厚労省 プエラリア 続く苦境 改善計画書要求 来月末まで(2017.10.26)


活性成分定量実施機関ない
 プエラリアミリフィカ(別名ガウクルア、以下プエラリア)健康食品を取り扱う企業が、プエラリアに含有する女性ホルモン様物質(活性成分)の製造管理などに関する「改善計画書」を提出するよう、所管自治体を通じて厚生労働省から迫られている。厚労省が自治体に求めた提出期日は来月30日。自治体によっては今月末を期限にした先もあるとされ、対応に苦慮する企業が出ている。国内では対応できる分析機関が現状見当たらない、デオキシミロエストロールなど主要活性成分の定量分析についても改善計画を示す必要がある。

 改善計画書の提出は、厚労省と消費者庁が連名で先月22日に発出した通知(第954号既報)に基づき、厚労省が事務連絡として自治体に要請したもの。厚労省は全国の取り扱い事業者をほぼ把握しているもようだ。自治体に対し、該当事業者への立入検査など監視指導を行い、事業者に改善計画書を作成させ、報告するよう求めている。

 厚労省は自治体の監視指導が円滑に進むよう、事務連絡で「Q&A」を発出。プエラリアの製品中含有量が微量だとしても、「生体への影響が不明確」のため監視指導を行うよう要求している。

 また、通知で原材料ロットごとの定量分析を事業者に求めた活性成分のうち、特に強い活性を持つとされるデオキシミロエストロールとミロエストロールの定量分析について、それが可能な「国内の検査機関は確認できていない」としたうえで、事業者から尋ねられた際は、通知に示した分析法に関する文献が参考になる旨を伝えるよう自治体に要請した。ただ、示されているのは文献名、著者名、掲載誌名のみだ。

 文献で示されたデオキシミロエストロールやミロエストロールの定量分析方法は主にELISA法(酵素免疫測定法)によるもの。通知の端緒となった消費者への注意喚起を行うとともに、プエラリア健康食品の商品テストを実施した国民生活センターも、この方法で主要成分の定量分析を行った。

 国センで分析出来ている以上、企業も同じ方法で分析可能と考えられる。しかし、国センは明らかにしていないが、実際に定量分析を行ったのは、プエラリアの原産国タイ国内の大学など研究・分析機関だったとみて間違いない。関係者は、「(デオキシミロエストロールなどを)ELISA法で定量できる分析機関は、探した限り日本には存在しなかった」と話す。

 一方、活性成分の定量分析は、HPLC法でも可能だとされる。
 ただ、同法で分析するために必要な標準試料の入手が日本では困難を極めているようだ。北米の研究試薬メーカーのカタログにその存在が確認されているが、デオキシミロエストロールの価格は2.5㍉㌘で5250米㌦(約59万円)とかなり高額。そのうえ、プエラリア健康食品の販売にかかわる関係者は、「(在庫が)ないらしい。(つくるには)1年近くかかるとのことだった」という。

 現状、デオキシミロエストロールなどを定量分析できる可能性があるのは、国センが分析を依頼した可能性があるタイの機関のみということになりそうだ。ただ、企業からの分析受託に応じるかどうかは分からない。

分析できないと販売もできない
 このように企業にとっては極めて困難な状況でも、厚労省の定量分析に関する考え方は、「原則として製造管理の一環として事業者が行うべきもの」(前述Q&Aより抜粋)。そのうえで、通知では、活性成分の定量分析など製造管理等の改善を実施できない事業者に対し、製品の取扱い中止を指導するよう自治体に求めている。改善計画書に対応できない場合も、「通知の通り、(取扱い中止を求める)行政指導を行うことになる」と厚労省は話す。

 前述の関係者は、「定量分析に対応できたとしても一部の大手だけだろう。(市場には)大手の商品しか残らないことになる。そうなることで健康被害相談もぐっと減るとでも考えているのだろう」と通知の内容に憤る。

 またこの関係者は、「なぜ厚労省として安全性の基準を示そうとしないのか。食品安全委員会に安全性評価を求めないことも腑に落ちない」と述べ、月経不順や不正出血など、ここにきて急増した健康被害相談の背景を明らかにせず、通知のみで済ませようとする厚労省の対応に疑問を示す。

「(活性成分を定量)分析できないから販売もできない。それが通知の意図だろう」
 残された道としては、業界として、国内で実施可能な定量分析法の確立を含めた規格基準をつくることがある。それによって安全性と同時に機能性を担保できるようになる可能性がある。

 ただ、各種素材でJHFA規格基準を策定している日本健康・栄養食品協会は、「現状そうした考えはない」。

 事業者をサポートする業界団体からもなかば見放されたかっこうだが、プエラリア健康食品の販売を継続したい事業者は「改善計画書」の提出が必要。求められた定量分析が国内では現状困難である以上、原材料ロットごとにエストロゲン活性を確認するなど、安全性を確保できる代替法を示し、自治体や厚労省に納得してもらうほかない。


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