抗菌石鹸 波紋拡がる 業界団体、対応に走る(2016.10.6)


 米国FDA(食品医薬品局)が抗菌石鹸に含まれるトリクロサンなど19成分を殺菌効果が期待できないとして使用禁止にした問題が波紋を広げている。

 FDAの決定を受け、厚生労働省は9月30日、日本化粧品工業連合会と日本石鹸洗剤工業会に対し、代替物質への切り替えを要請する文書を出し、両団体も対応に動き始めた。しかし、トリクロサンなどは環境NGOが、内分泌かく乱物質として指摘しており、殺菌効果だけの問題で止まるのか、状況は流動的だ。

 昨年6月に同じく使用禁止にした欧州化学品庁(ECH)も抗菌石鹸の殺菌成分としての禁止措置だが、背景には内分泌かく乱物質の問題があったとの見方もある。環境省はすでに昨年、内分泌かく乱物質対策の一環として、トリクロサンについて第1段階試験(試験管内試験)を行っているが、現時点で内分泌かく乱の影響度合いは明確になっていない。ECHAは殺菌成分としては禁止したが、化粧品などの防腐剤用途としては禁止していない。今回、厚労省が業界団体に代替物質への切り替えを要請したのも、あくまでFDAの措置を踏まえたもので、現時点で内分泌かく乱物質の懸念を打ち出しているわけではない。

 内分泌かく乱物質問題は、極微量の化学物質がホルモンバランスなどに影響する難しい問題で、影響が懸念される物質の数も明確に分かっていない。抗菌石鹸や化粧品の分野で内分泌かく乱物質問題がクローズアップされれば、影響はかなり大きくなりそうだ。

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