適格消費者団体 「お試し価格」巡り差止訴訟 ネット販売2社を提訴(2018.1.11)


 実際には複数回の定期購入を前提条件にする「お試し価格」表示をめぐり、適格消費者団体の京都消費者契約ネットワーク(KCCN)が、東京都内の健康食品ネット販売企業2社を相手取り、京都地方裁判所に当該表示の差止訴訟を起こした。継続購入の条件を付帯させておきながら初回お試し価格を強調して表示することは、景品表示法が禁じる有利誤認にあたると主張している。

 KCCNがウェブサイトに公開した訴状によると、提訴は昨年12月25日付で、「メタルマッスルHMB」を販売するART・OF・LIFE(東京都新宿区)、「DCC(ディープチェンジクレアチン)」を販売するラッシャーマン(同渋谷区)の2社を提訴した。同2社に関する苦情・相談件数を国民生活センターに尋ねたところ、昨年1月1日から10月3日までの間で少なくとも580件以上が寄せられていたという。ART社の「メタルマッスル」は、歌手のGACKTさんをイメージキャラクターにしていることで知られる。

 KCCNによると、2社はKCCNが事前に行った差止請求に対して回答を寄せたが、「不十分な回答」だったため提訴したという。2社ともお試し価格は最低4回以上の定期購入が条件であることを各商品のウェブサイト上で記載していたものの、「初回実質無料」などの強調表示と比べて著しく小さく、消費者は条件を見る前に購入手続きに進む可能性が高い──などとKCCNは主張している。

 KCCNはサン・クロレラ販売に対するチラシ差止訴訟で知られる差止請求権を持つ適格消費者団体。昨年1月には健康食品のネット販売を手掛けるBRONXに対し、今回と同様の差止訴訟(同6月に表示改善に伴い和解)を初めて起こしていた。国民生活センターによると、「お試しのつもりで申し込んだが定期購入が条件だった」などといった定期購入トラブルをめぐる相談件数が2016年度は1万4314件と11年度(520件)の27倍以上にまで膨れ上がっている。そのため昨年は、KCCN以外の適格消費者団体からも、健康食品などのネット販売企業に対して表示の改善を申し入れたり、差止請求を行ったりする動きが相次いでいた。

 消費者庁も対応に乗り出している。昨年12月1日施行の改正特定商取引法に伴う施行規則に、定期購入に関する規定を新たに盛り込んだ。またこれに関連し、昨年11月1日にはネット通販に関するガイドラインを公表。定期購入申込みの最終画面で契約条件を表示していない場合や、契約条件の一部が離れた場所に表示されているため契約条件の全てが容易に認識できない場合などは、特商法が禁じる「顧客の意に反して契約の申込 みをさせようとする行為」に該当する可能性があるとしている。


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