届出長期化問題 消費者庁、規制改革押し切る(2017.3.9)


 政府の規制改革推進会議ワーキンググループに機能性表示食品制度の運用状況を厳しく問われていた消費者庁担当課が、追求を押し切った。ワーキング委員が届出公表の遅れなどを強く問題視していた中で、担当課はここ4カ月間で公表件数を従来比2倍以上に増やすとともに、先月28日、「届出者の予見可能性の向上」に今後取り組むとして、届出Q&Aの作成など複数の改善施策を委員に提示。規制改革推進室によると、担当課の取り組みに対してワーキング委員は、おおよそ納得感を示しているという。

届出公表件数2倍以上に くすぶる実質審査の疑い
 規制改革推進会議の医療・介護・保育ワーキンググループ(WG)は先月28日、「機能性表示食品の届出に係る改善策」を議題にした非公開会合を昨年12月14日に続いて開き、消費者庁食品表示企画課長からヒアリングを行った。規制改革推進室によると、WGはこの議題に関する議論を今回で終える方向にあるものの、一部の委員から「議論し尽くしていない」とする意見もあるといい、今後については「正直、微妙」だとしている。

 推進室によると、担当課長はこの日、委員に対し、届出者の予見可能性の向上▽届出資料のやり取り回数縮減▽販売までの時間短縮──を図るための新たな取り組みとして、適切な届出資料を提出してもらうための「届出Q&Aの作成」、業界団体からの質問に対応するための「専門窓口の設置」、届出者が書類確認状況を把握するための「同庁ウェブサイトにおける原則1週間ごとの処理実績の公表」──を2017年度末までに実施と説明した。

 提示された改善策に対してWG委員は、「17年度末と言わずもっと早く」などと意見したほか、KPI(目標評価指標)の設定、作業工程表の策定を要求する意見も上がり、改善策を確実に実行するよう求めている。

 一方、担当課長は今後作成する届出Q&Aについて、届出者から問い合わせの多い事項、ガイドラインで分かりにくい事項、届出資料で不備の多い事項、さらに制度の対象外の事例について記載すると説明した。

 また、昨年11月から今年1月まで90日間の届出公表件数について、「約2.4倍」になっていると説明。制度施行以来の公表件数は月平均25.7件だった一方、11月は48件、12月は72件、1月は62件と大きく増加しているとしたほか、届出書類の確認状況についても、以前は92日だった差し戻しまでの所要日数が、現在は「56日」にまで短縮されているとした。

 こうしたスピードアップの背景については、専門知識を持つ政策調査員6名を昨年11月に増員したことがあると説明したという。ただ、増員は16年度補正予算によるもので、雇用期間は今年度末までとなる見通し。そのため担当課は今後、新年度に入ってからもスピードを維持できるかどうかを問われることになる一方で、3月に入ってからの届出情報更新は8日までに計2回と、前の月までと比べて急速に落ち込んでいる。

 WGの委員は昨年12月14日の会合で、担当課による制度運用の現状について、届出制にもかかわらず書類の「実質審査」を行っている可能性を指摘したうえで、「制度上破綻している」「行政手続法違反だと思う」「抜本的なところで考え直していただきたい」などと極めて厳しい意見を担当課長にぶつけていた。

 担当課は、届出書類に不備が多いことが公表までに時間がかかっている理由だとしている。
 しかし一方では、届出表示に対する実質審査が行われているうえに審査基準にブレがあるとの見方が業界内には根強い。実際、「以前に受理されたのとほとんど変わらない届出が通らない」(届出者)といった事例を指摘する声が多数上がっており、先月28日の会合終了後、WG委員の森下竜一氏は、「実質的な審査が行われているように見える点に関しては納得していない」とコメントした。

 同庁は今回、現行ガイドラインに分かりにくい部分があると認め、Q&Aの作成をはじめとする前向きな改善策を提示した。ただ、実質審査の疑いが晴れない限り、実効性の高い改善策となるかどうかは疑問符が付いたままとなりそうだ。業界内からは、「審査されてもいいから基準を示して欲しい」といった声まで上がり始めている。

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