4.4%増の7694億円と推定 2013年・錠剤・カプセル状健食市場規模(2014.1.9)


 本紙は、総務省統計局が毎月発表する家計調査などの公的資料に基づき、2004年(平成16年)以降、「錠剤カプセル状健康食品」の市場規模を推定している。13年の家計調査のうち「錠剤カプセル状健康食品」(以下本稿ではサプリと表現する)の2人以上世帯、単身世帯を併合した総世帯の支出金額と、自治行政局公表の全国総世帯数(推計値)を分析してみると、同年のサプリ市場規模は推定で前年比104.4%の7694億円と、史上最大規模となったことが分かった。

2年連続の増加

 サプリ市場は95年以降順調に拡大を続けていたが、06年のアガリクス騒動で打撃を受け、市場は一時前年比80%台まで縮小した。その後、業界の懸命な努力により静かに回復を続け、ついに13年は史上最大の7600億円台を記録した模様である。

 この8年間の道のりは決して平坦ではなかった。10年には回復基調に戻ったが、11年3月の東日本大震災とそれに伴う消費マインドの低下で折角の上昇機運は消えてしまう。だが、その後は着実に回復し、12年は前年比103.6%、13年は104.4%と伸長、11年の停滞は両年で完全にカバーされた。最近、景気が若干上向いたとはいえ、多くの消費材は未だに低迷している。その中でサプリの回復ぶりは特筆に値するだろう。

健康に気を配る70歳代

 12、13年の両年にわたってサプリ市場の拡大を牽引したのは、高齢者の健康への飽くなき欲求と、それに伴う行動力だといえる。総務省統計局は昨年9月、敬老の日に因んで高齢者のパワーを分析し、「活動的な60歳代」「より健康に気を配る70歳代」「インターネットも利用する高齢者」と表現した。

 世帯主の年齢が上昇するに従い健康に関心を持ちだす。大体50歳になるとサプリの購入金額が大きくなることは周知の通り。だが60歳代の健康への関心はサプリのみでなく、運動や旅行などの行動への関心とも並行する。70歳代に至ると健康への関心はさらに強まり、支出額は30歳代の5.6倍に達する。これは家庭内消費支出の1%近くにもなる。

ネット利用する高齢者

 前述「敬老の日の調査報告」では高齢者のインターネットショッピング利用状況の分析結果が報告されている。これによると現代の65歳以上の高齢者は社会の変化に順応する努力を怠らず、ネット通販の利用は年々増加して、12年の世帯あたり利用金額は30~50代世帯の50%近くまで到達している。品目までは調査されていないが、健康に関心を持つ世代だけにサプリも多く購入されていると推察できる。ネット通販用品目には是非とも高齢者向けのアイテムも加えるなどの気配りが必要だろう。

今後の市場は?

13年は家計調査に健康保持用接種品が登載されて以来、最大の市場規模が構築された記念すべき年だといえる。だが喜んでばかりいられない。

 社会保障・人口問題研究所の「日本の将来世帯数将来推計」「日本の将来推計人口」などでも明らかなように、我が国の人口はすでに減少し始め、近々世帯数も減少を開始する。ただし高齢者人口のみはこの5~6年間は増加を続ける。当面、団塊の世代が65歳前後で消費の中心となり、新しいものに取組む姿勢も持ち、その行動も迫力に満ちている。人口減、世帯数減少というマイナス要因が発生するにも係わらず、活発な高齢者の台頭によってここ数年のサプリ市場は拡大を続けることになりそうだ。その後もしばらくは漸増を続けるものと予測される。もし市場を放置するならば将来的には市場縮小という事態も予想される。

 家計調査は生活に密着した約800品目の消費財について、2人以上世帯と単身世帯に区分して調査・集計されたものである。もともと2人以上世帯のウエイトが圧倒的に高く、その変化をいち早くキャッチすることを目的としていた。単身世帯も調査対象だが、現実的には多くの消費財が今でも2人以上世帯が中心となって安定した消費を支えている。

 ところが、サプリ市場では人口構造の変化に伴い高齢単身者が増加していることも要因となって、単身世帯は徐々に影響力を持つようになった。13年の家計調査の2人以上世帯では既報10カ月のうち4カ月も前年を割り、これを補完して単身世帯の市場が大きく伸長し、結果として史上最大規模に至ったとみられる。まだ2人以上世帯のウエイトは高いが、高齢者がヘビーユーザーのこの市場は、今後2人以上世帯は相対的な力を徐々に失い、単身世帯のウエイトが増していき、遠い将来への不安定さも予見させる。これは市場衰退の兆しではなかろうか。

 当面の市場が安定した拡大局面にある今のうちから、高齢者以外への早急な対応を求めてやまない。

Clip to Evernote

ページトップ