も少なくない中で、業界案は、「表示せずに配合している製品を(機能性表示食品制度の)ルールに乗せる」という、消費者に対する商品情報開示に関わる意義も示した注目されるものだったが、反対する委員は取り合おうとしなかった。

 「ダブル表示」に反対した東京大学大学院教授の佐々木委員は、「(保健機能食品制度の)全体像が国民に見えにくくなる」と懸念を示し、「更なる増築を図るのではなく、消費者庁には全体の建屋を考えていただきたい」と述べ、情報開示よりも各制度間の整合性確保を優先するべきとの考えを示した。

懸念に配慮した業界〝新〟案
 また新たな業界案では、ビタミン・ミネラルそれぞれの新しい機能については、栄養機能食品制度の枠組みで早急に検討するようにも求めており、栄養機能食品で認められている範囲を超える3次機能の表示を要望してきたこれまでの主張をいったん封印。一方で、複数のビタミン・ミネラルの組み合わせで顕在化する3次機能については表示を認めるよう求めた。

 関口委員は、「組み合わせによる効果であれば、個々の成分を扱っている栄養政策などの混乱にはつながらない」と主張。案では、その際のビタミン・ミネラルの配合量についても、栄養機能食品の上限量を上限とすることを前提条件としており、過剰摂取リスクの懸念に対しても十分配慮した合理的な提案だったといえる。

 ただ、消費者問題研究所長の田口義明委員は、「成分の組み合わせによる3次機能を表示するのはかなり高度。それを事業者責任で行うというのは、消費者としては極めて危険な感じがする」として疑問視。また、国立健康・栄養研究所の梅垣敬三委員は、「消費者のための制度を考えるのであれば、(ビタミン・ミネラルは)入れるべきではない」としたうえで、「消費者団体はずっと反対している。その中でこうした議論が出てくるのは不思議だ」として、消費者団体委員の肩を持った。

 平行線を辿る双方の主張に対して寺本民生座長・帝京大学臨床研究センター長は、「もう少し議論せざるを得ない」と述べ、結論の先送りを決めた。次回第9回会合は、10月4日に開催される予定だ。

糖類、糖質は概ね了承 関係事業者、慎重な姿勢も
 機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」の第8回会合では糖類、糖質についても議論され、健康食品産業協議会が提示していた業界案が概ね了承された。栄養源(エネルギー源)になりにくい糖質、糖類に限定して機能性表示食品制度の対象に加える方向だ。

 糖類、糖質を巡っては、制度施行前の段階では機能性関与成分の対象だと理解する業界関係者が多かった一方、「制度が始まってからダメだと言われた」と関係事業者は不平を漏らす。そのため、この日の会合を受けても、「最後まで安心できない」と慎重な姿勢を崩さない企業もある。

 この会合で消費者庁は、糖類、糖質について業界案をベースにした取扱い案を提示し、対象となり得る糖質、糖類の定義について、「主として栄養源(エネルギー源)とされる成分(でんぷん、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、乳糖及び麦芽糖)を除いた糖質・糖類」とする案を示した。

 これについて国立医薬食品衛生研究所の合田幸広委員は、「合成物は除くという前提が必要」だと注文をつけた。

 また、取扱い案では安全性の評価について、食品安全委員会で安全性が評価されていない成分に関しては、「喫食実績による食経験の評価に加え、既存情報による安全性試験評価や、安全性試験の実施による評価を通じて安全性を確認する」という方向性を示した。

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