JFA、サプリ摂取に指針 ドーピング違反に注意喚起 (2017.10.26)


 日本サッカー協会(JFA)の医学委員会が、サプリメント摂取に注意を促す指針を9月中旬に傘下の各組織・チームに発出していることが分かった。競技界全体でサプリメントに起因するうっかりドーピング違反の事例が増加していることが背景にある。同医学委員会からは、サプリの認証体制の整備促進とともに、食品事業者にドーピング違反の責任分担を求める声も挙がっている。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)のサプリメント認証制度会議やアンチ・ドーピング法案にも影響しそうだ。

認証体制と責任分担求める声も
 日本サッカー協会(JFA)は、Jリーグサンフレッチェ広島や国体自転車競技選手などのサプリメントに起因するうっかりドーピングを背景に、9月18日付けでサプリメントの摂取に関する指針を出したほか、日本水泳連盟も同月25日にサプリメント摂取に関する注意喚起をホームページ上で行った。

 昨年12月にJリーグのサンフレッチェ広島の選手がサプリメントに起因したとされるドーピングにより、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)から譴責の処分を課されている。

 原因とされたサプリメントは、輸入品を国内販社が取扱っていたが、ドーピング禁止物質は入っていないとされ、チームドクターも同様の判断をしていた模様だ。このため選手も摂取していたが、JADAの発表によると、同サプリに起因すると思われる禁止物質が検出される結果となった。

 前述の国体自転車競技選手のドーピング違反(8月に処分決定)でも、当該サプリの成分表示には禁止物質が記載されておらず、過去の検査でも陰性反応だったため、使用を続けていたところ、国体の検査で陽性反応となった。

 二つのケースとも原因は不明だが、禁止物質のコンタミネーションだった可能性も否定できない。しかし、禁止物質の陽性反応が確定すれば、理由を問わず何らかの処分が課されるのが、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)をはじめ各国アンチ・ドーピング機関の原則であり、二つのケースとも当初より処分内容が軽減されたものの、処分自体は撤回されていない。

 日本サッカー協会(JFA)の医学委員会では、こうした状況を踏まえ9月18日付けで、改めてサプリメント摂取に関する注意喚起を促す指針を傘下の各団体・チームに出している。

 同委員会の土肥美智子医師(国立スポーツ科学センターメディカルセンター医師)は、選手側の努力には限界があると指摘する。「医学委員会ではサプリメントは細心の注意を払って摂取することが望ましいとしているが、現実にはサプリを摂取している選手は多い。たとえ第三者機関の安全認証があったとしても100%安全とは言い切れない」と土肥医師は語る。

 どのスポーツ競技団体も同様だが、団体の医学委員会や医師、薬剤師らは、サプリメントの安全を保証する立場にはなく、あくまで情報提供、アドバイスする役割に止まる。

 最終的には選手に委ねられており、意図せずにドーピング違反に問われるリスクは常に存在する。公式な処分(責任)は常に選手のみが負うことが現状である。

 土肥医師は「サプリメントを製造・販売する側も責任を持つようなアンチ・ドーピングのスキームを考えるべき」と指摘する。前述のように、実際は選手本人の取組みには限度があり、リスクを減らすためには、製造側もより深くコミットする必要があるという。

 一方、JADAは9月4日に「サプリメントの認証制度検証有識者会議」(座長・境田正樹弁護士)をスタートさせ、サプリメントのアンチ・ドーピング体制をどう構築するか議論を始めている。具体的な検討事項は明らかになっていないが、分析体制の整備や食品表示の問題など課題も多く、来年2月のとりまとめに向けて難航が予想されている。

 また、スポーツ議員連盟によるアンチ・ドーピング法案の国会提出も予定されており、法律面でもサプリメントの認証体制が焦点となる可能性がある。

 食品事業者が前述の土肥医師の責任分担の指摘も踏まえて、どうサプリメントのアンチ・ドーピングに係っていくのか。状況の変化も予想されそうだ。食品事業者の責任分担は法的問題もある。

Clip to Evernote

ページトップ