消費者庁 アイケア表現に「優良誤認」 根拠ないとし措置命令 (2017.3.23)

景表法修正 執行_①_大日堂広告 ①

 合理的な根拠がないにもかかわらず目の症状を改善する効果を得られるかのように健康食品について広告表示していたとして、消費者庁は9日、健康食品通販会社のだいにち堂(長野県安曇野市)に対して景品表示法(優良誤認)に基づく措置命令を下し、発表した。ただ、同社は即日、命令に対する不服をホームページで表明。法的対処を講じる構えもみせている。

 同庁表示対策課食品表示対策室の発表によると、同社は「アスタキサンチン アイ&アイ」という食品について昨年6月27日から30日までの間、朝日新聞に掲載した全面広告に「ボンヤリ・にごった感じに」「ようやく出会えたクリアでスッキリ」などと表示し、あたかもボンヤリ・にごった感じの目の症状を改善する効果が得られるかのように表示していた。同社は表示の根拠資料を提出したものの、表示を裏付ける合理的な根拠とは認められなかったため不当表示(優良誤認表示)と認定した。

 課徴金納付命令の対象期間に当たるため、課徴金についても「現在調査中」(食品表示対策室)としている。

 だいにち堂が提出した根拠資料にはヒト試験論文も含まれていた。今月3日の水素水関連食品販売3社に対する景表法に基づく措置命令では、根拠資料として提出されたのが病者対象のヒト試験論文だったことも優良誤認の判断根拠とされていたものの、病者対象でもなかった。ただ、「提出資料の成分摂取量と、当該食品の摂取量にはだいぶ差があり、少なかった」(食品表示対策室)ため表示を裏付ける合理的根拠と認めなかった。今回も、水素水関連食品販売3社に対する措置命令と同様に、セカンドオピニオン事業を活用したという。

 処分を受け同社は9日、ホームページを通じて措置命令を受けたことを伝えるとともに、不当表示と認定された広告表現について「社会通念を逸脱したものではなく、優良誤認表示には該当しないと判断」しているとして処分に対する不服を表明した。そのうえで、「お客様の当該商品に対するご理解を歪め、同時に弊社内の問題にとどまらず、業界全体を委縮させる恐れがある」ため、法的に対処することも検討しているという。

 処分に不服のある事業者は、行政不服審査法に基づき、処分から3カ月以内に審査請求を行える。また、行政事件訴訟法に基づき、処分から半年以内であれば処分取り消しを求める訴えを提起できる。

 措置命令の対象となった同社が販売している商品は、アスタキサンチンのほかにも複数のアイケア成分を配合するもの。各成分の配合量については、当該広告や同社ホームページ上の商品紹介ページに記載が見当たらなかった。

 取材に対して同社は21日、「法的対処も含め、今後の方針を検討中」としたうえで、同庁に提出した根拠資料の内容や成分配合量については「法的対応に関わる内容のため、回答は控えたい」との回答を寄せた。

「にごった感じ」 踏み込み過ぎでは
 アイケア訴求の健康食品を巡る広告表現が優良誤認と見なされた。問題となった新聞広告が掲載されたのは全国紙大手であり、厳しい広告考査が行われたうえで掲載されたと考えられる。処分のインパクトは小さくない。

 消費者庁は今回の処分に絡み、表示のみならず表示に関わる機能性成分の商品中含有量も問題視したようだ。だいにち堂が表示の根拠資料として同庁に提出したヒト試験論文の成分摂取量より、実際に商品に配合されていた成分量は少なかったと同庁は説明している。

 両者が同等量以上であった場合はどう判断されたのかが気に掛かる。
 ただ、配合をアピールする成分について、科学的根拠が見出されている摂取量よりも顕著に少ない量しか摂取できない商品は、広告表現はどうあれ消費者の不利益につながる場合もあり得る。機能性表示食品制度が運用されている現在、いわゆる健康食品といえども機能性表示食品と同等レベルの品質確保が求められていると言えそうだ。

 一方、景表法が禁じる優良誤認表示とは、消費者に対して実際のものよりも「著しく」優良であると示す表示を指す。それに当たるか否かは、表示内容全体から消費者が受ける印象や認識により総合的に判断される。

 それが原則だが、同庁が今回、優良誤認に当たると判断した表示を個別に見ると、踏み込んだ表現とは思えないものもある。中高年男性・女性の写真とともに「クリアでスッキリ」「新聞・読書 楽しみたい方に」などと訴求するアイケア関連商品の広告は珍しくない。ほかの関連商品広告との兼ね合いを疑問視、あるいは不安視する見方が上がるのは当然だろう。

 ただ、広告の中で最も目立つ形で配置していた「ボンヤリ・にごった感じに」といった表現はどうか。特に、「にごった感じ」は、眼疾患の一つである白内障に対する効果を暗示していると受け取られたとしても不思議はない。同庁は今回、その点をとりわけ重く見て行政処分を下したのではないか。

 他方、同庁は、アイケア機能を訴求する機能性表示食品について、届出表示の文言に「ぼやけ」を盛り込んだものを複数受理している。そのため今回の処分の背景には、いわゆる健康食品と機能性表示食品の広告について、明確に線引きしたい思惑もあったのかもしれない。今回の行政処分を機に、アイケアにせよ何にせよ、機能性を暗示させるような広告表現はますます難しくなる可能性が考えられそうだ。

【写真=措置命令の対象となった表示媒体】

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