ビルベリー、エキス価格が今季高く (2017.10.26)

71743473-ビルベリー②

 ビルベリーエキス価格が高まる。北欧など欧州で毎年8~9月にかけて年1回採取される果実の価格高騰が要因。そこに対ユーロで大きく円安に振れている為替が追い打ちを掛ける。粗悪品の流通に警戒する必要がありそうだ。

 今年9月のユーロ円レートは約131円、前年同月は約116円。対ドルでは円高が進む一方で、対ユーロは円安傾向が続いている。

 複数の原料事業者の話を総合すると、今季、北欧など現地でのビルベリー果実取引価格は昨対比2倍に達した。果実の生育には一定の日射量・気温が求められるが、欧州のほぼ全域で見られた年明け以降の低温気候、冷夏といった気象状況が影響し、採取量が著しく少なかった。5月に降雪が見られた地域もある。

 ビルベリー果実は野生種であり、栽培されているわけではない。
 主要原産地域は北欧、東欧、ロシアの3つ。このうちサプリメント(エキス)向けには有効成分アントシアニン含量の多い北欧産果実が主に使われているが、北欧の今季推定採取量は5000㌧を割り込む。「豊作」と呼ばれる年の推定採取量1万5000㌧の3分の1以下にとどまることになる。他の地域の採取量も軒並み少なかったという。

 天候不順に伴う果実価格高騰を背景にしたビルベリーエキス価格の大幅な値上がりは、2006年シーズンにも発生した。この際、他の植物から抽出したアントシアニンを混ぜ込むなどした粗悪品の流通が大きな問題になった。同等性の確保が厳しく求められる機能性表示食品がビルベリー食品でも少なくない現在と当時の状況は大きく異なるが、受託メーカーや最終製品販売会社は、粗悪品の流通に警戒を強める必要がある。

 一方、こうした事情からエキスの欠品が生じる可能性も言われている。
 欧州のビルベリー果実流通事情に明るい原料事業者によると、この果実の最大市場は一般食品で、果実冷凍食品などがスーパーマーケットなどで販売されている。その需要が、特にスウェーデンで、「健康志向の高まりとともに伸びている」。しかも、「高い価格で流通されている。そのため一般食品向けの果実は高値でも買われる。今年も、果実価格高騰をまったく気にせず活発に買われている。当然果実を売るほうも、高値で引き取ってくれる食品産業を優先する」といい、エキス向け果実の確保に支障が出ている状況にあるとする。

 果実価格が高騰している中で、契約分は別にして、購入されるかがはっきりしないエキスのために果実を確保するのは困難。売れ残れば大きな損失を被る。通常、需要を見ながら年明け以降に果実の追加購入が行われているというが、今季もそれが可能かどうか──。予断を許さないと言えそうだ。

【写真=ビルベリーイメージ】

Clip to Evernote

ページトップ