機能性表示食品 GL(ガイドライン)改正 糖質・糖類が先行か(2017.9.21)


 機能性表示食品制度(機能性関与成分)の対象に制限付きで組み入れることが決まっている「糖質・糖類」「植物エキス等(機能性関与成分が明確でない食品)」の2つについて、対象化に伴い改正されるガイドライン(GL)は、糖質・糖類が先行される形で施行となる可能性が出てきた。

 植物エキス等は、市販品との「同等性」を確保するための規定要件の検討にまだ時間がかかるもようで、それぞれを切り離して対応する方向が検索されている。一方、あいまいな記述も多いGLを補完する役割を果たすことになるQ&Aは、予定を前倒して来月にも公表される見通し。

届出Q&A、来月にも公表へ
 制度を所管する消費者庁食品表示企画課の赤﨑暢彦課長は15日、日本健康科学学会(信川益明理事長)の学術大会に登壇し、機能性表示食品制度の「現状と今後」のテーマで講演。昨年末に報告書がまとまった検討会で、機能性関与成分の対象に制限付きで加えることが決まった糖質・糖類と植物エキス等への対応について、「場合によっては切り離し、出来るものから措置をすることも視野」にあると明かした。

 赤﨑課長は、「一方に引きずられて他方ができないというのでは制度運用上の合理性がない」とも述べ、GLの改正や届出データベース(DB)の改修が比較的容易と考えられる糖質・糖類から制度運用を始めたいと考えていることを示唆。一方の植物エキス等については、「同等性をいかに担保するか(が肝)」だとし、そのために必要な、従来求めていない「溶出試験」など、新たな分析資料等の提出を要求する見通しであることから、「DBの改修にも時間や予算がかかる」とした。

 DBを改修するには、まずは改正GLの中身を決める必要がある。政府が6月に閣議決定した規制改革実施計画では、GLを分かりやすく見直す作業を年内中に終えるよう消費者庁に求めており、それに合わせて糖質・糖類に関する規定を追加したGL改正が行われる可能性も。それに伴うDB改修は、「糖質・糖類に関しては(一部を除いて)対象に加えるだけなのでほとんど必要ない」(業界団体幹部)とみられ、早ければ年明けの早い段階で運用が始まることも考えられる。

 一方で、それぞれを切り離して対応する方向性が示唆されたことで、植物エキス等に関する規定を追記した改正GLの施行時期はますます見通しづらくなった。

 この日の講演で赤﨑課長は、「できるだけ速やかに対応したい」と語るのみ。業界の協力も得ながら検討自体は進めているもようだが、「(複数の成分が含まれる)植物エキス等を1つの機能性関与成分と見なす」(赤崎課長)という新しい考え方を制度導入するだけに、業界の意向だけで終わらすわけにはいかない。有識者との調整も必須と考えられ、改正GLがまとまるのは早くても今年度末と考えるのが妥当といえそうだ。そのうえで届出DBの大幅改修が必要となれば、施行時期はさらに数カ月以上後ろ倒しになる可能性がある。

 赤﨑課長はこの日の講演で、機能性表示制度の運用改善に向けた個別事項が盛り込まれた規制改革実施計画の概要も説明。そのうち、届出書類で不備の多い事項などをまとめる「Q&A」について、「できれば来月くらいにも(公表する)という心意気で作業を進めている」と述べ、来月末までにも公表できる可能性を示唆した。

 実施計画では年末までの策定が求められていたが、赤﨑課長は「GLの意図が不鮮明なところを明確にすることは、できるだけ早くやったほうがいい」と前倒して公表する意義を強調。Q&Aは公表後も必要に応じて随時更新されていく見通しだ。

 Q&Aはその性質上、中身の検討は業界の声も聞きながら検討が行われており、複数の業界団体関係者らによると「かなり分厚いもの」。
 協議の過程では、消費者庁が20項目におよぶ制度対象外の機能性表示例を提示したといわれており、それがQ&Aに盛り込まれれば、事業者の予見可能性は高まるメリットは一方で、科学的根拠の中身や表現の工夫にかかわらず一律に表示が事実上禁じられる懸念もある。

 またQ&Aには、届出表示の科学的根拠に関する要件が分かりやすい形で盛り込まれる可能性もある。例えば、特定保健用食品と同様に、機能性表示食品においても、群間比較における有意差が確認されている必要が明示されることも考えられる。

 現行GLでは、その点について分かりやすい形ではっきり明記されているとは言い難い。ただ、5月以降続いている一連のグルコサミン届出撤回問題の背景には、届け出た研究レビューに採用した文献でそれが確認されていないことがあると考えられ、そのため、届出表示に対する科学的根拠の有無が問われたもようだ。それが結果的に届出者の自主撤回につながっている。

 赤﨑課長はこの日の講演で、「有意差のあるしっかりとしたエビデンス」を届け出ることで、機能性表示の幅は現状よりも広がる可能性があると述べた。逆に言えば、有意差が確認されていなければ、「しっかりとしたエビデンス」とは見なさない現在の制度運用の実際を示唆したことになる。




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