機能性表示食品制度 事業者アンケート調査 業界の問題意識を定量化 (2017.6.22)


 機能性表示食品を届け出たことのある企業の95%が「受理に至るまでの時間」を問題と捉えている──機能性表示食品制度および制度運用を巡る業界各社の認識・実感を尋ねた健康食品産業協議会(木村毅会長)のアンケート調査でこのような結果が出た。「消費者庁の確認作業の不透明さ」が課題だとしたのも全体で68%、届出実績のある企業に限ると80%に達した。機能性表示食品を巡る事業者の問題意識が定量的に示されたのは初。

「確認作業の不透明感」不満8割
 調査は昨年12月から今年1月にかけ、ウェブアンケートを実施したもの。ちょうど消費者庁が届出書類の確認体制を強化し、届出情報更新の頻度と件数が大きく増え始めた時期と重なる。しかしそれでも、大半の事業者が受理に至るまでの時間は問題だと感じていた。

 調査は健康食品産業協議会の構成団体所属企業を対象に実施。166社が回答を寄せた。そのうち届出実績のある企業は届出者全体のおよそ3分の1に当たる74社。届出実績のない企業は90社だった。回答社には最終商品販売事業者だけでなく受託製造企業や原料メーカーなども含まれるためだ。

 アンケートでは10項目16設問を用意。「事業者が感じる問題・課題」を尋ねた設問では、前述の「届出受理に至るまでの時間」「消費者庁の確認作業の不透明さ」の他に、「届出ガイドラインの各基準のあいまいさ」が課題だと指摘した事業者も多く、全体で72%。届出実績のある事業者に限定すると77%と更に問題だと感じている割合が高まる結果だった。

 設問には自由記入欄も用意されており、主に次のような意見が寄せられた。
 「機能性関与成分や機能性表示が固定されつつあり、規格基準型へ移行している。結局、トクホのコピー品のような製品ばかり」
 「届け出るタイミングによって消費者庁の判断が変わり、先に受理された企業との不公平感を感じる」
 「不備指摘内容が分かりにくく、どのように修正すれば良いか苦慮している」
 「新規ヘルスクレームの場合、科学的根拠がしっかりしていても、健康維持の範囲外として受理されない傾向が強い」
 「初回の書類確認時に漏れなく不備事項を指摘していただきたい」

75%が工程の透明化求める
 このように、事業者の問題意識が消費者庁の制度運用のあり方に寄せられている中で、「消費者庁へ要望することはありますか」の設問を巡っては、届出実績のある企業で81%、全体でも75%が「受理に至るまでの進捗状況・工程の透明化」を求めた。また、「届出事前相談窓口の開設」を要望したのは全体で55%と、意見は割れたものの、半数以上が届出前に同庁に直接相談したい意向を持っていた。

 アンケートではほかに、制度の見直しに向けて業界団体が優先的に取り組むべき課題についても尋ねた。その結果最も多く回答を集めたのは「エビデンスとして病者データを使用できない問題」。全体で75%(届出有73%、届出無77%)に達した。

 エビデンスとして病者データを使用したい理由についても尋ねており、届出実績のある企業に限定すると、「有効性を示す文献の数が増え、表示しようとする機能性の科学的根拠を説明できる」ためとしたのが61%。「届け出たい 機能性関与成分に関して病者対象の文献が多く、健常者の文献が少ない」や「文献の対象者が病者に該当するか否かの判断が難しい」もそれぞれ46%、41%と4割を超える結果だった。

 この設問の自由記入欄には、「病者を対象としないと、効果、エンドポイントが明確にならない例がある」といった意見が寄せられた。

 一方、病者対象文献を利用するのは「制度を鑑みるに必ずしも適切ではないとは思う」という意見も。ただ、そのように指摘する事業者も「ほとんどが健常者である中に、少数の病者が含まれている文献まで除外するのは科学的ではなく不適切」だとしており、病者対象データもエビデンスとして使用できるよう求める事業者の目的には、そのようにしたほうが科学的根拠としてより適切だと考えていることが窺われる。

 優先的に取り組むべき課題としてはこのほか、「届出表示の表現に制約があるという問題」が届出実績のある企業で42%、「健康維持は予防と本質的に同じものであるはずにもかかわらず機能性表示食品で表示することがかなわない問題」が同じく届出実績有で62%と、比較的多くの届出者が表示を巡る制約に関して改善を求めていた。
 また、全体では27%にとどまったものの、「届出情報を他社が模倣することが可能で、先行者利益が確保されない問題」は、原料事業者と最終商品販売企業に限定するとそれぞれ52%が問題だとした。それに関連し、主に抽出物を巡る「同等性判断基準が明確でない問題」についても、「問題がある」としたのは全体では36%にとどまった一方、原料事業者に限ると45%に高まった。

ビタミン・ミネラル 制度対象外「問題」は2割に
 このアンケート結果で注目されるのは、制度見直しに向けて優先的に取り組むべき課題として設定した「ビタミン・ミネラルが制度の対象素材でない問題」の項目に、「問題がある」としたのが全体で23%にとどまったことだ。事業形態別に見ると、最終商品販売事業者は56%が問題だと回答した一方、受託製造や原料事業者はそれぞれ21%、36%と、業界の川上企業と川下企業で意見が割れた。

 また、このアンケートではトクホや栄養機能食品を見直す必要性についても尋ねているが、「トクホは見直しが必要」だとしたのは全体で22%、「栄養機能食品は見直しが必要」も全体で22%にとどまった。いずれも最終商品販売事業者のほうが見直す必要性を多く感じていた。

 こうした結果は、ビタミン・ミネラルの機能性表示食品制度対象化や栄養機能食品制度の見直しが健康食品業界全体にとって本当に必要なのかどうかについて、業界団体に改めて再調査を促すものといえる。ただ、「トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品の整合性が必要」かどうかを尋ねた質問では、全体の70%が「必要」だと回答しており、個別の制度の見直しが必要かどうかは別にして、少なくとも各保健機能食品の整合性が上手く取れていないように見える現状には、多くの事業者が問題を感じていることが浮き彫りになった。自由記述欄には次のような意見が寄せられている。

 「トクホで認められている機能が機能性表示食品になると、トクホ以上の効果があるような表示となるなど、制度間で表示の考え方に不整合がある」




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