「神戸ユーグレナ」 神戸製鋼グループがOEM供給開始 (2017.1.26)

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 【「神戸ユーグレナ」乾燥粉末】
 
 神戸製鋼グループが食品市場に参入した。環境分野を手掛けるグループ中核企業の㈱神鋼環境ソリューション(神戸市中央区・以下神鋼)が16日、微細藻類「ユーグレナ」を使った健康食品・サプリメントなど食品のOEM事業を開始。筑波大学との共同研究で発見したユーグレナの独自株で市場差別化を図りつつ、シェア拡大を進め、2020年度までに売上高20億円を目指す。

 連結売上高が1兆8000億円を超える同グループの食品事業参入は初。事実上の1社独占状態にあるユーグレナ原料・OEM市場に競合企業が登場するのも初めてで、競争の発生に伴う市場環境の変化とともに、さらなる市場規模拡大が予想される。

 神鋼は、独自ユーグレナの普及・啓発を図るため、「神戸ユーグレナ」ブランドを立ち上げ、専用ウェブサイトも16日から開設した。

 また、早くも来月には、調味料メーカーの富士食品工業(横浜市港北区)から第1号商品が発売される予定。神戸ユーグレナは従来のユーグレナ粉末とは異なり、淡い黄金色を呈す特徴があり、ミドリムシ(ユーグレナ)をめぐる消費者イメージを大きく変えていく可能性がある。

 免疫賦活や腸内環境改善などの機能性が期待されているユーグレナの特有成分、パラミロンの含量も豊富だ。神鋼の調べによると、代表的なユーグレナと比べ、4.5倍以上も多く含まれるという。

 独自のユーグレナ株を原料にした食品のOEM事業に参入した神戸製鋼グループの神鋼環境ソリューション。その粉末が淡い金色を呈す理由は、ユーグレナの生産法にあるという。密閉されたプラント内で培養するため光合成を行わないからだ。同社が「純粋培養」と呼ぶ、生育に必要な栄養素をユーグレナに与えるこの培養法によって、不純物の混入を防ぎ、天候の影響を受けない、高品質のユーグレナの安定生産を可能にした。

 同社固有のユーグレナ株の名称は、「ユーグレナグラシリス EOD‐1」(以下、神戸ユーグレナ)。
 同社が筑波大学との共同研究でユーグレナの新規株であるEOD‐1を発見し、培養に成功したと発表したのは2013年。主力の水処理事業で93年、日本初の微生物を利用した「自然ろか設備」を開発したのを契機に、微細藻類の研究を進めていた。

 その後、生産性の向上を進めながら、15年11月に食品製造業の営業開始届書を本拠地の神戸市保健所に提出し、神戸ユーグレナの食品OEM事業の参入準備を本格化。同社の技術研究所(神戸市西区)に食品製造設備を新たに設置し、現在までにHACCP認定も取得した。

 「パラミロンの含有量や粉末の色が差別化ポイントになる。また、生産法に基づく栄養成分の安定性や品質・衛生管理の高さなど、食品としての扱いやすさを訴求しながら市場開拓を進めていく」。

 独自ブランド「神戸ユーグレナ」を使った食品OEM事業の方針について同社の藻類事業推進室はこう語り、「機能性エビデンスの面からも差別化していきたい」という。

 同推進室によると、神戸ユーグレナのパラミロン含量が一般的に知られるユーグレナZ株(=国立環境研究所保存のNIES‐48)と比べて4.5倍以上多い理由は、株そのものの特徴と、培養法にある。

 同社は、ユーグレナからパラミロンを高純度に抽出精製する方法について特許(第5883532号)を取得しており、神戸ユーグレナのパラミロン含量はおよそ70%と顕著に多い。今後、人を対象にした、食品としての機能性研究の実施を視野に入れているほか、化粧品や化成品などへの応用開発、事業化も検討していく方針だ。

 一方、神戸ユーグレナの年間生産量については、今のところ市場先行企業には及ばない。ただ、複数の最終商品を受託製造できる体制は現時点で整っているといい、今後、積極的なOEM提案を進めていく構え。同推進室では、「引き続きスケールアップの検討に取り組む」と話している。


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