国産クリルオイル 甲陽ケミが販売開始 8‐HEPE高含有が特徴(2018.1.11)


 日本国産クリルオイルの販売に甲陽ケミカルが乗り出す。三陸沖で水揚げされるオキアミの一種、イサダ(ツノナシオキアミ)を原料とし、国内で抽出・精製したもの。南極オキアミを原料にした従来のクリルオイルと同様に、アスタキサンチンはじめリン脂質結合型オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)を含む。と同時に、従来のクリルオイルと比べ、新規成分の「8‐HEPE(ヒドロキシエイコサペンタエン酸)が多く含まれる特徴がある。

 甲陽ケミカルは以前から南極オキアミ由来クリルオイルの販売も手掛けており、今後はそれぞれの特徴を踏まえた市場提案を進める。国産クリルオイルについては、「これまで存在しなかった国産品に対するニーズ、あるいは8‐HEPEに対するニーズがあると考えている」(研究開発担当者)と話す。

 8‐HEPEは、岩手生物工学研究センターがイサダから単離・精製した成分。同センターでは、イサダ抽出物に抗肥満作用があることを見出し、その関与成分として8‐HEPEを同定していた。
 8‐HEPEについて同センターでは、脂肪燃焼に関わるタンパク受容体を活性化させる機能性を持つことを確認。また、8‐HEPEは、もともとオキアミに含まれる成分だが、特にイサダは南極オキアミと比べて約2倍含有量が多いことも明らかにしている。

 甲陽ケミカルでは、同センターが東日本大震災で被災した三陸沿岸の産業活性化も目的に主導する、イサダの高付加価値素材化を目指す産学官連携プロジェクトに参画している。新たに販売を始める国産クリルオイルは、このプロジェクトを起点に開発されたもの。プロジェクトは、国の「革新的技術開発・緊急展開事業」に採択されてもいる。

 製造は、同社と同様にプロジェクトに参画する徳島県の水産加工メーカー、マリン大王が担当する。同社は、南極オキアミを原料にしたアスタキサンチンや調味料向けエキスの抽出精製を以前から手掛けており、クリルオイルの製造ノウハウを持つ。イサダのタンパク質を酵素分解し、その抽出残渣から精製クリルオイルを生産する。

 甲陽ケミカルでは販売と同時に機能性研究なども担当する。産業技術総合研究所らとの共同研究で、睡眠改善効果が示唆されることを動物試験で確認しているほか、千葉大学などとの共同研究では糖・脂質代謝異常の改善作用を動物試験で見出している。

 8‐HEPEなど、各種機能性成分の含有量規格などの細かな設定はこれからとなる。「ニーズや需要を見ながら調整していきたい」と同社では話しており、状況に応じ、8‐HEPEを高含有するクリルオイルや新規素材の開発も検討していきたい考え。


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